小濱道博の攻略!2015年介護報酬改定(小規模多機能型居宅介護)

小濱道博の攻略!2015年介護報酬改定(小規模多機能型居宅介護)

 小濱介護経営事務所代表の小濱道博氏によるケアニュースオリジナル連載。2015年制度改定をサービス別に経営の視点から解説いただきます。今回は小規模多機能型居宅介護について。

1.基本報酬

 小規模多機能型居宅介護の基本報酬は5%〜6%のマイナスでした。特に要介護1の基本報酬は▲10.3%、要介護2でも▲7.3%もの大幅な減額となりました。また、報酬区分がⅠとⅡに区分されて、Ⅰは同一建物以外からの利用者、Ⅱは同一建物からの利用者とされ、小規模多機能型居宅介護は基本報酬に於いて集合住宅減算の適用がされました。しかし、この形を取ることで、高齢者住宅の併設サービスとして大きくクローズアップされることになったのです。理由は、加算が集合住宅減算の対象から除かれることに尽きます。加算を含めて全体の報酬が減額される訪問介護などを異なり、基本報酬のみが減算対象となります。後から述べる、訪問体制強化加算と総合マネジメント体制強化加算などの算定を考えたとき、これらの加算が集合住宅減算の適用を受けないことは非常に有利であるといえます。

2.短期利用居宅介護費(基準該当ショートステイ)の新設

 今回の改定より、基準該当ショートステイが可能となりました。しかし、すべての事業所が算定出来る訳ではありません。あくまでも稼働が低い段階での特別措置の意味合いが強いといえます。例えば、定員25人の事業所の場合は、既登録者利用者数が22人以下で無いと算定は出来ません。その算定の可否のための計算式は

◎  短期利用に活用可能な宿泊室数
当該事業所の宿泊室の数×(当該事業所の登録定員ー当該事業所の登録者数)÷当該事業所の登録定員 ※小数点第一位以下、切り捨て

 なお、短期利用居宅介護費を算定する場合は、次の基準のいずれにも適合することが必要です。

①小規模多機能居宅介護サービス利用者の登録者の数が、登録定員未満であること。
②指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に利用することが必要と認めた場合で、指定小規模多機能型居宅介護事業所の介護支援専門員が、当該指定小規模多機能型居宅介護事業所の登録者に対する指定小規模多機能型居宅介護の提供に支障がないと認めた場合であること。
③あらかじめ七日以内(利用者の日常生活上の世話を行う家族等の疾病等やむを得ない事情がある場合は14日以内)の利用期間を定めること。
④人員基準を満たしていること。
⑤過小サービスの減額対象ではないこと。

3.訪問体制強化加算

 1月1000単位を算定します。登録者の居宅における生活を継続するための訪問介護サービスの提供体制を強化した場合に算定することが出来ます。

 算定のためには、次のいずれにも適合することが必要です。

①訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を二名以上配置していること。
②月の延べ訪問回数が一月当たり二百回以上であること。

 この場合、単に常勤の従業者を二名以上とすることが要件ですので、訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者は訪問サービス以外の業務を行う事は可能です。また、すべての曜日、時間帯に常勤の従業者を二名以上配置することは必要ありません。

 ただし、同一建物に併設する事業所の場合は、登録者の総数のうち小規模多機能型居宅介護費Ⅰを算定する者の占める割合が百分の五十以上であり、かつ、その登録者に対する延べ訪問回数が一月当たり二百回以上であることは必要です。

 なお、通いサービスの送迎として自宅を訪問する場合、介護従業者が行う身体整容や更衣介助などの居宅内介護サービスについても、訪問サービスの提供回数に含まれます。このことで、訪問サービスが200回以上はクリアしやすくなることは言うまでもありません。

4.総合マネジメント体制強化加算

 1月1000単位を算定します。算定要件は、次のいずれにも適合することです。


①多職種共同で小規模多機能型居宅介護計画の見直しを行っていること。
②利用者の地域における多様な活動が確保されるように日常的に地域住民等との交流を図り、利用者の状態に応じて地域の行事や活動等に積極的に参加していること。

 小規模多機能型居宅介護は、施設ケアマネが計画を作成するため、①の要件は容易です。

 地域の行事や活動の例としては、

①登録者の家族や登録者と関わる地域住民等からの利用者に関する相談への対応
②登録者が住み慣れた地域で生活を継続するために、その地域における課題を掘り起し、地域住民や市町村等とともに解決する取組(行政や地域包括支援センターが開催する地域での会議への参加、町内会や自治会の活動への参加、 認知症や介護に関する研修の実施等)
③登録者が住み慣れた地域との絆を継続するための取組(登録者となじみの関係がある地域住民や商店等との関わり、地域の行事への参加等)

が挙げられます。

5.看護職員配置加算Ⅲ 

 1月480単位を算定します。算定要件は、看護職員を常勤換算方法で1名以上配置していること。定員超過、標準人員欠如減算の対象でないことです。このポイントは、常勤換算での算定が可能となったことです。

6.看取り連携体制加算 

 死亡日及び死亡日以前30日以下について1日につき64単位を死亡月に加算します。

 看取り連携体制加算の施設基準は、

①看護師により二十四時間連絡できる体制を確保していること。
②看取り期における対応方針を定めて利用開始の際に登録者又はその家族等に対して対応方針の内容を説明して同意を得ていることです。

 看護職員配置加算(I)を算定していない場合は算定出来ません。

7.実質的にプラス査定となった小規模多機能型居宅介護

 小規模多機能型居宅介護の報酬は、基本報酬だけを見ると大きな減額となったと感じます。しかし、訪問体制強化加算と綜合マネジメント体制強化加算の新設された2つの加算を算定すると状況は大きく変わります。この2つの加算は、人の増員も、資格も求める加算ではありません。一見算定が難しく思える訪問体制強化加算も、通いサービスの居宅内介護が訪問回数に含めることが出来るために算定がし易くなっています。図5のシミュレーションをご覧ください。基本報酬だけでは500万円近い減収ですが、2つの加算を算定する事で200万円のプラスに転じます。如何に厚労省が小規模多機能型居宅介護の普及に力を入れているかを窺い知ることが出来ます。

8.開業後、半年以内の職員配置基準の緩和措置

 2016年4月より新設の時点から6月未満の間 (6月以上は変更なし)は、通いサービスを行うために確保すべき小規模多機能型居宅介護従業者の員数について、当面の間は、3以上の数で、指定の際に事業者からあらかじめ届け出られた通いサービスの利用者見込数を基準として職員を配置することが認められます。従来は通いサービスの利用定員の50 %の範囲内でしたので、開業時点の人件費負担が軽減されることになります。

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