コラム
《福祉用具で解決!介護の困りごと》自分でできることを増やす車いす/車いす(市川洌さん)
「車いす」は移動を助け(車)、姿勢を維持してくれる(いす)道具です。車いすを適切に選択し、調節することによって、この2つの機能で使う人の生活を広げてくれる用具です。
車いすを自分で駆動するには
まず移動ですが、歩くことが難しくなった時に利用すれば移動が自立したり容易になったりします。しかし、車いすを試しに駆動してみるとわかりますが、健常者にとっても車いすを駆動することは決して楽なことではありません。ましてや高齢者にとってはついつい介助に依存したくなってしまいます。しかし、介助に頼ることなく自分で動けるということは大きな自信を与えてくれますし
車いすを楽に操作するためには車いす自体をその人の体格に合わせ、駆動の仕方に合わせて調節する必要があります。車いすを駆動するためには上肢でこいだり、足で床を押したり、その両方を組み合わせたりと多様な方法があります。その方法に応じて後輪の大きさを選択し、その車軸位置をこぎやすい位置にし、座面の高さ、座面の傾きや背もたれの角度を調節する必要があります。一人ひとりの操作方法に応じて調節し、少しでも楽に駆動できるようにする必要があります。
しかし、多くの高齢者が調節されていない車いすを利用しています。本人・家族はもちろん、ケアマネジャー、介護職、事業者などの支援者も、車いすをきちんと適合すればどのような効果が得られるのか、知識も実体験も持ち合わせていないように感じます。
一般的に車いすの調節(適合)は高齢者の場合には福祉用具専門相談員か、訪問リハなどのPTやOTなどが行うことになっていますが、車いすの適合に関する知識や技術を有しているスタッフをきちんと探さないと適切な支援が得られない現実があります。
一人ひとりの身体機能や環境条件などに応じて車いすを調節することは専門的な知識と技術、経験が必要ですが、ユーザーがきちんと相談すれば必ず知識と技術を持ったスタッフに出会えるはずです。自分で車いすを駆動したければあきらめず、主張し続けることが必要かもしれません。写真1の女性は片手だけで車いすの両輪を交互に駆動して自走しますが、操作しやすいようにさまざまな調節や工夫がなされています。ゆっくりではありますが、自分で行きたいところに行っています。
しかし、多くの高齢者が調節されていない車いすを利用しています。本人・家族はもちろん、ケアマネジャー、介護職、事業者などの支援者も、車いすをきちんと適合すればどのような効果が得られるのか、知識も実体験も持ち合わせていないように感じます。
一般的に車いすの調節(適合)は高齢者の場合には福祉用具専門相談員か、訪問リハなどのPTやOTなどが行うことになっていますが、車いすの適合に関する知識や技術を有しているスタッフをきちんと探さないと適切な支援が得られない現実があります。
一人ひとりの身体機能や環境条件などに応じて車いすを調節することは専門的な知識と技術、経験が必要ですが、ユーザーがきちんと相談すれば必ず知識と技術を持ったスタッフに出会えるはずです。自分で車いすを駆動したければあきらめず、主張し続けることが必要かもしれません。写真1の女性は片手だけで車いすの両輪を交互に駆動して自走しますが、操作しやすいようにさまざまな調節や工夫がなされています。ゆっくりではありますが、自分で行きたいところに行っています。
自分で食事することにも車いすが貢献
また、車いすは食事を自分でとり続けるためにも大切な道具です。食事を自分でするためには体幹をきちんと直立させることがまず基本です。
そのために車いすの背角や座角など種々の調節を行います。こうすれば長い期間にわたって自分で食べ続けられる可能性が広がります。
食卓のいすでは姿勢を維持するための調節はできませんし、いすへの移乗介助はとても大変な作業になってしまいます。
一方、ベッドの背上げ座位では背をいっぱいに起こしても体幹が直立しませんので、上肢が使いにくくなり、上肢の機能が低下すると自分で食べられなくなりがちです。
可能な限り長い期間自分で食べ続けるためには、早い段階から姿勢には十分に気をつけ、姿勢が崩れるようになったら、車いすをきちんと調節し、最適なクッションを選んで、食事をしやすい姿勢になるようにすることをお勧めします。写真2の女性はアルツハイマー症で要介護5になって3年ですが、自分で食べられることが多く、調子が良い時は最後まで自分で食べ続けました。
このように、車いすをきちんと調節すれば自分でできることが増え、生活を広げることができます。
いちかわ きよし
福祉技術研究所 代表
電動義手の研究から始まり、その後各種の福祉機器の研究開発に従事した。1990 年代から福祉用具を利用して、高齢者・障がい者の生活を作るための支援に関するコンサルティングや講演を中心に活動している。
福祉技術研究所 代表
電動義手の研究から始まり、その後各種の福祉機器の研究開発に従事した。1990 年代から福祉用具を利用して、高齢者・障がい者の生活を作るための支援に関するコンサルティングや講演を中心に活動している。
(福祉用具の日しんぶん2022年10月1日号)