介護保険と在宅介護のゆくえ

負担増とサービス減で高齢者の不安は増すばかり/服部万里子(連載93)

負担増とサービス減で高齢者の不安は増すばかり/服部万里子(連載93)

 今年の敬老の日に発表されたデータでは、日本の高齢化率は世界一であった。一方で、年金・医療・福祉の社会保障費のGDP(国内総生産)に対する比率は、世界で22番目となり、決して高くはない。

 厚生労働省の発表では、介護保険の費用額は2018年度は10兆円を超えたが、制度当初から収支は黒字が続き、市町村の介護給付費準備基金も増加している。1人当たりの介護保険の受給額が2000年の開始時を超えたのは、18年目の18年4月のことである。高齢者は贅沢にサービスを使う状況にはない。

 国は11月に、75歳以上の後期高齢者医療保険の自己負担を原則2割とする提案を出した。介護保険利用者の87%が75歳以上である。

 加齢に伴い脳梗塞や認知症、転倒骨折、熱中症や肺炎などの発症率は高まる。誰も入院や手術を望んでいないが、回復し生活を取り戻すために医療は必要不可欠である。自己負担が倍増することにより受診控えなどをすれば、状態は悪化して回復が遅れる。自己負担の倍増は過酷である。介護保険でも、所得だけではなく持ち家などの資産も支払い能力とみなす方向性も示されている。

要介護1、2のデイと生活援助は不可欠

 介護が必要だと市町村が認定した要介護1、2は、独居がまだできる人であり、世帯では一人暮らしが多く、要介護になる原因では認知症がトップである。

 仕事をしている娘さんが不在時にデイサービスを利用し、入浴や排泄の支援をすることで在宅生活が維持できるのである。一人では外出できず引きこもりになりがちな高齢者を、デイサービスが人とのふれあいを提供し、食事や排泄、入浴、機能訓練のサポートをすることが重度化防止に効果を上げ、生活意欲の維持にもつながっている。

 これらが給付から外れると、市町村の総合事業では、▽受け皿のサービスが不足する▽看護師が必要な専門的なケアが受けにくくなり▽送迎がなくなって一人では行けない――ため重度化の危険性が高まる。

 また、介護者の負担が増え、介護離職が増えることにもつながる。元気な高齢者ではない要介護1、2の人たちの在宅生活をデイサービス、福祉用具、訪問介護で支えているのである。

 区分支給限度額に対する実際の平均給付額の割合をみると、要介護1で44%、要介護2で54%と、実際には半分程度の利用に留まっているが、今回の改正ではそこに給付制限をしようとしている。

 必死に歩こうとしている高齢者の杖を奪うような仕打ちである。転んで悪化するか、転ばないようにひきこもるかしかなく、未来は明るくない。意欲を引き出すデイサービスも、在宅を支える生活援助も、要介護1、2から外すような見直しは止めなければならない。

 服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)

(シルバー産業新聞2019年12月10日号)

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