生き活きケア

生き活きケア222 メイクが変える生活意欲

生き活きケア222 メイクが変える生活意欲

 高齢者のQOL向上に寄与する取り組みとして、「介護美容」が注目を集めている。顔色を明るく見せるメイクや、指先のおしゃれを楽しむネイルなど、外見の変化が日常生活の意欲向上につながるケースも多く、レクリエーションの一環として導入する介護施設が増加。職員の業務負担軽減やセカンドキャリアの選択肢としても新たな価値を提供している。

施設に広がる 「介護美容」

 小規模多機能型居宅介護十思(東京都台東区)では、通い・泊りの利用者へ介護美容を定期的に実施している。施術を行うのはミライプロジェクト(東京都渋谷区、山際聡社長)が運営する専門スクール「介護美容研究所」の受講生。ケアビューティーコースの実習カリキュラムの一環として行う。

 取材したこの日は7~8人の受講生が参加。介護施設が初めてという人もおり、最初は緊張感も見られたが、利用者と挨拶を交わしながら少しずつ雰囲気をほぐしていく。

 施術は化粧水や乳液を用いたスキンケアから始まる。顔全体にやさしくなじませながらタッピングを受けた利用者は、「もちもちになった」と笑顔を見せた。
施術の流れを説明しながら入念にヘッドトリートメント

施術の流れを説明しながら入念にヘッドトリートメント

 続いてベースメイクを整えると、好みや雰囲気を確認しながら目元や口元のメイクを施していく。アイラインの有無やナチュラルな仕上がりの程度などについて丁寧に問いかけると、利用者は自分らしいスタイルを思い出すように楽しげに応じていた。アイシャドウやリップの色選びでは、本人の好みを引き出すだけでなく、着ている衣服に合うものを受講生が提案する場面も見られた。

 メイクが仕上がると、利用者は待ちきれない様子で鏡をのぞき込む。恥ずかしそうにはにかむ人、驚いたように目を見開く人など、反応はさまざま。利用者どうしで顔を見合わせ「きれいになったじゃない」と嬉しそうに声をかけ合う場面も見られた。当初は離れた場所から様子を見ていた男性利用者も徐々に関心を示し、提案どおりエステを受けた後には満足げな表情を浮かべていた。
メイク後は会話に花が咲いていた

メイク後は会話に花が咲いていた

 同施設の管理者・竹原恵子さんは「利用者の表情がぐっと明るくなり、会話も増える。帰宅後の家族とのコミュニケーションにもつながっている」と評価する。

 実習中はスクールの講師が全体を見守り、終了後にフィードバック。注意すべき点や良かったところを具体的に伝え、次の実践につなげている。

 受講生の一人は「スクールでの練習とは異なり、実際に高齢者へ施術する難しさを感じた。目の見えない利用者がいたので、仕上がりをどう伝えるか試行錯誤した」と振り返った。

介護×美容のスペシャリスト業界の人材発掘に

 同研究所のケアビューティーコースでは、メイク・ネイル・エステの技術をはじめ、営業などのビジネススキル、ターミナルケアへの理解も含めて指導し、独立して活動できる人材を育成している。

 受講生は介護・看護や美容関係の資格を持たない人が中心で、年齢層も幅広い。介護未経験者も多いため、認知症の人とのコミュニケーション、高齢者の皮膚の状態を踏まえた施術の注意点など、介護職員初任者研修の講座も盛り込む。全てのカリキュラムが揃った1年コースが人気。
 
 介護美容の訪問先は有料老人ホームを中心にグループホームやデイサービスにも広がっている。受入れ施設からは利用者のQOL向上、レクの代替や施術時間の有効活用による職員の負担軽減など、評価を集めている。

 同社スクールサービス部門の渡邊文三朗マネージャーは「ケアビューティストはメイクにとどまらず、フットケアなど専門性が求められ介護職員が不安を感じやすいケアも担う。こうした価値や効果を客観的に示すため、今後は日本介護美容協会を通じて数値化やガイドラインの策定を進め、社会的価値と信頼の向上につなげたい」と話した。

 スクールについての問合せは同社(TEL03・6689・5455)まで。

(シルバー産業新聞2026年5月10日号)

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