連載《プリズム》

復旧に待ったなし

元日の地震から3週間を経た能登半島中部の志賀町と七尾市の高齢者施設を訪ねた。道路の損傷が激しく補修だらけの道を進んだ。

  志賀町(高齢化率44.2%)は震度7、七尾市(同37.9%)は震度6強の激しい揺れに襲われ、志賀町では古い木造家屋が見る影もなく潰れている。どこも断水が続き、トイレや風呂、厨房、洗濯が滞っていた。ペットボトルの水でトイレを流すが、排水管が遮断している施設では水も流せない。

 清拭だけで風呂に入れず、ボランティアの訪問入浴車が来てくれてやっとお湯につかれた入居者も多い。職員や家族は休みに風呂探しに出かける。管に温水や冷水を通して冷暖房を行う施設では、配管が折れて全館暖房ができない。電気やガス(プロパンガス)が通っても、断水は生活の質を著しく下げる。目の当たりにそうした状況に接した

▼甚大な被害があった奥能登の高齢化率(20年4月現在)はさらに高く、珠洲市50.6%、穴水町50.4%、能登町50.0%、輪島市46.8%と、次代を担う若年世代が少ない。今地震で輪島の朝市は壊滅的な火災に見舞われた。本紙20面のアーカイブスで、ねんりんピック新聞2010いしかわに掲載した、2007年の能登沖地震を乗り越えた輪島の朝市を載せている。当時の輪島市の高齢化率は36%。それから10数年経て、10ポイント高齢化が進んだことになる。早急に復旧・復興に着手しないと地域の担い手がいなくなる

▼未開通のJR和倉温泉駅(七尾市)の側にある居宅介護支援事業所の早田真紀子所長は、利用者200人の3分の1が金沢方面へ避難したと話した。その半分の人たちは家が倒壊するなど、住まいが崩れている。「帰る」を選択する人がどれだけいるか。次には、事業継続の懸念が被さってくる、と。復旧に待ったなしという。

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル