介護保険と在宅介護のゆくえ

消費増税と介護サービス抑制は目前/服部万里子(連載90)

消費増税と介護サービス抑制は目前/服部万里子(連載90)

 この春からジワジワ物価が上がっている。10月からの消費税はわずか9カ月間のみ実施の「ポイント還元」を宣伝し、キャシュレス決済への移行を進めている。財布の現金が減れば「支出を抑えよう」となるが、カードなどはお金が見えない分「怖いこと」になりそうだ。

消費税率アップは年金暮らしを直撃

 加えて介護報酬と処遇改善加算が介護サービス利用者を直撃する。

 9月は、介護現場は介護職の処遇改善対応と消費税アップに伴うサービス利用契約書のやり直しに追われることになる。10月からの介護報酬は4月に公表されているが、10月からのサービス提供表はシステムの入れ替えも必要だ。

 また、人材不足と「働き方改革」が小規模事業所を追い詰め、地域密着型デイサービスの倒産が増えている。

全世代社会保障に向けた国の動向

 国は着々と制度改正に向けて動き始めている。6月に認知症施策推進大綱(オレンジプラン、新オレンジプランに続く認知症政策)を閣議決定し、その際に「認知症予防で70代の認知症の割合を2025年まで6%減らす」という目標に、認知症の予防策が解明されていない中で数値目標はおかしいとの追及をうけ、数値目標を撤回した上で、対策大綱がまとめられた。

 また、「老後資金に2000万円が必要」との金融庁の発表は、選挙前に撤回されたが、8月には「20歳の人が現状の年金受給のためには、68歳まで働くことが必要」と発表され(19年8月公的年金の財政検証発表)、社会保障の見直し論議が「1億総活躍社会の実現」に向け動いている。高齢者が70歳まで働き、障がい者や難病の人も生活困窮者も女性も働くことで、年金を払う人を増やし、「全世代型社会保障」を年金保険を基礎に作ることで、福祉から保険への移行を進める方向を着々と具体化させている。

 「働く機会や環境整備」は必要だ。しかし「共生社会」「地域が支える地域包括ケア」などと美しく聞こえる言葉の一方で、18年における民間事業所の障がい者虐待で、通報は1656事業所・1942人、虐待確認は541事業所・900人で、その88%が最低賃金以下の「経済的虐待」であり、国の機関の障がい者雇用率が昨年に続き法定雇用率2.5%を下回ったという報道もあった(8月29日付東京新聞)。

介護保険給付抑制に対し論議を巻き起こそう

 介護保険法の論議がない段階の8月の介護報酬の委員会で、21年度に向けた「介護報酬改定に向けた実態調査」が提案され論議されている。財務省提案の「介護保険一律2割負担」は年金生活を追い詰める。介護認定者の65%が要支援~要介護2までという現実に対して、「生活援助とデイサービスは市町村事業へ移行」と介護給付から外すことは妥当ではない。

 「ケアマネジメントに自己負担導入」などの財務省の介護保険改正提案や、「市町村の成果を競争させ、交付金を出すインセンティブの活用」に対する論議を起こし、「時間切れ採決」にならないよう行動を起こそう。

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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