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準備できていますか? 同一労働同一賃金対応/西谷直子(連載171)

準備できていますか? 同一労働同一賃金対応/西谷直子(連載171)

 生活や仕事のスタイルに様々な変化があった今年も、残すところわずかとなりました。来春2021年の4月からは、いよいよ中小企業においても同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)が適用されます。

 同一労働同一賃金は、同一企業における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者等)との間の不合理な待遇差を解消し、雇用形態に関わらない公正な待遇を実現することで、全ての労働者が能力を発揮しながら長期にわたって活躍できる環境を整備することを目指します。今回の新型コロナウイルスの影響もあり、在宅勤務や時短勤務をはじめ複数の仕事を持つなど、多様な働き方がますます浸透していくことでしょう。

 同一労働同一賃金に関しては、10月に大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件の最高裁判決が出ましたので、ニュース等で耳にされる機会も多かったのではないでしょうか。これまで、不合理な待遇差の解消に関する規定は、短時間労働者については「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」、有期雇用労働者については「労働契約法」で定められていましたが、18年の改正で「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」に統合されました。この法律の主な改正ポイントは、次の通りです。

1.不合理な待遇差の禁止

 同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止(原則となる考え方と具体例はガイドラインで例示)。

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

 非正規雇用労働者から求めがあった場合、事業主は「正規雇用労働者との待遇差の内容・その理由」についての説明をすることが義務化。

 それでは、具体的にどのように準備を進めていけばいいのでしょうか。

 ①対象となる労働者(パートタイム・有期雇用労働者)がいるかどうかを確認する。
 ②雇用形態ごとに、基本給・賞与・各種手当の賃金や福利厚生・教育訓練などの待遇について、正規雇用労働者と違いがあるかどうかを確認する。
 ③待遇差がある場合には、働き方や役割などの違いに見合ったものであるかどうか、不合理ではないといえるか等、その違いの理由を確認する。

 賃金の決定基準・ルールに違いがある場合の注意点:①その違いについての説明は、「将来の役割期待が異なるから」というような主観的・抽象的なものであってはならない②その違いは、職務内容、職務内容の変更範囲、配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならない。③その待遇差の中に、ガイドラインで不合理な例として示されているものや、不合理とされてしまいそうなものがある場合には、早急に改善や是正をおこなう。(不合理ではない待遇差についても、その待遇差が不合理ではないということを説明できるようにしておく)。

 手当については、支給の趣旨や目的等を洗い出していきます。趣旨や目的等が不明なものや曖昧なもの、名称と内容が一致していないもの、中には時代にそぐわないものもあるかもしれません。時間はかかるでしょうが、一つ一つ確認していく作業が必要です。

 これらの確認作業を進めるにあたっては、厚生労働省の「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)」を利用していただくといいかと思います。このマニュアルには、記入例を参考にしながら各項目について書き込んでいくことで整理ができるワークシートが掲載されています。

 それ以外にも、「パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール」「多様な人材活用で輝く企業応援サイト」などが用意されていますので、併せて活用し、事業所内の現状把握と整備を進めていただくといいでしょう。雇用形態、賃金制度等を根本的に見直すことになるかもしれません。また、労使での十分な話し合いが必要になる場面が出てくることも踏まえ、早めに取り掛かっていただくことが大切かと思います。

西谷直子

(シルバー産業新聞2020年12月10日号)

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