コラム

《福祉用具で解決!介護の困りごと》安心・安全な入浴を実現する福祉用具/入浴支援(川口青児さん)

《福祉用具で解決!介護の困りごと》安心・安全な入浴を実現する福祉用具/入浴支援(川口青児さん)

 入浴は、清潔を保つだけでなく、疲れを癒して解放感が得られるなど、日本人にとって大切な日常生活の一つです。

 浴室への移動から始まり、脱衣や着衣などの着替え動作、洗体、洗髪、浴槽への出入り動作など、種類も多く各動作について本人の能力と住環境を評価し、支援方法を検討することが必要です。

 特に浴室内では、立ち上がりなどの垂直方向の重心移動が多く、床面も滑りやすいため、シャワーチェア(図1)が導入頻度の高い用具の一つです。
 転倒のリスクが高い場合には、座位にて浴槽内の出入りができるようバスボードを検討することもあります。長年使用した浴槽では、取り換えも含め浴室内全体の改修を希望される場合もあり、高齢者配慮浴槽(図2)もお奨めです。
 この浴槽は、座位での浴槽出入りが容易にできるだけでなく、浴槽内底面の滑りにくい凹凸模様や浴槽内手すり(ハンドグリップ)、握りやすい浴槽縁グリップ(フランジ)など高齢者に使いやすい工夫がなされています。
 また、自宅ではなく通所リハビリテーション等を利用し、施設での入浴を勧める場合もあります。例えば、一人暮らしで家に籠り、「風呂なんか入りたくない」とおっしゃる方に対し、心の奥では「外に出て、人と会って話をしたい」という想い(潜在的なニーズ)があるのではないかと推察し、担当のヘルパーさんらとともに入浴サービスを促し、清潔な身体だけでなく、社会への参加をも取り戻すきっかけになった場合もあります。

冬場はヒートショックにも注意

 最後に、これから冬の季節を迎えるため、「ヒートショック」(図3)について触れたいと思います。ヒートショックとは、大きな気温の変化によって血圧が急激に上下し、心臓や血管の疾患が起こることです。
 ヒートショックによる溺水等での死亡者数が、高齢者の交通事故による死亡者数より高いという報告もあり、安心安全な入浴のためには、福祉用具のみならず、浴室内外の室温などにも注意が必要です。

 介護保険の「特定福祉用具販売」では、安全に入浴することを助ける入浴補助用具を1〜3割の自己負担で購入できる仕組みがあります。詳しくはケアマネジャーや福祉用具専門相談員等にご相談ください。
かわぐち せいじ
福岡医健・スポーツ専門学校副校長
1990 年作業療法士免許取得。リハビリテーションセンター、総合病院等にて勤務。2008年厚生労働省福祉用具・住宅改修指導官。18年より現職。同校の教務部長も兼任する。

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