未来のケアマネジャー
ケアマネジメント業務に通貫する「適切なケアマネジメント手法」 :石山麗子
「適切なケアマネジメント手法」が法定研修に導入されたことで、この手法を知らないケアマネジャーは1割未満となった。とはいえ、知っていても実践に取り入れていない人は8割超、実践で活用している人は4%(※1)にとどまっている。
適切なケアマネジメント手法(以下、本手法)といえば「法定研修に導入された手法」だと認識している人が多い。しかし、実際にはそれだけではない。あらゆるところに組み込まれた。
ケアマネジメントの始まりであるアセスメント(課題分析)もそうだ。厚生労働省は、既に2023年10月に、課題分析標準項目を一部改正する通知を発出した。理由は二つ。約四半世紀前に作られたため、①一部現状とそぐわないものになっていること、②本手法が法定研修に導入されたこと、と説明されている。
つまり、①は時代のズレ(生活様式や社会の変化、要介護者像の変化)があるので見直すということ。②はケアマネジャーが習ったことと実践のズレを生じないようにする、ということだ。
そのほかにもある。厚生労働省はホームページでケアプラン点検の見直について公表した(※2)。その理由に①本手法が法定研修に組み込まれたこと、②改正された課題分析標準項目に準じたこと等がある。
事後点検といえば、運営指導や監査が思い浮かぶ。厚生労働省介護保険指導室は毎年、行政職員を対象に「全国指導監督職員研修」を開催しており、「介護保険制度とケアマネジメント」を学ぶ科目が含まれている。そこでも本手法の活用が推奨された。
ここまでの内容をまとめると、本手法とケアマネジャー業務の関係は下図のとおり、本手法が通貫する構図となっている。
要すれば、ケアマネジャーにとって本手法との関係は、5年に1度、法定研修でかかわるだけではない。最も身近なのは課題分析(アセスメント)である。
ケアプラン点検について少し詳しくみていこう。調査結果によると、点検する側の属人的な判断や、自治体によっての差異があることがわかった。そこで、本手法と新しい課題分析標準項目を踏まえた点検支援ツール、点検支援マニュアルが作成された。これによって点検項目、点検の視点と判断基準が標準化された。国が事前に公表することでケアプラン点検の公平性や効率化が期待できる。24年11月~12月にかけて主に自治体職員やケアプラン点検従事者を対象にした、ケアプラン点検の研修会が開催された。ケアプラン点検マニュアルは現在も見直しを継続しており、今年4月には老健事業の報告書として報告される予定である(※3)。
あらためて適切なケアマネジメント手法をめぐる国の動きをみると、法定研修への導入はもとより、ケアマネジメントの学習から実践の事後点検に至るまで、ケアマネジャーだけでなく保険者にも及んでいることがわかる。
ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の中間整理では、「引き続き、適切なケアマネジメント手法について、ケアマネジャーだけでなく、医療等の関係職種や地方自治体等の関係者も含めて周知することが重要である」、「適切なケアマネジメント手法の更なる普及、ケアマネジャーの自主的な気づきを促すためのケアプラン点検の適切な実施の促進」という記載がある。何の解説もなくこの文書を読むと、見慣れた単語が並んだ文章にみえるかもしれない。しかし、本稿の解説の後に読めば本手法が「学習」→「実践」→「事後点検」と通貫したことに気づくだろう。ケアマネジャーは3~4年かけて、できるケースから、少しずつ本手法を実践に取り入れていく必要がありそうだ。
(※1)R5年度老人保健事業推進費等補助金「適切なケアマネジメント手法の策定、普及・推進に向けた調査研究事業」日本総合研究所
(※2)ケアプラン点検について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/hoken/jissi_00005.html
(※3)R6年度老人保健事業推進費等補助金「ケアプラン点検に係るマニュアル及びAIを活用した支援ツールに関する調査研究事業」NTTデータ経営研究所
適切なケアマネジメント手法(以下、本手法)といえば「法定研修に導入された手法」だと認識している人が多い。しかし、実際にはそれだけではない。あらゆるところに組み込まれた。
ケアマネジメントの始まりであるアセスメント(課題分析)もそうだ。厚生労働省は、既に2023年10月に、課題分析標準項目を一部改正する通知を発出した。理由は二つ。約四半世紀前に作られたため、①一部現状とそぐわないものになっていること、②本手法が法定研修に導入されたこと、と説明されている。
つまり、①は時代のズレ(生活様式や社会の変化、要介護者像の変化)があるので見直すということ。②はケアマネジャーが習ったことと実践のズレを生じないようにする、ということだ。
そのほかにもある。厚生労働省はホームページでケアプラン点検の見直について公表した(※2)。その理由に①本手法が法定研修に組み込まれたこと、②改正された課題分析標準項目に準じたこと等がある。
事後点検といえば、運営指導や監査が思い浮かぶ。厚生労働省介護保険指導室は毎年、行政職員を対象に「全国指導監督職員研修」を開催しており、「介護保険制度とケアマネジメント」を学ぶ科目が含まれている。そこでも本手法の活用が推奨された。
ここまでの内容をまとめると、本手法とケアマネジャー業務の関係は下図のとおり、本手法が通貫する構図となっている。
要すれば、ケアマネジャーにとって本手法との関係は、5年に1度、法定研修でかかわるだけではない。最も身近なのは課題分析(アセスメント)である。
ケアプラン点検について少し詳しくみていこう。調査結果によると、点検する側の属人的な判断や、自治体によっての差異があることがわかった。そこで、本手法と新しい課題分析標準項目を踏まえた点検支援ツール、点検支援マニュアルが作成された。これによって点検項目、点検の視点と判断基準が標準化された。国が事前に公表することでケアプラン点検の公平性や効率化が期待できる。24年11月~12月にかけて主に自治体職員やケアプラン点検従事者を対象にした、ケアプラン点検の研修会が開催された。ケアプラン点検マニュアルは現在も見直しを継続しており、今年4月には老健事業の報告書として報告される予定である(※3)。
あらためて適切なケアマネジメント手法をめぐる国の動きをみると、法定研修への導入はもとより、ケアマネジメントの学習から実践の事後点検に至るまで、ケアマネジャーだけでなく保険者にも及んでいることがわかる。
ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の中間整理では、「引き続き、適切なケアマネジメント手法について、ケアマネジャーだけでなく、医療等の関係職種や地方自治体等の関係者も含めて周知することが重要である」、「適切なケアマネジメント手法の更なる普及、ケアマネジャーの自主的な気づきを促すためのケアプラン点検の適切な実施の促進」という記載がある。何の解説もなくこの文書を読むと、見慣れた単語が並んだ文章にみえるかもしれない。しかし、本稿の解説の後に読めば本手法が「学習」→「実践」→「事後点検」と通貫したことに気づくだろう。ケアマネジャーは3~4年かけて、できるケースから、少しずつ本手法を実践に取り入れていく必要がありそうだ。
(※1)R5年度老人保健事業推進費等補助金「適切なケアマネジメント手法の策定、普及・推進に向けた調査研究事業」日本総合研究所
(※2)ケアプラン点検について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/hoken/jissi_00005.html
(※3)R6年度老人保健事業推進費等補助金「ケアプラン点検に係るマニュアル及びAIを活用した支援ツールに関する調査研究事業」NTTデータ経営研究所

