千田透の時代を読む視点

2割負担の対象拡大、正しい判断を期待したい

結論が先延ばしされてきた介護保険の2割負担の対象拡大について、12月7日に開かれた社会保障審議会介護保険部会では、結局、部会としての結論は出さず、年末に行われる予算編成過程の中で検討することになった。

 そもそもは、昨年末の介護保険部会で結論が出される予定だったが、合意形成ができず、今夏、年末と、2度も延期となる異例の事態となっていた。そして、ついに部会としての結論が得られないまま、予算編成過程の中で判断されることになった。当事者等がいない中で、介護保険制度のあり方が決まってしまう事態となったことは大変遺憾である。
 予算編成過程で検討されるということは、政府・与党の中で判断されるので、厚生労働大臣と財務大臣との間で折衝が行われることになる。ご承知のように、昨年10月からは、後期高齢者の医療費窓口負担が「課税所得が28万円以上、かつ単身世帯の場合で年収200万円以上(複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)」の人については、これまでの1割負担から2割負担に変更になっている。財務省側は、こうした見直しを踏まえて、利用者負担の見直しを求めて来るはずである。

 個人的には、後期高齢者医療制度と同じ形で、介護保険についても2割負担の対象を拡大するのは乱暴だと感じている。そもそも、介護保険制度と後期高齢者医療制度では、制度の成り立ちが違うし、2割負担の線引きをする際の前提や判断基準についても異なっている。また、介護は医療と違って、日常的にサービスを利用することが多く、負担割合が上がると、その分、生活に与える影響も大きい。
 高齢者の多くは年金収入のみであり、収入が増えていくわけではない。さらに、この間は、コロナ禍やウクライナ戦争、急激な円安などによって、物価やエネルギーコストが高騰している実態もある。
こうした中で、医療や介護にかかる費用をどこまで負担できるのか、しっかりと生活実態を把握した上で、見直しの判断が行われなければ、高齢者の暮らしが立ちゆかなくなる可能性がある。
 予算編成過程において、良識に基づいた正しい判断が下されることを祈りたい。

編集部より

 2割負担の対象拡大については、その後行われた大臣折衝により、「引き続き早急に、介護サービスは医療サービスと利用実態が異なること等を考慮しつつ、改めて総合的かつ多角的に検討を行い、第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度~)の前までに、結論を得る」と、第9期計画内での実施を見送る判断が下されました。

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