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「オンライン診療」 で対面診療補完

「オンライン診療」 で対面診療補完

 対面診療を基本に、慢性疾患等の安定した長期患者を対象に、スマートフォンなどのビデオ通話を利用して医師が患者を診察する「オンライン診療(遠隔診療)」が18年診療報酬改定で位置づけられた。

報酬に位置づけたICT活用 福岡でモデル事業好評

 対面診療を基本に、慢性疾患等の安定した長期患者を対象に、スマートフォンなどのビデオ通話を利用して医師が患者を診察する「オンライン診療(遠隔診療)」が18年診療報酬改定で位置づけられた。通所リハや訪問リハの「リハビリテーションマネジメント加算」で医師のテレビ電話によるリハビリ会議出席が是認されたことや、見守り機器の導入によって夜勤職員の上乗せ配置の人員基準緩和が行えるなど、ICT活用は、省力化が求められる医療介護分野で今後の伸展が予想される。

 ビデオ通話などを用いた「オンライン診療」が、18年の診療報酬改定で明確に認められた。ただ、初診からは算定できず、初診から6カ月以上、特定疾患や生活習慣病などに関する定められた医学管理料を算定している患者について、毎月同じ医師による対面診療を行っていることなど、厳しい要件がある。

 これまでも、患者に電話などで治療上の指示をした時に「電話等再診」(72点/回)があり、診療所や200床未満の医療機関が対面診療を行った患者に電話やビデオ通話による診療を算定することを認めてきた経緯がある。今改定で、定期的な医学管理を行う場合には、電話等再診は算定できないことになった。

 介護報酬の今改定においても、訪問・通所リハビリテーションのリハマネ加算見直しについて、医師の関与を明確化するとともに、リハビリ会議への医師の出席は、テレビ電話等の情報通信機器を使用してもよいとされた。

オンライン診療料・医学管理料・在宅管理料

 オンライン診療は、離島やへき地などでの遠隔診療を想定して実証実験などが行われてきたが、18年改定では、通院や訪問診療の補完や在宅患者の安心確保という視点が前面に出されており、人員不足の中で、慢性期・生活期の医療を在宅でスムーズに送るためのICTの活用をめざすものになった。

 診療報酬上、オンライン診察料(70点/月)は、対面診療とオンライン診療を組み合わせた診療計画の策定によるオンライン医学管理料(100点/月)と併給できる。同様に、在宅医療の在宅時医学総合管理料(在医総管)を6カ月以上算定している場合に取得できるオンライン在宅管理料(100点/月)も新設された。

 オンライン診療を推進するインテグリティ・ヘルスケア(武藤真祐社長=医療法人鉄祐会理事長)によると、対面診療とオンライン診療の診療報酬上の違いは、外来診療において診療所で糖尿病患者に再診を行った場合(処方含まず)、対面診療では外来管理加算(52点)と特定疾患療養管理料(225点)、再診料(72点)の計349点になるのに対して、オンライン診療では、オンライン医学管理料(100点)とオンライン診療料(70点)の計170点になり、対面診療の半額の設定だが、従前の電話等再診(72点)を上回る。また、在宅医療(在宅療養支援診療所、末期悪性腫瘍等以外、単一建物診療患者1人の場合)では、月1回訪問診療(在医総管2300点と訪問診療料833点)にオンライン在宅管理料(100点)が加算される形になる(
 同社は、昨年度、福岡市健康先進都市戦略の一環で、福岡市医師会と「ICT活用のかかりつけ医機能強化事業」を実施し、オンライン診療の導入と有用性の検証を行った。「治療を続けること、症状を伝えること、受診すること、これらをICT(ビデオチャット)使ってサポートするもの」と、同社の増崎孝弘マネジャー。「適時に診察できることで治療からの脱落や重症化を予防」「通院介助が必要で、かつ症状が変化しやすい高齢患者を安心してケア」「在宅医の負担を軽減しながら、きめ細かなケアが可能」などの検証結果が得られたと説明する。

 この事業は、ICTを活用してかかりつけ医機能の強化を図るのが目的で、17年4月から福岡市、市医師会、鉄祐会の3者を中心に、九州厚生局がオブザーバーに入り市内の20弱の診療所が協力して行われた。

 患者と医師を結ぶオンライン診療システムには、鉄祐会が開発したYaDoc(ヤードック)が用いられた。タブレットを用いたオンライン問診(疾患に応じた問診手法採用)で患者の症状を把握(アセスメント結果の数値化、過去経緯のグラフ化)し、自宅で測定した日々のバイタル情報をスマホでかかりつけ医に送信し、医師と患者の間でビデオ通話によってオンライン診療を行う。治療成果の評価や治療方針の見直しなどはタブレットにも送信される。こうしたシステムによって、問診時間の短縮や、患者自身の意識向上、状態変化の事例では、早期発見、通院負荷の軽減や療養への不安解消などが図られる。

 事例では、脳梗塞後遺症をもつ90代男性は、病状は安定しているが、ADLは低く、息子夫婦の車の送り迎えでようやく月1回通院。通院が難しくなった際は、訪問診療への切り替えを検討していた。今事業では、通院を3カ月1度に減らして、その間は月1回ペースでオンライン診察を行った。

 また、認知症のある80代女性は、3カ月ごとに家族の介助で通院していたが、症状の進行についてかかりつけ医とのコミュニケーションを増やしたいという要望があった。そこで月1回のオンライン診療を間に行った。

 両ケースとも、オンライン(ビデオチャット)で、患者の表情や状態変化を見ることが増え、患者や家族もかかりつけ医の顔が見え、相談できることで安心できた。

 18年診療報酬改定では、「遠隔診療(情報通信機器を用いた診療)」として、ほかに、連携先の病理医が生体検体等の病理画像の観察のみによって病理診断を行った場合も病理診断料等の算定ができることなった。また心臓ペースメーカーをした在宅患者の遠隔モニタリング加算も新設されている。

業務のIT化めざす好機

 厚労省は、「オンライン診療ガイドライン」(18年3月30日)を示して、医師と患者の合意、急病急変時の対面診療、対面診療と同一医師、診療計画作成など「最低限遵守する事項」を明記した。その一方で、政府の規制改革推進会議の医療・介護WTは5月8日、オンライン診療を初診から認めて推進すべきとの意見書を提出し、早くも見直しを求めている。

 医療・介護分野のICT活用は、実施状況を踏まえて、今後拡大することは必至の状況にあり、IT導入助成金なども活用して業務効率化をめざすタイミングといえそうだ。
(シルバー産業新聞2018年6月10日号)

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