連載《プリズム》

世界一の社会保障へ

世界一の社会保障へ

 総選挙と来年7月の参院選を控えるなか、11月30日、総理官邸で社会保障制度改革国民会議が始まった。(プリズム2012年12月)

 70年から今年までの40年余りの間に、国民1人あたりの社会保障費は、当初の3.5万円から109.5万円まで一直線に急拡大をした。勤勉な日本人が築き上げてきた経済力がその背景にあった。健康寿命や医療サービスへのアクセスの良さ、医療費負担の公平性などの観点で、WHO(世界保健機関)は、日本の医療制度は世界一だと評価している。
 
 われわれは世界一という高い評価を得るために、毎月多額の負担をしてきている。もちろん、医療や介護、福祉、行政などの現場で働く多くの人々の努力の賜であることは言うまでもない。厳しい財源の下でも、今後一段と高まる医療介護ニーズにしっかりと対処していくことが基本になるが、どこを支え、どこを抑えるのか、国民会議は論拠に基づいて納得のできる判断を示す責任がある。

 前の総選挙では自民党が自滅したが、今は、民主党が政権政党として底の浅さを露呈している。参議院選に敗れて、ねじれ国会になった時、民主党は自分たちの甘さを実感したに違いない。それでも、2つの点で民主党を評価したい。日本の負債は9月末で983兆円、国民1人あたり771万円の負債を背負う。4人家族ならば一家で3000万円を超える借金だ。見えないところで、私たちは家の貯金をはるかに超える借金をしているのだ。消費税引上げはやむを得ないだろう。日本を置いて夜逃げをするわけにはいかない。消費税を通し、若い世代へのつけ回しを何とか抑えようとした点を評価したい。

 障がい者施策の充実に向けた民主党の取り組みは、それなりに一貫していたと思う。当事者視点が明確だった。12月3~9日は障がい者週間だ。誰しも、いつ何時、障がいを持たないとは限らない。WHOの世界一の評価があるなら、障がいを持ってもなお、自律して、その人らしい生活を送れる社会であることは当然のことだ。国民会議は、社会保障制度の真のあり方を問うものであってほしい。その動向に注目していきたい。

(シルバー産業新聞2012年12月10日号)

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