コラム

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【屋内用歩行器】(連載9)

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【屋内用歩行器】(連載9)

 昨年4月から義務化された福祉用具貸与の「機能や価格帯の異なる複数の商品の提示」。本連載では現場で想定されるケースから、具体的な複数提示の例を解説します。今回のテーマは屋内用歩行器です。

Cさんの事例

 Cさん(81歳・女性)は自宅で2歳年上の夫と二人で暮らしています。ある日、棚からものを取ろうとした時にバランスを崩して転倒してしまいました。医師からは腰近くの第12胸椎圧迫骨折と診断され、「無理に動かないように」とのことでした。その後、要介護2の判定を受けました。普通に歩くと腰付近が痛むようです。支えがあればずいぶん楽になるようですが、自宅のトイレや台所までの間につかまったり、支えになったりするものがないため、「とても大変」との訴えがありました。さらに、「自宅の中は自分一人で自由に移動したい」とのことでした。

身体状況のパターンを分けて複数提案

 Cさんのニーズから、選定提案の「福祉用具が必要な理由」は「自宅内を一人で移動できるよう、歩行器を使用します」と設定します。

 Cさんのケースだと、骨折の痛みによって、①腰に力が入らない②腰だけでなく足にも力が入らない――などのパターンが考えられます。①の「腰に力が入らない」を前提にした提案理由は「痛みのため、腰に力が入らないので、歩行時に本体を持ち上げず、移動できる四輪キャスターが付いた機種です」とします。

 ②の「腰だけでなく足にも力が入らない」場合は、より免荷性能の高い歩行器がよいでしょう。ここでは、馬蹄型の歩行器を提案します。選定理由は、「痛みのため、腰と足に力が入らないので、歩行時、前腕に体重をかけられ、足腰の負担を軽減できる機種です」としました。このような複数提案で、よりCさんが自身の身体状況によりあった、「楽に歩ける」歩行器を選ぶことができます。



 さらに、①「腰に力が入らない」の場合、四輪タイプ以外でも、前の2脚のみキャスターになっている機種なども提案候補となります。②「腰だけでなく足にも力が入らない」も、馬蹄型でさらにレバーが付いて、スピードや高さを調節できる機種も提案できそうです。そのほか、収納性や幅や段差などの環境面に応じて、より使いやすい機種を複数提示し、Cさんにとってよりベストな歩行器を選んでもらうようにしましょう。
高齢者生活福祉研究所所長 加島 守

(シルバー産業新聞2019年1月10日号)

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