介護保険と在宅介護のゆくえ

自費サービスへの誘導は介護難民を増やす/服部万里子(連載88)

自費サービスへの誘導は介護難民を増やす/服部万里子(連載88)

 麻生太郎金融担当大臣が、「老後の生活費が2000万円不足する」という身内からの報告書を受け取り拒否したが、6月3日の金融審議会の報告書の題名は「高齢社会における資産形成・管理」である。その10ページ目に「平均的な高齢夫婦無職世帯の毎月の赤字額は5万円で、これを金融資産から補填することになる」の出典データは、厚生労働省資料と明記されている。

金融庁報告書の出典は厚労省

 一方、政府が6割の株を握る日本郵政グループは「年金といくらかの貯金による生活は不安」と、投資信託の購入を勧める冊子を全国の郵便局に配布して勧誘を進めている。

 消費増税を待たずにじわじわと物価が上がる現状で、企業はもうかっても国民生活は苦しくなるばかりである。第2次安倍内閣の2012年から19年の8年間で、企業が支払う法人税の実効税率は37%から29.74%へ7ポイント下げられ、企業の内部留保は約273兆円から466兆円と1.7倍に増えた。

 一方で国民生活に目を向けると、12年から19年で非正規労働者は35.5%から38.5%と3ポイント増え、国民年金の受給額は6万5541円から6万5008円に減った。厚生年金受給額も23万940円から22万1504円へと減った。一方で高齢者の介護保険料は、4160円から5869円へとアップしている。これでは年金で老後生活を賄えなくなるのは当然である。年金財政の公表も選挙後に先送りになっている。

利用者のサービス選択が制限される

 このような中、75歳以上の医療の自己負担を1割から2割へ高め、介護保険では原則2割負担とし、さらにケアマネジメントへも自己負担を導入し、国の負担を減らし国民の自己負担へと付け替えようと、来年度の介護保険改正が選挙後に一挙に進められようとしている。

 一方でサービスは、混合介護(公的給付と自費サービスの同時提供)を推奨し、サービス事業者をそちらへ誘導しようとしている。また、患者がかかりつけ医を任意で登録し、診察料を月ぎめの定額制にする仕組みを検討しているという報道は、事実であれば医療費の抑制がねらいである。

 介護保険で定額報酬の地域密着型サービスを国が誘導しても、定期巡回サービスや小規模多機能、看護小規模多機能の利用が伸びないのは、「必要な分だけ頻回にサービス提供されるのか不安」などの実態があるからだ。必要に応じて利用者がサービスを選択できる幅が狭められてしまうという不安がぬぐえないのである。ケアマネジャーには、このような利用者の不安を代弁すべく声を上げていく必要がある。

 財務省の財政制度等審議会では、要介護2までの生活援助とデイサービスの給付を市町村事業へ移行させることが提議されている。市町村事業に移行することで、利用抑制(給付額の抑制)が進み、介護難民を増やすことは明らかだ。また事業者にとっては、今後さらなる経営困難も予測される。

服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)

(シルバー産業新聞2019年7月10日号)

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