コラム

福祉用具・ロボットの開発支援/経産省 富原早夏さん

福祉用具・ロボットの開発支援/経産省 富原早夏さん

 10月1日は福祉用具の利用環境の啓発・普及を進める「福祉用具の日」。福祉用具を共管する厚生労働省と経済産業省のお二人からメッセージをいただきました。

産業発展に向けた福祉用具 ・ ロボットの開発支援

 世界的に少子高齢化が進む中、我が国では、高齢化率が27.7%を超える世界最高水準の長寿国の地位を享受しています。誰しも長生きすることを望み、それが実現すれば、社会は必然的に高齢化を迎えることになり、このこと自体は誇らしいことです。
 一方で、超高齢社会におけるさまざまな課題は、この平均寿命と、いわゆる健康寿命とのギャップが大きいことにあります。現在日本では、何らかの介助・介護が必要な、日常生活に制限のある生活を送るようになってから、男性で約9年、女性は約13年もの間、生きることになります。
 これからさらに「人生100年時代」を迎えるに当たって、一人ひとりが自分らしい生活を続けることへのサポート、介護・福祉現場で働く方々の負担を軽減するサポートが益々求められるようになります。さらに、高齢者が緩やかに社会活動や経済活動に関わり、生きがいを持ち続けられる「生涯現役社会」という新たな経済社会への転換が必要です。政府としても、本年6月に策定した「未来投資戦略2018」において、「次世代ヘルスケア・システムの構築」を戦略的に取り組むべき分野と位置づけ、関連施策を推進しています。
 こうした中、高齢者や障がい者の方々の生活の質の向上や自立の支援、社会活動への参加、介護に携わる方々の負担軽減などの観点から、福祉用具及び福祉用具産業が果たすべき役割はこれまで以上に高まっています。
 日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)が実施した2015年度福祉用具産業の市場規模調査(工場出荷額)では、調査を開始した1993年度に7735億円であった市場規模は、2016年度には1兆4602億円と約1.9倍に成長し、対2014年度比でみても2.4%の増加となっており、今後も引き続き拡大傾向であることが想定されます。

研究開発の推進支援

 このような背景を踏まえ、経済産業省では、福祉用具産業の発展に向けて、大きく2つの研究開発の取組を推進しています。
 1つ目は福祉用具の開発・実用化および普及の推進です。福祉用具法に基づき、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて、優れた技術や創意工夫のある実用的な福祉用具の開発を行う民間企業等の開発費用の一部を助成しています。この事業を開始した1993年度から2017年度までに226件の開発支援を行い、このうち100件以上が実用化され、高齢者や障がい者の方々の生活の質の向上、介護に携わる方々の負担軽減に貢献してきています。また、福祉用具開発に関する技術動向等調査・分析を行い、事業者への情報提供を図るとともに、展示会等への助成を行い、普及活動にも努めています。
 2つ目はロボット介護機器開発および導入の促進です。経済産業省と厚生労働省は、自立支援による利用者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減を実現するため、「ロボット技術の介護利用における重点分野」を17年10月に改訂しました。本改訂を踏まえて、今年度は、ロボット介護機器開発・標準化事業として、11億円の予算を確保し、国立研究開発法人
 日本医療研究開発機構(AMED)を通じて、高齢者等の自立支援に資するロボット介護機器の開発支援を行っています。
 同時に、導入効果の評価、安全基準・試験手法の開発、国際標準化および海外認証制度との連携も進めているところです。これらの取組を通じて、ロボット介護機器の導入・普及を積極的に推進していきます。
 我が国は世界に先駆けて超高齢社会に突入し、介護人材の不足等の社会的な課題やニーズが顕在化しております。だからこそ、日本は医療・介護分野におけるイノベーションのハブとなり得る、また、日本発の福祉用具は世界にも貢献し得るものと考えます。
 今年度、新たな取り組みとして「1st Well Aging Society Summit Asia-Japan」(第1回アジア―日本高齢社会サミット)を10月9日に開催します。世界中から、日本の超高齢社会に関心があるベンチャーや投資家、サポート企業等を集めたビジネスマッチングを進める予定です。また、10月11日には、H.C.R.国際福祉機器展において「超高齢社会先進国・日本が手掛ける介護・福祉イノベーション~日本とアジア諸国の現状・課題とともに」をテーマに、今後高齢化が進展する近隣アジア諸国の介護・福祉分野の現状と課題、課題解決に向けた取り組みについて紹介予定です。
 経済産業省としては、今後も、国民の健康と、一人ひとりの自分らしい生活の実現に向けた多様なニーズを支える、安全・安心な福祉用具産業の更なる発展を促進します。
<プロフィール>
 経済産業省 商務・サービスグループ 医療・福祉機器産業室長
 2006年経済産業省入省。07年経済産業政策局産業人材政策参事官室係長。15年商務・サービスグループヘルスケア産業課総括補佐。今年7月より現職

(福祉用具の日しんぶん2018年10月1日号)

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