コラム

教えて!地域のお医者さん 高齢者の脂質異常性の基礎知識

教えて!地域のお医者さん 高齢者の脂質異常性の基礎知識

 疾患別ケアで求められる脳血管疾患、心疾患のマネジメントにおいてリスク因子である脂質異常症の理解は欠かせない。はとこクリニック(奈良県香芝市)波床朋信院長に、高齢者の脂質異常症の基礎知識について解説いただく。

 脂質異常症とは、高LDL―コレステロール血症、高トリグリセライド血症など血液の中の脂質の異常を起こす生活習慣病のことを指します。LDL―コレステロールは悪玉コレステロール、トリグリセライドは中性脂肪とも呼ばれ、血管の壁に蓄積することで内腔が狭くなる動脈硬化の原因となります。また、一緒に検査されることの多いHDL―コレステロールは、余分なコレステロールを回収して動脈硬化を抑えるため、善玉コレステロールと呼ばれています。

 これらの数値から導き出される総コレステロール値、Non―HDLコレステロール値(総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたもの)、LDLコレステロール値が高くなると、高齢者でも心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが増加すると言われています。動脈硬化によって起こる疾患の予防のために血中のコレステロールを適切に管理することが大切です。

年々増える脂質異常症

 我が国でも脂質の多い食事が定着するなど生活習慣の欧米化により、脂質異常症の患者は年々増加傾向にあります。
 2017年の国の調査によると、国内の脂質異常症の患者数はおよそ220万5千人で、そのうち、男性63万9千人、女性156万5千人と、女性は男性の2.4倍の値を示しました。
 また、年齢に伴い男女ともに総コレステロール値に変動が見られることが知られています。女性の場合は閉経前後の50歳ごろから女性ホルモンのエストロゲンが低下する影響もあり脂質異常症が増加します。高齢になるにつれて女性でも動脈硬化による病気のリスクが高くなり、現在、わが国での女性の冠動脈疾患の発症率は欧米に比べて低いのですが、今後は動脈硬化によって起こる疾患の増加が懸念されています。

症状がなくても放置しない

 わが国の高齢者が要介護者になる原因の第2位が脳血管疾患(脳卒中)であり(19年国民生活基礎調査)、また、65歳以上の高齢者の死因の第2位が心疾患、第4位が脳血管疾患と推計されています(22年人口動態統計)。脂質異常症は、糖尿病や高血圧などと同じく動脈硬化による疾患の主なリスク因子です。
高齢者では特にこれらの疾患の発症リスクが高く、発症後の予後も不良であり要介護状態となる可能性も高いとされています。

 脂質異常症は自覚症状に乏しいのですが、長年放置すると、症状がないまま動脈硬化が進行して脳梗塞や心筋梗塞などを発症し、死亡や後遺症、QOL低下が懸念されます。
症状がなくても、一次予防(病気にならない)、二次予防(重症化させない)に向けて適切な治療を続けることの重要性を利用者に伝えていきましょう。

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