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【特集】歩行支援生活の基礎、歩行を助ける支援用具

【特集】歩行支援生活の基礎、歩行を助ける支援用具

 歩行に不安を抱える人たちにとって、歩行支援機器は日常生活範囲を拡げるために欠かすことのできない福祉用具のひとつだ。現在ではメーカーから様々なタイプの歩行支援機器が発売されており、利用者の選択肢は格段に拡がっている。歩行支援用具の選び方や、介護保険での給付状況、最新のトレンドなどをまとめた。

歩行支援用具の種類と選び方

 介護保険の福祉用具レンタル対象となる歩行器は①車輪のあるものは、体の前と左右を囲む把手があるもの②四脚のものは、上肢で保持して移動が可能なものとして、大きく歩行車と歩行器に分かれる。テクノエイド協会がホームページで公表している解説によれば、歩行車は「左右のフレームとこれを連結する中央部のパイプからなり、手あるいは腕などで身体を支える歩行補助用具で、フレームの下端に車輪あるいはキャスターが付いているもの」と定義されている。歩行器の前脚に車輪がついた四脚二輪タイプ、前後に車輪がある四脚四輪タイプ、前が一輪で後が二輪の三輪タイプなどがある。

 一方、歩行器は「四つの脚がフレームで繋がった構造で、フレームの下端接地面にゴムが付き、握り以外に支持部のないもの」と定義されている。左右のフレームの連結がひし形にずれるようになっていて、これを交互に動かして進むタイプや、フレーム全体が固定されていて持ち上げて前に付くことを繰り返して進むタイプとがある。

 使い方は、屋内外を問わず、歩行に補助が必要なときに用いる。歩行補助用具ではシルバーカー(いすと買い物かごが一体となった歩行補助用具)が一般的に普及しているが、要介護状態など、歩行に不安がある人は歩行車を用いた方がより安全である。
 最近では、シルバーカーのようなデザインや使い勝手の良さを持った歩行車もメーカーから発売されているので、利用者の選択肢は格段に拡がっている。

 歩行器は屋内で用いられることが多いが、選択と使用にあたっては、専門家と相談することが望ましい。環境や歩行能力、握力に応じて、ブレーキ付きやいす付き、幅調節機能付きなど、自分に合った歩行器を選ぶことが大切だ。

給付状況で見る歩行器の市場動向 :軽度者を中心に利用が急伸

 介護保険における歩行器のレンタルは急伸している。厚生労働省が発表している介護給付実態調査月報によると、15年4月時点で給付件数は52万400件、給付費は1億4964万単位となっており、1単位10円で計算すると、およそ15億円の市場規模にまで拡大してきている(グラフ1)。

 昨年度と比較すると、1年間で給付費は1893万単位(14.5%増)、件数は6万4300件(14.0%増)と2桁成長を遂げている。

 歩行器が急伸している最も大きな理由は、06年の制度改正によって介護予防の考え方が明確になり、軽度者のケアマネジメントにおいて、積極的に歩行器が活用されるようになったためだ。

 1年間の給付件数の伸びを要介護度別にみると、「要支援1」が7000件(17.4%増)、「要支援2」が1万4100件(15.6%増)、「要介護1」1万5500件(16.0%増)、「要介護2」1万5900件(13.1%増)、「要介護3」8000件(12.2%増)、「要介護4」3200件(9.8%増)、「要介護5」500件(5.8%増)となっており、要支援から要介護2までのいわゆる軽度者を中心に歩行器の利用が伸びている(グラフ2)

歩行支援用具の安全性 :安全規格を目安に選択を

 消費者庁が発表している重大事故情報によると、07年度から14年度までの8年間で福祉用具に関わる重大事故は237件の報告があり、そのうち歩行支援用具では24件(歩行補助車14件、歩行車8件、歩行器2件、いずれも死亡事故なし)の事故報告が寄せられている。

 歩行支援用具を安心して利用するためには、自分に合った安全性の高い製品を選択することが重要である。歩行補助車、歩行車、歩行器については、製品安全協会が定めるSGマークの基準があり、それぞれどの用具のSGかも一目で見れば分かるよう表示されているので、歩行支援用具の選択の際の目安になる。

 また、歩行器や歩行車については、すでにJIS規格が策定されており、シルバーカーについても現在、業界団体で策定に向けた検討が行われている。

(シルバー産業新聞2015年8月10日号)

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