ヒヤリハット事例から考える安心・安全な福祉用具利用
ヒヤリハット事例から考える 安心・安全な福祉用具利用④

福祉用具に関する事故やヒヤリハットを防ぐためには、適切なアセスメントと選定・調整、注意点などのわかりやすい説明、そしてモニタリングで継続的な確認を行うことが重要です。専門職には、事故やヒヤリハットを予見・回避し、安全な福祉用具の利用を推進する役割が求められます。本連載では、テクノエイド協会の福祉用具「事故・ヒヤリハット」情報の事例をもとに、筆者の視点から事故やヒヤリハットを回避するためのポイントを解説します。
今回取り上げるのは、「特殊寝台の頭側(背ボトム)に座り、リモコンを操作したため、身体が横に傾いて転落しそうになった」事例です。イラストを見ると、本来の座面ではなく、起き上がる際に可動する背ボトム部分に腰掛けて背上げ操作しています。また足側にサイドレールが設置されている点にも注目です。導入時に適切な位置に取り付けていたなら、その後、何らかの不便から本人や家族が位置を変えたのかもしれません。
この利用者は、一人で端座位になり操作できることから、一定の身体・認知機能があると推測できます。しかし、それゆえ「これくらいはできるだろう」という周囲の思い込みを生み、事故の引き金になりかねないのです。
この利用者は、一人で端座位になり操作できることから、一定の身体・認知機能があると推測できます。しかし、それゆえ「これくらいはできるだろう」という周囲の思い込みを生み、事故の引き金になりかねないのです。

頭側の方に座って手元スイッチを操作してしまい、身体が横に倒れ、転落しそうになる
最大の要因は「伝わらない説明」
このような危険な使い方が起きる根本的な原因は、「説明の仕方」にあると考えられます。研修会では、「○○モーション」といったメーカー独自のフレーズをそのまま用いて説明する福祉用具専門相談員も少なくありません。利用者や家族が機能を正しく理解できるよう、言葉をかみ砕いて説明する配慮が必要です。
また、専門相談員が一方的に操作して見せるだけでは、利用者がその操作を本当に理解したとは限りません。たとえ入院中に特殊寝台の使用経験があっても、リモコンの仕様が変われば誤操作のリスクは常につきまといます。認知症の有無にかかわらず、「利用者は操作を複雑に感じ、間違える可能性がある」という前提に立つことが重要です。
また、専門相談員が一方的に操作して見せるだけでは、利用者がその操作を本当に理解したとは限りません。たとえ入院中に特殊寝台の使用経験があっても、リモコンの仕様が変われば誤操作のリスクは常につきまといます。認知症の有無にかかわらず、「利用者は操作を複雑に感じ、間違える可能性がある」という前提に立つことが重要です。

事故回避の鍵はモニタリングと再アセスメント
ヒヤリハット事例に学び、再発防止に生かすことこそ専門職の役割です。利用者が安全に用具を使い続けるには、納品時の説明だけでなく、定期的なモニタリングも欠かせません。もし、想定外の使い方や危険な場面を見つけたら、「なぜそうなったのか」を分析し、再アセスメントを行います。説明不足か、身体機能の変化か、あるいは機種そのものが合っていないのか。原因を突き止め、改善策を講じることが求められます。
(シルバー産業新聞2025年9月10日号)
(シルバー産業新聞2025年9月10日号)