千田透の時代を読む視点

新型コロナウイルス感染症 いざという時の備えが大事だ/千田透(連載80)

新型コロナウイルス感染症 いざという時の備えが大事だ/千田透(連載80)

 新型コロナウイルスによる感染拡大が全国に広がっている。東京都では累計患者数が先月末から急増しているだけでなく、感染経路がわからない患者が増えており、感染爆発が発生するかどうかの重大局面になっている。この稿がお手元に届く頃には、状況が悪化し、緊急事態宣言がなされているかもしれない。

 新型コロナウイルスは、高齢者や基礎疾患を持っている人ほど重症化しやすいため、介護事業所や高齢者施設については、感染防止が極めて重要になる。特にデイサービスでは、施設と比べて人の出入りが多いため、感染リスクが高くなる。

 実際に名古屋市では、デイサービスでの集団感染が発生し、南区と緑区の全ての通所介護事業所に2週間の事業停止要請が行われた。今後、他の地域でも緊急事態宣言や都市封鎖により、通所介護事業所が事業停止要請を受ける可能性がある。その際、厚労省の通知では、一時的に通所介護から訪問型の支援に切り替えることを認めており、利用者へのサービスを切らすことなく、介護報酬も請求できる形をつくっている。いざという時に備えて、訪問型の支援に切り替えられるかどうか、スタッフの訪問支援の可否なども含め、確認・準備しておくことが大事だ。

 また、何よりも職員自身が感染してしまうことがないよう、マスクやアルコール消毒液などの確保に努め、感染防止策を徹底しなければならない。介護事業者に求められているのは▽利用者の生活を継続させること▽感染を拡大させないこと▽職員の健康を守ること――厳しい状況の中で、これらのタスクを同時に成し遂げていくことなのである。

 当然のことながら、行政はマスクやアルコール消毒液が調達しづらい現状を改善しなければならないし、休業を要請する場合の補償などについても検討していく必要がある。

 新型コロナウイルス感染症との戦いは長期戦が予想されるため、事業運営にあたり資金繰りが悪化することも考えられる。そのため、福祉医療機構では新型コロナウイルス感染症の影響により、事業運営が縮小した介護事業所に対して、償還期間や貸付利率の優遇措置により支援を行っている。また、事業主が雇用調整のために労働者を休業させた場合には、雇用調整助成金による支援も行われている。

 このほか、全国の中小企業や小規模事業者の資金繰りが逼迫していることを踏まえ、政府は経営の安定に支障が生じている中小企業者に対し、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%の保証を行う「セーフティネット保証5号」の対象に、介護事業を指定している。

 こうした制度を積極的に活用して、未曾有の難局を乗り越えて欲しい。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2020年4月10日号)

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