自立生活支援とケアマネジメントの考え方

社福法人の地域貢献のしかた/大橋謙策(連載12)

社福法人の地域貢献のしかた/大橋謙策(連載12)

 地域共生社会政策においては、前号でも指摘したように社会福祉施設が地域共生社会政策具現化の拠点になる必要性がある。その要は、2016年の社会福祉法の改正で規定された社会福祉法人の「地域貢献」である。

 その地域貢献の考え方と活動の類型化をすると以下のような活動が考えられる。

■ 第1 施設資材の活用

 社会福祉施設が有している設備、空間、備品を活用した地域貢献である。施設のホールを地域住民の便宜に供したり、施設が有しているマイク、テント等の備品を地域活動に貸し出す地域貢献である。あるいは施設の会議室やサービス利用者の家族用に確保している部屋を活用して生活困窮者への住宅セーフティネットとして短期居住支援の役割を担うとか、さらには、それらの部屋を活用して、放課後サービスや学習支援サービス、あるいは引きこもりの方の居場所づくりをボランティアの協力を得て行うこともできる。

■ 第2 災害備蓄の活用

 災害支援ネットワーク(DWAT)の構築が各都道府県単位で進められているが、災害派遣の人材の養成・研修のみならず、社会福祉施設がある市町村の福祉避難所の指定を受け、市町村の防災部局や社会福祉行政、社会福祉協議会、民生委員協議会と連携して、福祉避難所の運営を行うことも今求められている。また、社会福祉施設がサービス利用者のために備蓄している災害対応備品や食材を、市町村と協議をして地域住民向けの分も上乗せして備蓄することも考えられる。
 更には、それらの緊急時対応の備品の中には、「賞味期限」等があり、買い替える時にはそれらの食材を生活困窮者へのサービスとして配布したり、あるいはその食材を活用しての食事の提供をボランティアの協力を得て行うこともできる。

 第3 専門職の活動

 社会福祉施設には、多様な専門職が勤めている。看護師、管理栄養士、介護福祉士、社会福祉士、保育士はもとより作業療法士、理学療法士、保健師、医師等も勤務している場合がある。これらの専門職の機能を活かして、施設に「地域福祉まるごと相談室」を設置し、身近なところで包括的支援の窓口機能が展開されれば、住民の「福祉アクセシビリテイ」は格段に向上する。また、社会福祉施設が地域の24時間安心コールセンター機能も持つことも考えられる。

 第4 地域ニーズへの対応

 社会福祉法人として、地域のニーズを把握し、そのニーズ対応型福祉サービスを開拓していくことである。多くの市町村には、障がい者の入所型の施設や児童分野の児童養護施設、乳児院がなく、障がい児者や子どものショートステイのニーズに応えられず困っている状況がある。今回の新型コロナウイルスの件においても核家族、夫婦共働き家庭での親の感染に伴う子どものショートステイのニーズは大きな問題の一つであった。今や全国のどこの市町村でも、特別養護老人ホームはある。その特養を活用し、直接ケアする要員は社会福祉法人が普段から養成、研修を行い、登録しておいて、必要が生じたらその人が要員として働くという特養の設備を活用しての障がい者や子どものショートステイも可能である。

 第5 生活のしづらさを受止める

 対人援助を生業としている社会福祉施設は、生活のしづらさを抱えた人、引きこもりの人の施設での「柔らかな人間関係」を通して多様な社会参加へのステップの一つになりえる。社会福祉施設は清掃や洗濯、あるいは調理場での食器洗い、更にはシーツ交換等の多様な働き方を提供でき、それをステップにした新たな社会参加、就労の道も開かれる。

 第6 福祉教育の提供

 施設サービス利用者と児童・生徒との交流を通しての福祉教育の機会の提供である。かつて、筆者は校内暴力、家庭内暴力等子育てが荒れていた1980年代に、中学校において福祉教育の実践を行ってきた。障がい者との交流、支援活動は、「番長」と呼ばれる問題行動を起こしている生徒にとって、もっとも自分にとって居心地のいい、自己肯定感の持てる機会だったらしく、多くの生徒が自己変革をしていった。
 それは、ミルトン・メイヤロフが言う、「一人の人格をケアするとは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することを助けることである」「ケアとは、ケアをする人、ケアをされる人に生じる変化とともに成長発展をとげる関係を指しているのである」「ケアすることは、世界の中にあって、『自分の落ち着き場所にいる』のである。他の人をケアすることを通して、他の人々に役立つことによって、その人は自身の生の真の意味を生きているのである」という考え方が色濃く実践される場であった。

 第7 地産地消でまちづくり

 社会福祉施設利用者の食材の「地産地消」による「福祉でまちづくり」を推進することである。と同時に、その「地産地消」において、農業と社会福祉の連携を推進し、高齢化している農業従事者の技術、技能指導の下に、耕作放棄地等を活用して障がい者が農業に従事するというシステムを地域で作ることも「福祉でまちづくり」になる。

 財源確保の方法

 このような社会福祉法人の「地域貢献」を「剰余財産」が出たから行うという消極的発想ではなく、積極的に行って欲しい。そのためにも、財源確保の方法が重要である。(ⅰ)社会福祉法人の後援会を組織化し、その理解の基に資金を確保すること、(ⅱ)社会福祉法人がこれらの企画、プログラムを積極的に地域住民へ情報発信(地域向けの広報紙配布)し、クラウドファンディングによる資金の確保をすること、(ⅲ)多様な助成団体への申請やコミュニティファンド化を進めている共同募金会への申請により資金を確保することなどを考えて、積極的に「地域貢献」を図ることが求められている。
(シルバー産業新聞2021年11月10号)

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