在宅栄養ケアのすすめ

動き出す「栄養情報提供加算」/中村育子(連載78)

動き出す「栄養情報提供加算」/中村育子(連載78)

 4月の診療報酬改定で新設された「栄養情報提供加算」(50点・入院中1回まで)は、退院先の介護施設や在宅(診療所等)の医師や管理栄養士へ、退院患者の栄養・口腔状態や入院中の食事内容に関する情報を提供するものです。

 私は在宅高齢者への訪問栄養を実施していますので、この場合「情報を受ける側」になります。入院中の食事・栄養ケア情報をベースに、家族の介護力や経済力、生活環境を踏まえ、在宅でどう再現・アレンジするかを調整します。今回の加算は情報提供側(病院)のみに算定されますが、我々情報の受け側にとっても歓迎すべき改定です。

 さっそく、加算の要件を踏まえ栄養情報提供書のひな形を作成してみました(図)。本来は、提供側が準備するものですが、逆に在宅の立場で「この情報が欲しい!」と思う様式にしました。

 まずは法人内の病院との運用・連携からはじめようと、病棟カンファレンスに参加し、病棟担当の管理栄養士や他スタッフへ栄養情報提供の主旨について理解を促している最中です。

食形態はUDF

 提供書の中身は①身体状況②食事の提供状況――に分けられます。②の中で食事形態については「主食」「おかず」「水分」に分けて聞いています。特におかずはユニバーサルデザインフード(UDF)の区分でシンプルにしました。提供書の裏面には、UDF区分の説明も入れています。栄養情報をやり取りする際、最も齟齬が生じやすいのが食形態です。表記名は同じなのに、実際の形態が病院・施設で異なるといったことはよくあります。

 また、在宅では家族の調理負担に配慮し、市販の介護食品の活用も検討します。UDFを採用した理由としては、スーパーやドラッグストア等の身近な小売店で入手しやすいこと、あらかじめ提供書で区分が分かっていれば商品を見つけやすいことです。

 他には「好きな食べ物」「嫌いな食べ物」の記入欄を設けたのも特徴の一つでしょう。嗜好性は食欲へ大きく影響します。病院では医師や看護師から言われ食事を黙って食べていた人が、自宅に帰った途端に「あれが食べたい、これが食べたい」となるのも、ごく自然なことです。

 もし提供側で食事形態が分からないときのために、食事写真を載せるスペースも用意しています。

 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2020年7月10日号)

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