コラム
福祉用具・介護ロボットの実用化を推進/経産省 遠山毅さん
10月1日は「福祉用具の日」。福祉用具の使用について啓発・普及する日です。本紙では、福祉用具を共管する厚生労働省と経済産業省のお二人からメッセージをいただきました。
現状と展望
世界的に少子高齢化が進む中、我が国では、国民皆保険制度の下、質の高い医療が提供されることより、世界最高水準の長寿国の地位を享受しています。さらには、健康な状態を維持しつつ希望するライフスタイルに沿って、実り豊かな生活を営めるような健康長寿社会を形成することが大きな課題となっており、政府としても、本年6月に策定した「日本再興戦略2016」において、「世界最先端の健康立国へ」を戦略的に取り組むべき分野と位置づけ、関連施策を推進しています。
こうした中、高齢者や障害者の方々の生活の質の向上や自立の支援、社会活動への参加、介護に携わる方々の負担軽減などの観点から、福祉用具及び福祉用具産業が果たすべき役割はこれまで以上に高まっています。日本福祉用具.生活支援用具協会が実施した2014年度福祉用具産業の市場規模調査(工場出荷額)では、調査を開始した93年度に7735億円であった市場規模は、14年度には1兆3995億円と約1.8倍に成長し、対13年度比でみても3.8%の増加となっており、今後も引き続き拡大傾向であることが想定されます。
こうした中、高齢者や障害者の方々の生活の質の向上や自立の支援、社会活動への参加、介護に携わる方々の負担軽減などの観点から、福祉用具及び福祉用具産業が果たすべき役割はこれまで以上に高まっています。日本福祉用具.生活支援用具協会が実施した2014年度福祉用具産業の市場規模調査(工場出荷額)では、調査を開始した93年度に7735億円であった市場規模は、14年度には1兆3995億円と約1.8倍に成長し、対13年度比でみても3.8%の増加となっており、今後も引き続き拡大傾向であることが想定されます。
対策
このような背景を踏まえ、経済産業省では、福祉用具産業の発展に向けて、大きく2つの取組を推進しています。
1つ目は福祉用具の開発.実用化及び普及の推進です。福祉用具法に基づき、新エネルギー.産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて、優れた技術や創意工夫のある実用的な福祉用具の開発を行う民間企業等の開発費用の一部を助成しています。具体的には、福祉用具の製品開発を担う民間企業とユーザー評価を担う機関等とが連携し、利用者の利便性に配慮したモビリティやインフラを支える機械機器、障害や多言語に対応したコミュニケーション支援機器等の開発.実用化に対する支援をしています。当該事業を開始した93年度から15年度までに219件の開発支援を行い、このうち100件以上が実用化され、高齢者や障害者、介護者の方々の生活の質の向上や負担の軽減に貢献してきています。
2つ目はロボット介護機器開発及び導入の促進です。経済産業省と厚生労働省は、ロボット技術による介護現場への貢献や新産業創出のため、「ロボット技術の介護利用における重点分野」(12年11月公表・14年2月改訂)を策定し、本年度はロボット介護機器開発.導入促進事業として20億円の予算を確保しながら、日本医療研究開発機構(AMED)を通じて、現場のニーズを踏まえた、安価で使いやすいロボット介護機器の開発支援を行っています。同時にロボット介護機器の安全・性能・倫理基準の策定等、導入環境の整備も進めているところです。これらの取組を通じて、介護現場の負担軽減及び高齢者の自立支援に資するロボット介護機器の導入・普及を積極的に推進していきます。
その他、安全性に優れた福祉用具の開発・普及や利用者への適切な情報提供が重要です。車いすや介護ベッド等のJIS規格の整備の推進や、アジア諸国など海外市場を開拓するため、国際標準化の推進を行うなど、福祉用具産業の競争力強化にも取り組んでいます。
経済産業省としては、今後とも社会に求められる安全で使いやすい福祉用具の実用化開発を推進するとともに、事業者の海外展開支援や製品事故防止の取り組みを進めるなど、福祉用具産業の更なる発展に向けて取り組んでまいります。
遠山毅さん(経済産業省 経済産業省商務情報政策局 医療・福祉機器産業室長)
(福祉用具の日しんぶん2016年10月1日号)