生き活きケア

リハビリデイnagomi 町田木曽西店(町田市)

リハビリデイnagomi 町田木曽西店(町田市)

 「リハビリデイサービスnagomi町田木曽西店」(東京都町田市)施設長の能勢光さんは、高齢者がいつでも安心してトイレに行けるよう、地域の介護事業所に呼び掛けてトイレを開放する「D–トイレプロジェクト」に取り組んでいる。現在、介護事業所の他、医療機関や地域の会社など40カ所が賛同している。(生き活きケア 156)

「トイレ貸します」外出中のトイレ不安を地域で解消

「介助が必要な妻とトイレに一緒に入りにくい…」

 リハビリデイサービスnagomi施設長の能勢光さんがD–トイレプロジェクトを開始した理由は、町田市が開催した男性介護者向け集まりメンズケアラーカフェの参加者の一言がきっかけだ。

 参加者Aさんは認知症の奥さんを介護していた。奥さんはトイレが近く2時間おきにトイレ誘導が必要。下着の着脱や、トイレの水を自分で流すことができず、Aさんがトイレに一緒に入り介助する必要があった。

 しかし、見た目は健常な奥さんのトイレに同行することは周囲の目もあり、精神的な不安が大きかったという。Aさん以外にも、「奥さんと2人でトイレに入ることが嫌なので外出・外食をしなくなった」などの意見があがっていた。

 そこで、トイレの不安を理由に外出を控えるケースを減らしたいと、昨年10月より介護事業所などが必要な人にトイレを貸す「D–トイレプロジェクト」をスタートさせた。

 「D」には「Dementia(認知症)」、「Diversity(多様性)」、「Dear(親しみ)」などの意味がある。「町田木曽地域ではここに『同伴』の意味も込めています」(能勢さん)

地域の公共トイレ「足りない」64%

(写真①)外から見える場所 に「D-トイレ」マークを貼る

(写真①)外から見える場所 に「D-トイレ」マークを貼る

 木曽あんしん相談室(地域包括支援センター)が家族介護者や、高齢者に実施したアンケート調査によると、「トイレが近い」と回答した人は80%で、64%の人が「住む町に公共のトイレが足りない」と答え、ニーズが高いことがわかった。

 能勢さんは「リハビリを行う際に、外出を最終目標に設定することが多い。リハビリの視点からもトイレの不安を理由に外出を控えることは改善したかった」と話す。同プロジェクトに参加する際は、手すりの有無等のトイレの設備規定や、専門職の有無等は設
けておらず、趣旨の理解と「D–トイレマーク(写真①)」の掲示をお願いしている。

 同プロジェクトには▽デイサービス▽有料老人ホーム▽グループホーム▽特養▽不動産会社▽歯科医院▽地域包括支援センター▽訪問看護ステーション――など40カ所が賛同している。

 現在は町田市にある介護事業所などに能勢さんが声かけを行っているが、取り組みを知った山梨県の事業所でも活動が広がってきている。

 一人で外出できる自立した高齢者や、介助者同伴のケースが多く、専門的な介助は必要としていないため、訪問看護ステーションなど日中に専門職がおらず、事務職員のみの事業所でも実施できている。

D-トイレツアーで、 トイレの場所確認と事業所見学

 D–トイレを知らない人がトイレを借りるケースが増えてきたという。

 今後は、地域の人とD–トイレマークを貼っている事業所を巡りながら、事業所内の見学をしてもらう「D–トイレツアー」などの開催を予定している。

 「地域にあるデイサービスの場所や、介護資源を知らない人も多い。いざ介護が必要になった際に、思い出してもらえるような関係を築きたい」と能勢さん。トイレの場所を知ってもらうと同時に、普段は入りにくい介護事業所の雰囲気を体験してもらうことが目的だ。

 「安心して外出できる環境・街づくりをしてくれる人を増やしていきたい」と今後の展開に期待を寄せる。
リハビリデイサービ スnagomi 町田木曽 西店のトイレ。トイ レ設備の規定はな く、より多くの参加 を促している

リハビリデイサービ スnagomi 町田木曽 西店のトイレ。トイ レ設備の規定はな く、より多くの参加 を促している

(シルバー産業新聞2020年4月10日号)

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