連載《プリズム》

消費税アップの試練

消費税アップの試練

 消費税がアップすると、原則非課税で運営されている介護保険サービスの事業者は、事業運営に要した物品やサービスの消費税分が事業者の負担となる。先ごろ消費税率が現行の5%から、14年4月1日に8%に、15年10月1日に10%に引き上げることが閣議決定された。(プリズム2012年5月)

 消費税の1%分は2.7兆円。消費税5%なら10.4兆円の税収だ。このうち国分となる2.82%はすでに全額、年金・医療・介護などの社会保障費に投入されており、不足分を別に補っているのが現状。税率アップにより、少子化対策を加えた社会保障4経費にかかる国の負担分を全額消費税でまかなうというのが目的税化のねらいだという。この仕組みでは、社会保障費の増大に伴って、消費税率を引き上げざるを得ない。

 非課税品目は消費者にはありがたいが、事業者はそれまでに支払った消費税分を取り戻す術がない。そこで、原則非課税の診療報酬には、消費税分として1.53%が上乗せされている。実際は、これでは不十分というのが医師会の主張で、全国老人保健施設協会は消費税の原則課税を求めている。介護保険事業者も同様な課題を抱えているが、経営実態調査結果に基づく収支差によって介護報酬が決められてきたので、これまではあまり表だった議論にならなかった。消費税率アップが現実になると、介護事業者にとっては初の試練になる。

 消費税アップ分を介護報酬で対処するとなれば介護給付費分科会の開催。基金や交付金での対処なら政府の予算問題。前者は利用者負担が生じるため、非課税にした意味が薄れる。また、自由価格制の福祉用具サービスは事業者ごとの対応になるのか。介護事業者は消費税アップへ対応の基本スキームを真剣に検討する必要がある。国も消費税引き上げに伴う社会保障支出増に0.8兆円を見込む。消費税アップが介護人材の人件費抑制につながらないようにしたい。

(シルバー産業新聞2012年5月10日号)

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