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ヘルパー視点のコミュニケーションツール

ヘルパー視点のコミュニケーションツール

 三菱商事(東京都千代田区、垣内威彦社長)は2018年10月から訪問介護事業所向けコミュニケーションツール「けあピアノート」の販売を開始した。実際に現場で働くヘルパーの意見を取り入れながら、継続利用がしやすい簡単入力のシステムを開発した。導入した事業所では電話代が3割減となるなど効果が出ている。開発者の髙橋慶氏に話を聞いた。

訪問介護事業所向けシステム 「けあピアノート」
三菱商事 介護・高齢者生活支援 プロジェクトマネージャー 髙橋 慶 氏

ヘルパー視点の商品開発で簡単操作

 三菱商事は2015年末から訪問介護事業所などを多く運営する企業と連携して、訪問介護事業所向けコミュニケーションツールの開発を開始した。実際に現場のヘルパーにシステムを活用してもらい、約2年をかけて「入力負担が多い項目」や「画面遷移が多くて面倒」などの意見を抽出・反映していった。

 同社ヘルスケア部 介護・高齢生活支援プロジェクトマネージャーの髙橋慶氏は「これまで、管理者が使いたいシステムは数多くあったが、実際に利用するヘルパー視点のシステムは無かった。現場の意見を反映することで、ヘルパーの方に継続して使いたいと思ってもらえる商品を目指した」と開発の経緯を話す。

 「けあピアノート」はスマートフォン向けのアプリケーション。個人のスマートフォン等にインストールして利用できるため、事業所がタブレットなどを購入して貸し出す必要がない。同システムは、閲覧している画面を画像保存する「スクリーンショット機能」が行えない設定にしており、利用者の個人情報流失を防ぐ。

 万が一、ヘルパーが辞めた場合は管理者画面で、指定した人のアプリ使用を停止できる。入力操作は簡単で、サービスを開始する際に「到着」、サービス終了後に「終了」ボタンを押すだけで登録可能。髙橋氏は「スマートフォンを使い慣れていないと入力項目が多いだけで拒否反応を示される方もいた。まずは継続して使ってもらえるよう、最低限の情報だけで登録できるようにした」と話す。

 サービス記録や体温などのバイタル等を音声入力できる機能も搭載。文章入力の負担を軽減する。実際に導入した事業所では、「お惣菜にこだわりがある」などこれまで報告されていなかった細かな状況まで共有されることが増え、連絡件数は3倍になった。サービス提供責任者とヘルパーの業務に関するコミュニケーションが密になったとの結果が得られた。

 この他、サービス内容の入力や経費入力、カメラでの情報共有などの機能も付いているため、入力に慣れてきたヘルパーのレベルに合わせて幅広い活用ができる。
一画面で入力が完了するためわかりやすい

一画面で入力が完了するためわかりやすい

電話代3割減

 サービス提供責任者は、業務の確認などのほかシフト管理をしていることが多い。シフト変更があった場合は、交代可能なヘルパーが見つかるまで電話をする等、介護以外の業務にかかる時間負担も大きかった。 

 そこで、シフト変更の連絡や、シフト調整依頼メッセージの送受信を全て「けあピアノート」のシステム上でできるよう作成。勤務状況や、シフト調整依頼への返信状況等をリアルタイムで確認できる。導入事業所では、通話料金は3割減、連絡時間50%減を実現した。

 「ヘルパーの方はもちろん、サービス提供責任者の業務負担を軽減することで、より現場の人とコミュニケーションを取る時間にまわせるようになる。連携が密になることで、サ責からのフィードバックがもらいやすくなり、結果として利用者へのケアへ還元できる」と効果を話す。

 髙橋氏は「けあピアノートは5,000拠点への導入を目指している。生活商材などを多く取り扱う商社のノウハウを活かしながら、超高齢化社会の課題解決に繋がるインフラ作りをしていきたい」と意気込む。

 1事業所あたり初期費用2万円、基本機能月額5,000円。アプリはヘルパーの人数に関わらず無料でダウンロードできる。導入マニュアルは同社ホームページに公開されており、すぐに導入可能。介護請求システムとの連携も順次進めていく。

 問合せは同社ヘルスケア部 介護・高齢者生活支援プロジェクト けあピアノートヘルプデスク(☎0570-00-8802)まで。

(シルバー産業新聞2019年7月10日号)

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