連載《プリズム》

当て字 ひとつでも

当て字 ひとつでも

 本紙では、障害者は、法律名や制度名などの記載を除いて、障がい者と表している。「障碍」というのが語彙に照らして正しく、「障」は「さしさわり」の意であり、「碍」(がい)は「さまたげる」の意で、同様な意味合いの漢字である。(プリズム2018年12月)

 しかし、障碍の碍が常用漢字にないために、「害」が使われることになった。小学館デジタル大辞泉によると、「害」には「生命を途中で絶つ」「順調な生存の妨げになるもの」「邪魔をする」がある。「障」(さしさわり)や「碍」(さまたげる)という漢字についても、ハンディキャップという用語につながるように感じるが、害虫、危害、災害、有害など、存在を否定する意味合いのある「害」とは、適正な漢字使用という点でレベルが違うように思う。したがって、障「害」という当て字は、できる限り避けたいと考えた。

 「障碍 表記 事情に応じて可」という朝日新聞(11月23日)の記事が載った。今年5月、6月に「碍」の1字を常用漢字表に加えるように、衆参両院の文教科学委員会で決議された。これを受けて、文化審議会国語分科会が検討したが、「常用漢字の選定には相応の審議が必要」として、「碍」を常用漢字に追加することは当面見合わされた。ただ、現状でも障害と異なる表記を用いることは可能であるとして、「障碍」の使用も妨げないとした。

 本紙の受け止めとしては、今後も「障がい者」を続けたいと思う。言葉や当て字や言い回しで、障がい者の置かれている状況が変わるわけではないという考えもあるが、せめても「害」の使用だけは控えたい。今回、「障碍」を使ってもよいとの判断が示され、良かったと思うが、本紙はいままでの表記を続けていきたい。

 ICF(国際障害分類)の発想では、障がいは固定的なものではなく、社会全体や周囲のあり方などによって、その表れ方が随分と変わるという。それ故に社会のあり方などが問われることになる。当て字1つでも、それによって、社会での生きにくさが増すようなことは避けたいと思う。

(シルバー産業新聞2018年12月10日号)

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