在宅栄養ケアのすすめ

動き出す「栄養情報提供加算」(2)/中村育子(連載79)

動き出す「栄養情報提供加算」(2)/中村育子(連載79)

 前回は診療報酬「栄養情報提供加算」のしくみと、情報提供に用いる様式例を紹介しました。今回は、退院支援における実際の運用手順や、専門職の関わり方について見ていきます。

 まず、栄養情報提供加算の算定対象となる患者は、入院中に入院食事栄養指導を受けています。①がん②摂食・嚥下機能低下③低栄養――のいずれかに該当し、医師の指示の下、管理栄養士が具体的な献立を作成、指導しています。退院時にはこの指導内容と栄養、摂食・嚥下機能の現状が退院先へ提供されます。

 栄養情報提供書は医師が記入する「診療情報提供書」や、看護師が記入する「看護サマリー」、その他検査結果等と一緒に受け渡しが行われると想定されます。看護サマリーにはバイタルやADL、生活習慣など介護に必要な情報も書かれています。医療機関によって様式がさまざまで、退院先で使い分けているところもあります。

 これまで栄養・口腔に関しては、看護サマリーの中での食形態分類にチェックが入っている程度がほとんどでした。主食・主菜がそれぞれどの程度のやわらかさなのか?普段どのくらい食べられているか?食事中の様子はどうか?退院後に医療機関へ再確認しなければならないケースが、何度もありました。栄養情報提供書はこの部分を補うものです。

数字だけでなく献立で伝える

 退院先が介護施設の場合、栄養情報提供者は医師、看護師、管理栄養士、ケアマネジャー、相談員などへ渡されます。前回もお話しましたが、医療機関(提供側)と介護施設(受け側)で食形態の基準が異なると、ここで齟齬が生じやすくなります。栄養情報提供書はこうしたリスク回避にも、有効に活用されるべきだと思います。なかには、やわらか食の調整レシピや写真を添えて情報提供に取組んでいる医療機関もあります。

 退院し自宅へ戻る場合は、在宅担当医療機関の主治医(かかりつけ医)と管理栄養士へ情報が届きます…と言いたいところですが、残念ながらクリニックの規模で管理栄養士を雇用しているところは多くありません。当院のように「在宅部」を設置し、各種専門職を揃えている方がレアケースです。

 管理栄養士どうしの連携なら問題ありませんが、たんぱく質や塩分など必要な栄養量は細かく数値化しすぎないことが大切です。在宅では主治医や、ケアマネジャーが情報を見て、家族や訪問介護のヘルパーへ「どのような食事か」を説明をしなければなりません。エネルギーはご飯何杯分か、おかゆでどのくらいのやわらかさか。私が作成した栄養情報提供書のひな型(前号既出)では、食形態をユニバーサルデザインフード(UDF)の分類にしています。誰もが分かりやすく、かつ該当する市販品が充実している点で、最も共通言語に近いのではと考えました。

 今回の加算が、在宅の医療・介護専門職の方々に少しでも食事に関するケアの意識を高めてもらえればと期待しています。
 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2020年8月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル