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《排泄支援》排泄用具を正しく使いトイレをあきらめない/大関美里さん(DASUケアLAB 代表)

《排泄支援》排泄用具を正しく使いトイレをあきらめない/大関美里さん(DASUケアLAB 代表)

 トイレが上手くいかない原因に①ADL(日常生活動作)②認知機能③直腸・膀胱などの機能――があります。在宅介護ではいったん①のADLをチェックし、最適な排泄の方法・用具を選んで試してみましょう。

 それでも解決できない場合は②・③の可能性がありますので、医師に相談する必要があります。例えば、自力での(ポータブル)トイレへの移動・移乗が可能でも、急な尿意で間に合わない「切迫性尿失禁」などです。この場合、泌尿器科で内服薬を処方し解決できることもあります。

排泄用具を正しく使いトイレをあきらめない

 排泄ADLをチェックする方法の一つに「MOCKY式ADLフローチャート」があります()。もともとは運動機能から見たフローチャートで、その人に必要な用品とケアプランに位置づけるべき事項を分かりやすく表したものです。

 「座ることができるかどうか」からスタートし、「歩行・移動」「移乗・立ち座り」「衣服の上げ下ろし」の状況に応じて、排泄の場所がトイレ、ベッドサイド、ベッド上に分類されます。

 ポイントは、排泄支援用具などを利用すればその動作が可能か、を確認する点です。例えば、衣服を変えるだけでズボンの上げ下げが楽になり、トイレ誘導・自立排泄ができる場合もあります。この部分を無視すると「尿失禁を繰り返す↓ベッド上でおむつ」と安易な判断になりかねません。可能な限り本人の残存能力を活かした排泄ケアは生活全体のADL維持・改善につながり、長期的な介護負担を軽減します。身体と気持ちに合ったトイレを選ぶ

 ベッドサイドで排泄を行う場合に使用されるのがポータブルトイレです。介護保険を利用すれば1〜3割の利用者負担で購入でき、かつ福祉用具専門相談員という福祉用具のプロが、本人の体格やADLをもとに最適な商品を選定してくれます。

 ネット通販などで購入すると、この「選定」のプロセスが抜け落ちてしまいます。例えば、足腰が不安定な人は便座下の蹴り込みスペースがないと、立ち上がる際の転倒リスクが高くなります。また、身長の低い人が便座に座ったときに足裏が床に接地していないと、不適切な姿勢で排便がしにくくなります。

 他の福祉用具もそうですが、排泄用品は特に使ってみて不便な思いや痛い思いをすると一度だけでも「合わない」と決めつけてしまいやすいです。選び方・使い方は必ず専門職に相談するようにしましょう。

ニオイ問題の解決が介助負担軽減に

 ポータブルトイレを嫌がる理由はほかにも色々あります。ベッド脇に置くと常に目に入り、自分の部屋なのに嫌な気持ちになる、など。介助者がいる場合は、試しに衝立(パーテーション)を置いてみてください。思い入れのある布で覆うと、インテリアにもなります。

 また、自身の排泄物を家族や他の人に洗浄・廃棄してもらうことへの遠慮や、恥ずかしいといった気持ちも、ポータブルトイレに対する抵抗感の一つです。なかでもニオイの問題は、本人だけでなく介助する家族に精神的な負荷を与えます。想像してみて下さい。もし排泄物が無臭またはバラの良い香りだったとすれば、どれだけ気持ちが楽になるか…。

 最も効果的なのは密閉です。ポータブルトイレの中には、排泄物を自動ラップ機能で密閉するタイプがあります。少し工事は必要な場合もありますが、水洗式もあります。

 この他の方法としては、防臭袋と凝固剤を活用し、受けバケツからできるだけニオイを漏らさないことが基本です。また、排泄臭そのものを、良い香りに変化させるポータブルトイレ専用の消臭剤もあります。

 便臭もそうですが、尿臭は空気に触れるにつれニオイが強くなります。介助側が理想とする「排泄後すぐに処理」を実現するには排便コントロール、ひいては生活全体のリズムを整えることが不可欠です。腸内環境が整った良い便は、実はニオイも強くありません。食事、運動、睡眠のあり方、下剤の是非など、医師や看護師、ケアマネジャーを中心に多職種協働で取り組むべき部分です。

大は小を兼ねない

 ベッドサイドでの排泄も難しくなると、ベッド上での尿器・便器の使用の検討後に、おむつの使用が選択肢に挙がってきます。おむつ排泄が上手くいかないと、衣服や寝具の汚染など、大変な思いをされた方もいると思います。そうならないためには、客観的な情報に基づいたおむつ選びが大切です。

 「インナー(尿とりパッド)を重ねたほうが漏れにくい」「サイズが大きい方がより吸収できる」と思い込んでいる方はいませんか?実はそうではありません。おむつを選ぶ際には「大きい、幅の広いもの」が逆に外漏れを起こすことがあります。

 おむつ選びのポイントはアウターのサイズの選び方と吸収量、そして当て方です。我々の調査では、外漏れで悩むおむつ使用者の実に6割以上が、適切なサイズより大きなものを使用していました。理由としては、当てやすさを優先していることや、S・M・Lを服のサイズの感覚で選んでいることなどが考えられます。サイズが大きすぎると股下の吸収帯の長さが長くなるため、インナーとのフィット感が弱く、漏れの原因となります。

 S・M・Lはメーカー間によっても幅がありますので、テープ止めタイプでしたら「ヒップサイズ〇㎝〜〇㎝」の表記を必ず確認してください。そして、数字で比較して実際に付けた時に左右のテープ止めの間に手のひらが入るくらいのものを選びましょう。

 尿とりパッドは実際に尿を受け止める吸収体です。おむつと一緒に使用することで、おむつ交換の手間を軽減できます。吸収量や形状はさまざまですが、一つ挙げるならパッドの両サイドにあるギャザー(防波堤の役割)をきちんと立たせて当てること、足回りからの漏れがある場合には特にギャザーのある製品を使っているかを確認することが、漏れを防ぐコツです。

 パッドの選び方、当て方についても、一度専門職に相談することをお勧めします。
大関美里さん
(おおぜき・みさと)
 介護施設や祖父の在宅介護の経験から、介護には身体と心の「より良い出し方」の探求が必要と痛感。おむつメーカーのアドバイザーを経て、2017年からDASUケアLAB代表となり、研修や介護現場のサポートに取り組む

(介護の日しんぶん2022年11月11日)

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