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近時の法改正関連情報/西谷直子(連載169)

近時の法改正関連情報/西谷直子(連載169)

 新型コロナウイルスや自然災害の影響等で、事業所の運営や勤務体制をはじめとした様々な面で変更対応をされていることと思います。そのような状況下、この秋以降も引き続き労働法関連の改正があります。

 それに伴った書式や記載事項の変更がありますし、就業規則等の事業所規程の改定も必要になりますのでご留意ください。

 引き続き助成金を申請されている事業所では、その手続きに加えて法改正対応業務も生じていることと思います。また、年末に向けての準備も出てくるこの時期、ご担当者は大変だと思います。

 そこで、改正事項の概略を一覧にまとめましたので、把握していただければと思います。

<近時の改正事項の概略>

助成金 2020年12月末まで延長

 雇用調整助成金の特例措置、緊急雇用安定助成金、新型コロナウイルス感染対応休業支援金・給付金

労災保険給付(複数就業者関連) 2020年9月1日より

 複数の会社で働いている方に関して、災害が発生した場合の保険給付額につき、これまでは災害が発生した勤務先の賃金額のみを基礎に決定されていましたが、改正後は、すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に決定されることになりました。

 また労災認定において、これまではそれぞれの勤務先ごとに負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価して判断されていましたが、改正後は、それぞれの勤務先ごとに負荷を個別に評価して認定できない場合には、すべての勤務先の負荷を総合的に評価して判断されることになりました。

 →労災保険給付の各種様式が変更され「その他就業先の有無」という欄も設けられていますので、2020年9月1日以降に発生した労災に係る給付請求は、新様式を使用してください。新様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

雇用保険(失業給付関連)
  ①2020年8月1日より ②2020年10月1日より

 ① 失業給付の受給資格に係る「被保険者期間」の算定方法が、「離職日から1 カ月ごとに区切っていった期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月(※)、または、賃金支払いの基礎となった労働時間数が80 時間以上ある月(※)を1カ月として計算する」となりました。 ※満1カ月ある月が該当。満1カ月に満たない月は、この条件を満たしても1カ月として計算されない。

 今回「または、」以降の部分が追加されました。1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ、雇用見込期間が31日以上であることという雇用保険被保険者要件を満たしながらも、賃金支払の基礎となった日数が11日に満たないことにより、被保険者期間に算入されない期間が出てくることがあるため、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する見直しです。

 → 離職日が2020年8月1日以降の退職者の離職票を作成する際、賃金支払基礎日数が10日以下の期間については、この期間における賃金支払の基礎となった労働時間数を記載することになります。

 ② 自己都合退職の場合の給付制限期間が3カ月から2カ月に短縮されました。 ※5年間のうちに2回まで。自己の責に帰すべき重大な事由で退職の場合は、従前どおり3カ月

 ③ 法改正ではありませんが、離職証明書の作成に当たって、新型コロナウイルス感染症の影響による離職の場合は、離職証明書の具体的事情記載欄(事業主)に記載する離職理由の末尾に「(コロナ関係)」と記載をして下さい。

厚生年金(標準報酬月額の等級追加) 2020年9月1日より
 
 これまでの最高等級(第31等級・62万円)の上に、新たな等級(第32等級・65万円)が追加され、上限が引き上げられました。報酬月額が63.5万円以上の方は、この新しい第32等級に該当することになりますが、手続きは必要ありません。該当者がいる場合、年金機構から事業所あてにお知らせが届きます。

育児・介護休業法(子の看護・介護休暇)  2021年1月1日より

 これまで子の看護休暇と介護休暇は、半日単位で取得可能でしたが、時間単位での取得が可能となります。また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できませんでしたが、全ての労働者が取得できるようになります。

 ※時間単位とは1時間単位のことで、労働者の希望する時間数で取得できるようにすること。
→就業規則等の規程の改定が必要になります。

パワーハラスメント防止措置義務化 2020年6月1日より

 職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。

 「職場におけるパワーハラスメント」とは、次の3つの要素をすべて満たすものです。(1)優越的な関係を背景とした(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)身体的もしくは精神的な苦痛を与えて就業環境を害すること。 ※適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たらない。

 なお、中小企業については、2022年3月31日までは努力義務、2022年4月1日から義務となります。

最低賃金の全国平均、 時給902円に

 このほか、毎年秋に改定される最低賃金については、今年は新型コロナウイルスの影響もあり、事実上、現行水準に据え置かれる方針となりましたが、都道府県で議論した結果、40の県で1円~3円の引き上げとなります。それにより、最低賃金の全国平均は1円引き上がり、時給902円となっています。

 一方、北海道・東京都・静岡県・京都府・大阪府・広島県・山口県の金額は据え置きとされ、昨年から変更なしの同額です。

 なお、法改正等の内容の詳細および各都道府県の最低賃金額については、厚生労働省のホームページで確認をしていただきますようお願い致します。
 西谷直子
(シルバー産業新聞2020年10月10日号)

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