介護保険と在宅介護のゆくえ
全世代型社会保障の具体化に注意を/服部万里子(連載94)
12月16日に、来年度の介護保険法改正の方向性が整理された。この時点の方向性は図のとおりである。
特に要介護度2までの生活援助とデイサービスは利用者が多く、認知症や独居が多いために、実施された場合には在宅生活が困難になる人が続出することは明らかであり、無謀な提案だったと言わざるを得ない。
しかし、ここで安心してはいけない。介護保険利用者のうち9割が利用者負担1割の現状で、それを原則2割とする提案も、老健や療養型病床の多床室での居住費徴収も、すべて「今回見送り」となっただけであり、次回の改正の際にはまた必ず提案されるのである。
しかし、ここで安心してはいけない。介護保険利用者のうち9割が利用者負担1割の現状で、それを原則2割とする提案も、老健や療養型病床の多床室での居住費徴収も、すべて「今回見送り」となっただけであり、次回の改正の際にはまた必ず提案されるのである。
非課税世帯の負担増加、施設・ショートステイの補足給付
2006年から施設での居住費と食費が自己負担になり、非課税世帯の人は所得に応じて自己負担が減額される仕組みが導入された。その差額を介護保険財源から施設に支払うのが補足給付である。
ケアマネジャーは毎年7月に預貯金通帳をコピーし、「介護保険負担限度額認定証」をショートステイなどの事業所・施設に提出している。来年の改正では、その低所得者に対する負担増が提案された。補足給付の対象となる資産要件を、預貯金額1000万円以下から下げたり、非課税世帯の「第3段階」を2つに分け、年金収入等120万円超の人は食費負担を増やすなどの提案が出された。
ケアマネジャーは毎年7月に預貯金通帳をコピーし、「介護保険負担限度額認定証」をショートステイなどの事業所・施設に提出している。来年の改正では、その低所得者に対する負担増が提案された。補足給付の対象となる資産要件を、預貯金額1000万円以下から下げたり、非課税世帯の「第3段階」を2つに分け、年金収入等120万円超の人は食費負担を増やすなどの提案が出された。
共生型サービス拡大から全世代型社会保障への流れ
12月19日に、安倍首相が推進している全世代型社会保障検討会議の中間とりまとめが公表された。16年に出された「ニッポン一億総活躍プラン」の具体化により、働く人を増やし「勤労者皆保険」で社会保障を児童から障がい、高齢、生活困窮者も丸ごとその対象にする方向で、福祉から保険への転換を目指している。
そのため、高齢者が働き続けられるよう「年金受給年齢の75歳までの引き上げ」「パート従事者への厚生年金の適用拡大」「企業での定年制廃止や70歳までの定年延長」「障がい者の法定雇用率の引き上げ」を具体化し、働く人を増やしていく方向だ。
他方で、「幼児教育の無償化」や「後期高齢者の医療費負担を原則2割」に変更し、「受益と負担のバランス」を実行しようとしている。さらに今後、共生型サービスの拡大や「地域を支える」などの美しい言葉で、「令和の社会保障改革」の名のもとにジワジワと社会保障の負担を勤労者保険でまかなっていく方向である。
保険制度による社会保障では、保険料を払えない人は給付を受けられない。自己負担額はサービスの受給に応じたものになり、障がい者などには厳しいものになりかねない。これらの動向にも注意していく必要がある。
そのため、高齢者が働き続けられるよう「年金受給年齢の75歳までの引き上げ」「パート従事者への厚生年金の適用拡大」「企業での定年制廃止や70歳までの定年延長」「障がい者の法定雇用率の引き上げ」を具体化し、働く人を増やしていく方向だ。
他方で、「幼児教育の無償化」や「後期高齢者の医療費負担を原則2割」に変更し、「受益と負担のバランス」を実行しようとしている。さらに今後、共生型サービスの拡大や「地域を支える」などの美しい言葉で、「令和の社会保障改革」の名のもとにジワジワと社会保障の負担を勤労者保険でまかなっていく方向である。
保険制度による社会保障では、保険料を払えない人は給付を受けられない。自己負担額はサービスの受給に応じたものになり、障がい者などには厳しいものになりかねない。これらの動向にも注意していく必要がある。
服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)
(シルバー産業新聞2020年1月10日号)
(シルバー産業新聞2020年1月10日号)
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