コラム

高齢者と家族を支える福祉用具と住宅改修/厚労省 佐藤守孝さん

高齢者と家族を支える福祉用具と住宅改修/厚労省 佐藤守孝さん

 10月1日は「福祉用具の日」。福祉用具の使用について啓発・普及する日です。本紙では、福祉用具を共管する厚生労働省と経済産業省のお二人からメッセージをいただきました。

現状と課題

 介護保険の現状

 ご存じのとおり、65歳以上の人口は2025年には3657万人、40年にはすべての都道府県で65歳以上人口割合が3割を超えて、3867万人になると予測されています (*1)。介護保険制度の経緯では、創設時の00年4月に約2165万人であった第1号被保険者は16年4月末には約3387万人と約1.56倍に、要介護(要支援)の認定者数では218万人から約622万人と約2.85倍に増加しています (*2)。

 福祉用具の現状

 福祉用具の貸与及ぶ販売は、「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう(介護保険法第1条抜粋)」という介護保険法の目的に鑑み、介護保険制度施行時から基本的なサービスと位置付けてきました。利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能向上に応じて、適時、適切な福祉用具を利用者に提供できるように、貸与を原則としています。また、他人が使用したものを再利用することに心理的に抵抗あがるものや使用することで形が変わってしまうものは、購入するようにしています。16年4月には6983.7千件が貸与されていて、特殊寝台付属品2431.1千件(34.8%)、手すり1432.1千件(20.5%)、特殊寝台841.3千件(12.0%)が多く貸与されています (*3)。

福祉用具のこれから

 第128回社会保障審議会介護保険費給付分科会において、「介護保険福祉用具.住宅改修評価検討会の検討結果(案)」が了承され、「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて(2000年1月31日老企第34号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」の「第一部1 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目 (9)歩行器」の一部を改正しました。
 具体的には、「なお、上り坂ではアシスト、下り坂では制動、坂道の横断では片流れ防止及びつまずき等による急発進防止の機能(自動制御等の機能)が付加されたものであって、左右のフレームとこれを連結する中央部のパイプからなり、四輪又はそれ以上の車輪を有し、うち二つ以上の車輪について自動制御等が可能であるものを含む」を追加しました。
 これにより、一定の形状、安全性を満たすことで介護保険の貸与の対象となる機器が新たに承認される可能性が開けたことで、より一層に利用者の生活自立を促進し、介護者の負担が軽減できるような機器の開発が期待されているところです。

福祉用具を正しく使うために

 介護保険で福祉用具の貸与や購入をするためには、介護支援専門員がケアプランで福祉用具の貸与や購入を計画します。その後、福祉用具専門相談員が福祉用具利用計画書に基づいて、利用者の自立支援の目標に沿った適切な福祉用具を選択し、その機能や使用方法とともに利用料等を説明して、利用者の同意を得ることになっています。
 福祉用具専門相談員は、必要な知識などの習得といった自己研さんに努めることが義務となっています。利用者にとっても、福祉用具について安心して相談できる存在ですが、利用者自身も自己決定するということを認識して、広く情報収集に努めていただきたいと思います。
 今後も、福祉用具を有効に活用することで、利用者皆様の自立した生活の支援と介護者皆様の介護負担の軽減につなげることができるように、環境を整備していけるように努力してまいります。
【引用】
(*1) 国立社会保障・人口問題研究所:日本の地域別将来推計人口2013年3月推計)
(*2) 厚生労働省:介護保険事業状況報告月報(暫定版)
(*3) 厚生労働省:介護給付費等実態調査月報(2016年5月審査分)

 佐藤守孝さん(厚生労働省 厚生労働省老健局高齢者支援課長)


(福祉用具の日しんぶん2016年10月1日号)

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