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「利用者半数が尿失禁」尿トレ実践

「利用者半数が尿失禁」尿トレ実践

 三重県松阪市の「デイサービスセンターフローラ」では、本人の排泄や排尿の能力を高める取り組みが評判となっている。また、自宅でもトイレに移動して自身で排泄ができるように、自立支援・重度化防止を念頭に、介護職員が同行してトイレ誘導をしている。実施にあたっての課題は、介護職員の負担軽減のため、過不足なく最適なタイミングでのトイレ誘導を実施することだった。

デイサービスこそ排泄支援

 デイサービスで排泄トレーニング実施の背景には、2017年に同事業所の理学療法士の岩田研二氏が実施した調査で▽約半数が尿失禁を有する▽泌尿器科への受診割合は13.8%と低調である――と判明したことがある。

 「理由を尋ねると『恥ずかしい』『誰に相談したらいいかわからない』など、正しい情報や支援を求める利用者がデイサービスにも多いことが分かった」と話し「デイサービスこそ排泄トレーニングや正しい排泄ケアの知識を利用者へ指導するべきだ」と、岩田氏は経緯を説明する。

自宅で実践できる内容を重視

 内容は自宅でも簡単にできる「尿トレ(骨盤底筋体操)」や、便秘に効果的な体操や排泄姿勢の指導、男女別の尿漏れパッド紹介などが中心。尿トレは、椅子に腰かけてできる簡単な運動で、専用のクッションに腰かけ、意識して肛門や膣を締めることで、より効果的に骨盤底筋群を鍛えることができる。

 排泄機能指導士やおむつフィッターの資格をもつ岩田氏が中心となって、あらゆるメーカーの自立支援に配慮した動きやすいパンツタイプおむつやホルダーパンツの紹介や、軽度の人には尿取りパッドの紹介などを行う。トイレでの排泄を念頭に、補完的におむつ等の使用も提案する。情報の少ない男性は、紙おむつに抵抗がある人が多いが、尿取りパッドのような製品は受け入れてもらいやすいという。

デイの価値高める「排泄トレーニング」

 自立支援型デイサービスが当たり前になる中で、排泄自立からのアプローチは珍しく、約半数の利用者が取り組む人気メニューとなった。主任の野林和晃氏は「備品やグッズ・機器の費用に対して、利用者の満足度は高い」と、経営的観点からも取り組むべき利点を挙げる。

 事業所内で便意や尿意を催した時も、トイレに移動して自分自身で完遂できるように、介護職員はできるだけ付き添いに回るトイレ誘導を心掛けている。一方で「利用者から排尿の訴えがあり、トイレ誘導しても排尿がない場合もある。認知症症状のある利用者の場合は、特にその傾向が強い」(岩田氏)と説明するなど、介護人材不足が叫ばれる中で、その都度に介護職員がトイレ誘導をすることは、介護生産性向上や負担軽減(働き方改革)などの観点から課題となっていた。

介護ロボットで介護職員働き方改革と利用者QOL向上

 そこで超音波で膀胱内の尿量を計測するハンディータイプの排尿予測支援機器「リリアムスポット」(リリアム大塚)を導入した。医療機器ではないので、介護施設や在宅での使用ができる点も特長。国の介護ロボット「排泄支援機器(予測)」も満たす。効果は介護職員と利用者の双方に顕著にみられた。

 利用者からは、自身の排尿感覚が、最新機器の計測結果(5目盛表示)で確信になり、気兼ねなくトイレ誘導を依頼することができ「尿量が目で分かるのが良い。これをしないと安心できない」と言われるまでに、QOL向上につながった。まとまった排尿ができるようになり、頻尿も減少した。

 介護職員も、利用者から声が掛かると機器で計測し「まだ2目盛だから大丈夫ですね」などと、根拠に基づいて説明でき「トイレ誘導の空振りがなくなった」と負担軽減を歓迎する声が高まった。18年介護報酬改定でデイに排せつの加算がなかったことについて「評価は後からついてくる」とした上で、「今後、加算がつけば、全国的に取組み拡大が期待できる」と、失禁など排泄の悩みをもつ利用者の支援の広がりに期待を寄せた。

(シルバー産業新聞2019年6月10日号)

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