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身体介護、巡回型へシフト 「身体20分未満」拡大

身体介護、巡回型へシフト 「身体20分未満」拡大

 訪問介護の短時間サービス化や身体介護中心型への移行が顕著になった。老計10号の見直しなど、在宅介護の中心的担い手であるホームヘルパーの減少を踏まえた制度見直しの結果だ。滞在型から巡回型へサービス形態が移り変わっている。(16面「介護データ」関連記事)

 「身体介護20分未満」の利用回数が急拡大している。2016年から20年まで4年間で利用回数は2.5倍になり、訪問介護全体で占める割合も16年10月の12.4%から20年10月27.9%にまで増大した(グラフ1)。訪問介護の全てのサービス区分で「身体20分未満」は、回数トップの「身体20分~30分未満」(7586千回)に迫りつつある。両区分を合わせると、身体30分未満で6割近くに達し、訪問介護が巡回サービス化している。

 本紙16面の「介護データ」で、2013年から20年までの7年間のサービス区分の利用回数の推移を追っている。「身体20分未満」は、13年10月64万回だったのが、20年10月に695万回となり、この7年間で10倍に拡大した。

 「身体20分未満」は、12年改定で定期巡回・随時対応型訪問介護看護と同時に創設されている。当初は要介護3以上の利用者で定期巡回サービスの実施(予定)の訪問介護事業であることや、営業時間は早朝6時~夜10時を確保する一方で、日中時間帯のサービスに限るなど厳しい要件があった。15年改定でこうしたしばりがなくなったが、しばりのない状態では、これまで2時間のサービス間隔を空けるルールが適用されてきた。今回の21年改定で、看取り期に限り、2時間ルールが外された。「身体20分未満」創設は、定期巡回サービスへの移行促進策としての側面を有している。

 訪問介護の短時間化や身体介護中心型への移行の背景には、深刻な介護職員不足がある。厚労省まとめの介護職員数の推移によると、特に訪問系介護職員数がピークだったのが2015年度で、52.8万人。訪問系介護事業に従事している人員(実数)だ。以降、毎年、約1万人ずつ減少し、19年度には48.1万人まで、4.7万人(9%)が減少した(グラフ2)。
 グラフ2では、さらに、訪問系介護職員の減少を要介護認定者数の推移との関係でもみている。認定者数は、12~19年度の間に120万人(+23.6%)増加しているので、訪問系介護職員数との関係でみると、1人の訪問系介護職員がみる認定者数は、12年度の11.0人から19年の13.7人に増えている。「ヘルパーの時間に合わせてサービスを組む」という現状の大きな背景といえる。ホームヘルパーの高齢化や生産年齢人口の減少のなかで、今後も、著しい介護人材不足が想定される。

 身体介護中心型への移行の状況を表すのが表1で、各サービス区分を提供時間量で計算して利用割合を算出している。たとえば「20分未満」=20分、1時間30分=90分として、回数をかけ合わせている。この提供時間でみると、16~20年度で、身体介護は42.0%から50.1%に拡大した。身体介護のうち、「身体20分未満」は、5.0%から12.8%になった。身体介護+生活援助は、同期間、30%前後で変わらない。生活援助は、27.2%から19.6%に減少した。限られた人材を短時間化や身体介護化によってシェアしている。利用者ニーズと社会資源を見定めながら、ケアマネジメントされているのが分かる。
 表2は、回数ベースでみた訪問介護のサービス区分の推移。16~20年の4年間で伸びたのは、「身体20分未満」、「身体30分~1時間未満」、それに「身体+生活」2区分のみ。顕著な伸びを見せる「身体20分未満」をのぞけば、大半のサービス提供区分が減少している。
 中でも、生活援助は16年10月に、「20分~45分未満」1539千回だったのが、20年10月に1189千回(▲22.8%)に、さらに「45分以上」は3735千回から2668千回(▲28.6%)に減少してきた。生活援助の減少には、18年4月に「老計10号」(訪問介護のサービス行為ごとの区分について)の見直しがあり、身体介護の定義に「重度化防止」が位置づけられ、見守りなどが明確に身体介護とされた経緯がある。

 この間、15年には新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」が創設され、18年度から要支援1・2の訪問介護と通所介護が、予防給付から総合事業に移行した。人材確保のために、「生活援助従事者研修」(59時間)や、「介護の入門的研修」(21時間)が創設されるなど、介護人材の裾野を拡げようとしている。

 国の介護事業経営実態調査で訪問1回当たり収入(支出)をみると、17年度決算で3503円(3336円)、19年度決算で3625円(3529円)と、収入・支出とも増えた。

(シルバー産業新聞2021年5月10日号)

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