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高崎市 急な訪問・宿泊ニーズに対応する独自事業

高崎市 急な訪問・宿泊ニーズに対応する独自事業

 県内最多36.8万人が暮らす高崎市(高齢化率28.7%)では介護離職の防止、高齢者の自立支援を通じ、多世代が暮らしやすいまちを目指した多事業を展開している。

 「介護SOSサービス」は、電話1本で24時間いつでも訪問・宿泊サービスが利用できる事業。介護をする家族が仕事や葬儀等で急遽家を空ける場合や、老老介護世帯での転倒予防等の対応に活用されている。

 訪問サービスは訪問介護の指定事業所が提供し1時間250円。宿泊サービスはバリアフリー対応のホテルなどが提供し、1泊2食付2000円(送迎付3000円)。事前登録不要で、要介護(支援)者も利用できる。

 2016年に事業開始し、利用実績はのべ9100件超(24年3月末時点)。福祉部長寿社会課の本間澄行課長は「訪問ではヘルパーがアセスメントも行うので、要介護認定を受けていなかった人が適切な保険サービスにつながるきっかけにもなる」と語る。

高齢者世帯支える3つの「SOS」

 独居高齢者や老老世帯など、高齢者のみで構成された世帯への支援にも注力。ごみ出し・力仕事・買い物の3つの「SOSサービス」を展開する。

 「ごみ出しSOS」(20年9月~)は、ごみ袋を運ぶことが困難な高齢者宅に週1回訪問し、無料でごみ収集を代行。声かけによる安否確認も兼ねる。委託先の事業者と市職員との連絡体制により、実際に独居高齢者の孤独死のリスクを回避できたケースもあったそうだ。

 昨年9月には粗大ごみの処分にも対応する「力しごとSOS」も開始。作業員2人で行える範囲であれば、居宅内の家具の移動なども依頼が可能。口コミも広がり、多いときで月400件の利用実績がある。
このほか、電話1本で必要な食料品等を配達する「買い物SOS」も行う。

交通空白地結ぶ移動支援

 地域の移動手段の確保に関しては、20年6月より「おとしよりぐるりんタクシー」が運行している。医療機関やスーパー、高齢者が多い団地、市街地へ向かうバス停などを経由し、約60分で周回。事前予約不要、ルート上なら自由に乗降でき、車いすにも対応する。現在は市内13ルートを各1台が走行。6月に2ルートの追加を予定している。

 「以前よりボランティアによる買い物代行や、移動販売事業者への補助等を行っていたが、担い手の確保が課題だった」と本間課長。ぐるりんタクシーはタクシー事業者に委託するため、安定した供給が可能だという。利用者数は年々増加し、22年度はのべ3万人を突破。ルートの拡張・見直しなど、今後さらなる普及が見込まれる。
おとしよりぐるりんタクシー(同市ホームページより)

おとしよりぐるりんタクシー(同市ホームページより)

地域包括29カ所が訪問

 同市の地域包括支援センター(高齢者あんしんセンター)は29カ所。「待つ福祉から出向く福祉へ」を合言葉に、高齢者宅を積極的に訪問する。生活上の悩み・不安や具体的な困りごとを聞き、必要なサービスへ迅速につなげられる。昨年度、地域包括に寄せられた相談6万件超のうち、1万件超が訪問の際に受けたものだ。

 6月には、今後介護が必要になる親を持つ世代に向け「高齢者福祉なんでも相談センター」を設置予定。20時までの開設、さらに土日も対応し、日中働く現役世代が来訪しやすいような体制とする。「親はまだまだ元気だが、将来について漠然とした不安がある」「介護が必要になった場合に備えたい」など、どんなことでも気軽に相談できる場をめざす。地域での継続的な支援や見守りが必要な際は、あんしんセンターへつなぎ、さらなる支援の充実をはかっていく。
ぐるりんタクシーの現在地は電話とウェブから確認できる(QRは長野ルート)

ぐるりんタクシーの現在地は電話とウェブから確認できる(QRは長野ルート)

(シルバー産業新聞2024年5月10日号)

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