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多様な外出・移動環境を支えるスロープ 月10億円市場

多様な外出・移動環境を支えるスロープ 月10億円市場

 段差解消ツールの一つ、可搬型スロープは屋内や外出先、公共交通機関での乗り入れ等に広く活用されている。在宅生活の環境整備に、介護保険では福祉用具レンタルの対象品目として利用が進み、直近の10年で件数は4倍超となっている。そこには、千差万別の玄関形状や屋外道路傾斜・形状に合致させるため、車いすや歩行器(車)へのフィット性を維持しつつ、段差・幅・奥行など適応や取り回しやすさを各メーカーが追究してきた背景がある。また、伸びが顕著な要支援1~要介護2では「小段差対応タイプ」も人気だ。

幅狭・高段差・曲がりトレンドに

 高齢者が在宅で利用するスロープは、玄関口の段差を解消することで安全・安心な外出をサポートすることが主な用途。介護保険レンタルで利用でき、住宅改修や設置工事等の必要がない点もメリットとして大きい。

 厚生労働省の介護給付費実態調査によると、2019年1月審査分でスロープの貸与件数は36万4400件。10年前の09年と比べて4倍の伸びだ(グラフ)。給付単位数は1億32万単位で、1単位=10円で計算すると、ひと月あたり10億円の市場規模にまで成長している。

 玄関スペースが十分に広いわけではない日本の家屋において、これまで設置を阻んできた環境要因は「玄関幅が狭い」「段差が高すぎる」「スロープを渡せる奥行きがない」など。近年は、これらの要因を取り除くための各社製品開発がめざましい。

 入口が狭い玄関への対応としては、「スロープ幅70㎝以下」が主流。JIS規格の車いす全幅は最大70㎝であり、これに対応しうる最小限の幅設定となっている。幅が狭いと脱輪の恐れもあるなか、ランダルコーポレーションの「スマートスロープ」(幅69.5㎝)はタイヤ走行位置の目安となる矢印をスロープ上に表示。安全面での評価も含め、14年にグッドデザイン賞を受賞している。

 高段差へは、傾斜を緩やかにするため長尺スロープが必要となる。最長285㎝タイプを有するのは「ダンスロープ」(ダンロップホームプロダクツ)と「ケアスロープ」(ケアメディックス)の両シリーズ。ケアメディックはさらに、スロープ2本をジョイント台で連結した「ケアスロープJ」が最大81㎝の段差に対応でき、縁側など玄関以外での乗入れも行える。

 また、入口の向きと上がり框が斜めまたは直角に設計されているような玄関(斜め框)の場合、玄関の外から屋内の廊下へスロープをまっすぐ渡すことが難しい。玄関内で車いすを旋回させるスペース確保も困難。この課題を解決したのがが「曲がりタイプ」だ。

 シコクの「LスロープFK」は、従来の直線スロープに曲がりパーツを組合せ、30度・60度・90度で左右いずれのカーブを実現。ケアメディックスがこのほど発売した「ケアスロープJC」は、ケアスロープに中継台を接続することで90度直角の乗入れができる。

 このほか、老々介護など介助者の負担に配慮した軽量化・取り回しやすさの工夫も随所になされている。ダンロップの「ダンスロープエアー」は特殊カーボン織物を採用し、本体を中空構造に。150㎝タイプで重さ約6㎏など、従来品より約10%の軽量化に成功した。

小段差解消、軽度者利用増に

ンエイテクノの「ダイヤスロープ」は、廊下と居室など10㎝以下の小段差を埋めるスロープ。車いすや歩行器使用時だけでなく、自立歩行ができる人でも、つまずきによる転倒等のリスクを軽減できるため、軽度者を中心に利用が広がっている。折りたたみ式の1枚スロープより安価、かつ設置場所をとらない点がメリット。屋内の小段差に複数利用するといったケースも多い。

 それを示すのが給付データ。貸与件数のうち要支援1~要介護2の占める割合を見ると、09年は13.5%だったのが、19年は46.0%。間もなく要介護3~5の利用件数を超える勢いだ。しかし、同じ10年間で貸与件数4倍に対し、単位数は2倍弱。つまり、1件当たり単位数は約半分にまで減少していることになる。この傾向は、他の貸与品目と比べても顕著だ。総単位数に占める要支援1~要介護2の割合も増えてきているが、2割強にとどまる。

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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