未来のケアマネジャー
ケアマネジャーに地域づくりはできるのか/石山麗子(連載8)
「地域包括ケアシステムの深化」、「地域共生社会の推進」といった言葉が至るところに飛び交っている。いまや介護保険サービスだけで生活を支えることは難しい。このことについて多くの人は異論ないだろう。
介護支援専門員の法定研修では、専門Ⅱ課程から事例を通じた一般化(普遍化)の概念が導入され、担当ケースの課題から地域課題を視野に入れて考察することが求められている。すなわちこれは制度上、個別ケースのケアマネジメントだけでなく、広く地域に目を向け、究極には社会資源の改善・開発までも含めケアマネジメントの範囲と捉えることを示唆している。
一方で、社会資源の改善・開発をケアマネジャーはどれほど本気で実行しているだろうか。行政や多職種等はケアマネジャーに本当に期待してよいと思っているだろうか。私は地域課題解決に向けケアマネジャー独自の、あるいは地域を巻き込んだ活動はできる!という確信をもっている。私が教鞭をとる大学院の院生の活動を知ったからだ。
今年4月開講した日本初の自立支援実践ケアマネジメント学領域という名称の修士課程には、保健医療福祉のさまざまな経験のある大学院生がいる。専門科目の演習では個別事例を検討する演習もあるが、院生が地域で取り組んでいるそれぞれの活動実践をプレゼンテーションしてもらっている。その内容からケアマネジャーは私が当初想定した以上の活動実績があることを知り感服している。
例えば専門職団体が組織間連携し法の狭間にある方を支援する活動、認知症の方のサポートを民間の資金も活用し市民も共に行える活動、地域の子どもの無償塾や子どもが発案することの実現をサポートする活動、高齢者宅のペットをどう守れるかを考える活動、自らの介護体験を通じた資産管理等まで含めた介護者支援などその視点は実にさまざまだ。
ここでは単にプレゼンテーションして「素晴らしい活動ですね」といって終わりにはしない。活動の動機、目指す姿、資金調達、課題等を多岐にわたり議論する。一般的に、課題と思える実態をみた人が「これは何とかしなければ!」という思いに駆られて体が先に動く(活動が先にある)、「〇〇の活動中。仲間募集!」といったアピール(行動?)はあっても、実践を省察し普遍化や理論体系化までは行われないのが大半だ。特定の地域にカリスマ的な存在がいて「あの人だからやれるよね」といった属人性に頼る声はあっても再現性、継承可能性は低い。いわゆる「横展開」の難しさだ。カリスマといわれる人の活動には複数の成功要因がちりばめられている。それを適切な視点から記録し分析して、私たちの共有の財産(知)に高めることもケアマネジメントを専攻する大学院生の務めでもあり、醍醐味の一つであろう。
演習では院生のプレゼンテーションを通じて無意識的に行っている行動や実践、使っている言葉等を明確化し意識上にあげて顕在化する。これらを、他の院生からの質問や指摘を受けながら全員で構造化していくことを試みている。これが積みあがればケアマネジャーによる地域活動の手法を創りあげられるかもしれない。
だからといって私はすべてのケアマネジャーが必ずこういう活動をしなければならないとは思っていない。(図)のように、今後ケアマネジャーが行う実践過程は多層化し発展していく可能性は高いと考えている。演習で行っているのは③地域づくり、④(指導・)研究である。(図)に示す「ケアマネジャーの活躍の概念」の実現可能性はあるだろう。しかしケアマネジャー自身がそれを望み鍛錬し仕組みを創ろうとしないかぎり実現はしない。私は学術的立場からケアマネジャーを応援しつつ、今後のケアマネジャーの活動に大いに期待している。
一方で、社会資源の改善・開発をケアマネジャーはどれほど本気で実行しているだろうか。行政や多職種等はケアマネジャーに本当に期待してよいと思っているだろうか。私は地域課題解決に向けケアマネジャー独自の、あるいは地域を巻き込んだ活動はできる!という確信をもっている。私が教鞭をとる大学院の院生の活動を知ったからだ。
今年4月開講した日本初の自立支援実践ケアマネジメント学領域という名称の修士課程には、保健医療福祉のさまざまな経験のある大学院生がいる。専門科目の演習では個別事例を検討する演習もあるが、院生が地域で取り組んでいるそれぞれの活動実践をプレゼンテーションしてもらっている。その内容からケアマネジャーは私が当初想定した以上の活動実績があることを知り感服している。
例えば専門職団体が組織間連携し法の狭間にある方を支援する活動、認知症の方のサポートを民間の資金も活用し市民も共に行える活動、地域の子どもの無償塾や子どもが発案することの実現をサポートする活動、高齢者宅のペットをどう守れるかを考える活動、自らの介護体験を通じた資産管理等まで含めた介護者支援などその視点は実にさまざまだ。
ここでは単にプレゼンテーションして「素晴らしい活動ですね」といって終わりにはしない。活動の動機、目指す姿、資金調達、課題等を多岐にわたり議論する。一般的に、課題と思える実態をみた人が「これは何とかしなければ!」という思いに駆られて体が先に動く(活動が先にある)、「〇〇の活動中。仲間募集!」といったアピール(行動?)はあっても、実践を省察し普遍化や理論体系化までは行われないのが大半だ。特定の地域にカリスマ的な存在がいて「あの人だからやれるよね」といった属人性に頼る声はあっても再現性、継承可能性は低い。いわゆる「横展開」の難しさだ。カリスマといわれる人の活動には複数の成功要因がちりばめられている。それを適切な視点から記録し分析して、私たちの共有の財産(知)に高めることもケアマネジメントを専攻する大学院生の務めでもあり、醍醐味の一つであろう。
演習では院生のプレゼンテーションを通じて無意識的に行っている行動や実践、使っている言葉等を明確化し意識上にあげて顕在化する。これらを、他の院生からの質問や指摘を受けながら全員で構造化していくことを試みている。これが積みあがればケアマネジャーによる地域活動の手法を創りあげられるかもしれない。
だからといって私はすべてのケアマネジャーが必ずこういう活動をしなければならないとは思っていない。(図)のように、今後ケアマネジャーが行う実践過程は多層化し発展していく可能性は高いと考えている。演習で行っているのは③地域づくり、④(指導・)研究である。(図)に示す「ケアマネジャーの活躍の概念」の実現可能性はあるだろう。しかしケアマネジャー自身がそれを望み鍛錬し仕組みを創ろうとしないかぎり実現はしない。私は学術的立場からケアマネジャーを応援しつつ、今後のケアマネジャーの活動に大いに期待している。
石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)
(シルバー産業新聞2019年8月10日号)
(シルバー産業新聞2019年8月10日号)
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