介護保険と在宅介護のゆくえ
これ以上、介護難民と介護離職者を増やすな/服部万里子(連載92)
厚生労働省のデータによると、介護保険で利用者負担が2割の在宅サービス利用者は全体の5.4%、3割負担の人は4.4%となっている。介護保険の自己負担を原則2割にすると、利用者の9割以上で今の倍になる。
原則2割で受給者の9割超が負担倍に
高齢者世帯の平均年間所得は334万9000円で、高齢者世帯の所得の61.1%が「公的年金・恩給」「稼働所得」が25.4%だ(2018年国民生活基礎調査)。介護保険の利用者の75%が80歳以上であることを考えると、年金だけの所得の人がもっと増えていく。10月に消費税率が2%上がったばかりで、負担増に耐えられない高齢者は我慢を強いられるのだろうか。
デイ外しで67%が利用不可に
財務省による社会保障見直しの提起では、要介護1と2のデイサービスを保険給付から外し、総合事業へ移行する考え方が示されている。デイサービスの利用者は、要介護1と2で67%を占める(グラフ)。デイサービスが利用できなくなると、機能訓練やまともな食事、外出機会が減り、閉じこもりが増え、状態の悪化が懸念される。また、家族の介護負担が増え、介護離職や介護放棄などの虐待につながりかねない。
生活援助を外すと在宅介護難民増に
介護保険で生活援助を受けられるのは、基本的に一人暮らしの人で市町村により介護が必要だと認定された人だ。この独居の人たちの中には、トイレには行けても外出が難しく買い物に出られない人や、浴室やトイレの掃除ができない人、やわらかい食事しか食べられない人、台所に立って調理ができない人、服薬管理ができない人など、様々な課題を抱えた人がいる。
これらの人たちの在宅生活を支えるのは、買い物や掃除、洗濯、調理など、できないことを支援する「生活援助」だ。要介護2までの生活援助を保険から外すと、要介護1でヘルパー利用者の65.4%が、要介護2のヘルパー利用者の56.3%が、利用している生活援助を受けられなくなる。それにより、身の回りや家の中が片付かなくなったり、低栄養状態のリスクが生じたり、体調管理にも支障が出てきたりする。国は自費サービスを利用するようにと言うが、それではいったい何のための介護保険なのだろうか。
これらの人たちの在宅生活を支えるのは、買い物や掃除、洗濯、調理など、できないことを支援する「生活援助」だ。要介護2までの生活援助を保険から外すと、要介護1でヘルパー利用者の65.4%が、要介護2のヘルパー利用者の56.3%が、利用している生活援助を受けられなくなる。それにより、身の回りや家の中が片付かなくなったり、低栄養状態のリスクが生じたり、体調管理にも支障が出てきたりする。国は自費サービスを利用するようにと言うが、それではいったい何のための介護保険なのだろうか。
お金のない重度者は行き場を失う
介護保険の当初は、介護保険施設では居室代をとらず、食費も材料費だけの負担だった。それが法改正のたびに自己負担が増え、非課税世帯でも預金額により補足給付が受けられない人が出てきた。今回の介護保険法改正では、老健などの多床室でも居室代を徴収する案が出ている。療養型施設で8割、老人保健施設では
55%の利用者で自己負担が増えることになる。多床室の空きを待っている人の行き場がなくなってしまう。自費で有料老人ホームに入れというなら、何のために死ぬまで介護保険料を払っているのだろうか。
介護保険見直しにおける数々の利用者負担増を迫る案に対して、高齢のため自ら声を上げられない利用者のため、ケアマネジャーや介護サービス事業者がその生活を守るべく代弁しなければならない。
55%の利用者で自己負担が増えることになる。多床室の空きを待っている人の行き場がなくなってしまう。自費で有料老人ホームに入れというなら、何のために死ぬまで介護保険料を払っているのだろうか。
介護保険見直しにおける数々の利用者負担増を迫る案に対して、高齢のため自ら声を上げられない利用者のため、ケアマネジャーや介護サービス事業者がその生活を守るべく代弁しなければならない。
服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)
(シルバー産業新聞2019年11月10日号)
(シルバー産業新聞2019年11月10日号)
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