在宅栄養ケアのすすめ

自宅と通所の食支援をそろえる

厚労省では来年度の介護報酬改定を検討する介護給付費分科会が開かれています。11月6日は居宅療養管理指導がテーマでした。改定案の一つが「通所が可能な利用者への管理栄養士、歯科衛生士等の訪問を算定可能とすること」です。通所サービスと居宅療養管理指導の併用が明確に認められることになりそうです。

 口腔・栄養に問題を抱える通所利用者が多いことは国の調査でも明白ですが、通所には口腔・栄養の専門職の配置要件がありません。管理栄養士の関与が必要な栄養アセスメント加算、栄養改善加算も極めて低い算定率です。当然ながら食支援の内容もバラツキが大きくなっています。
 また、3食×7日(1週間)=21食のうち、通所での食事は多くても3~4回(昼食のみ)。食事の大半は自宅であり、まずはそこに着手することが最優先です。「通院または通所困難な利用者へ提供が可能」という今の居宅療養管理指導の基準自体がそもそも現場に合っていません。

自宅~通所の情報連携不足だった事例

 利用者のEさん(91歳女性、要介護2)は半年間で体重が5kg減少、BMI16.8まで栄養状態が悪化してきたタイミングで居宅療養管理指導の利用を開始しました。
同居している60代の息子は調理があまりできず、スーパーのお寿司やおにぎり、総菜が主な食事です。お寿司、おにぎりは米をギュッと固めるので、のどに詰まらせることや、飲水時のむせ込みもありました。それでも息子が「大丈夫だから」と常食を続けていました。Eさんは難聴もあり、コミュニケーションにも不便がありました。

 一方、Eさんは通所リハビリを利用していました。実はそこでは言語聴覚士が嚥下機能をチェックし、やわらかい食事が提供されていたのです。息子も知らなかったそうです。
最大の問題は、自宅と通所の食事の情報がほぼ共有されていなかった点です。もしかすると通所ではEさんに直接、自宅での食事のアドバイスは伝えていたのかもしれません。しかし、そこには息子の調理能力が加味されていません。

 在宅の食支援をめざすならば、自宅での食事内容、食環境、介護力などの評価は必須です。そして、主介護者や訪問介護のヘルパーへの栄養教育、調理指導を行うことも、管理栄養士の重要な役割なのです。
居宅療養管理指導の開始後はまず、歯科に依頼し嚥下内視鏡検査を実施。適切な食形態を決め、訪問のたびに作り方を息子へ教えました。幸い、経済的には問題なかったので、食事を主目的とした訪問介護の回数増、介護食品の利用へつなげました。Eさんは半年で体重が3kg戻り、血清アルブミン値も改善しました。

 通所と自宅が上手く連携すれば食支援のレベルは格段に向上します。常に職員がいる通所では、むせや食べにくさ、喫食量、姿勢など食事の観察・記録が行いやすい環境です。また、喫食量が落ち込んでいれば、それに合わせたリハビリ(機能訓練)を調整できます。「リハビリ・口腔・栄養の一体的実施の推進」の典型例ではないでしょうか。
ゆくゆくは、通所と居宅療養管理指導の併用によるADLの維持・改善状況などがLIFE等のデータで分析されていくことも期待されます。

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