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福祉用具貸与上限価格 本紙シミュレーション
2018年10月より、介護保険の福祉用具貸与に上限価格が設定される。上限価格の計算方法は、全国平均価格に「1標準偏差」を加えた値。商品ごとに設定し平均価格とともに公表される。上限価格を超えたものについては契約全体が給付対象外になるとしている。正規分布の場合、価格上位の約16%の貸与件数が該当する。介護保険での貸与を継続するには、事業者は少なくとも上限価格まで引下げる必要があるため、これにより全国平均貸与価格も下がるとみられる。本紙では標準偏差の解説、および仮の貸与価格分布をもとに上限価格のシミュレーションを行った。
「標準偏差」は統計においてデータのバラツキの大きさを示す指標。平均価格が同じでも、平均にデータが集中している場合は標準偏差の値は小さくなり、価格帯がより広く分散している場合は大きくなる。
貸与価格の実データが分かれば平均・標準偏差は自動的に計算される。さまざまな社会・自然現象の膨大なデータがあるとき、最も一般的な分布とされるのが「正規分布」。平均付近が一番高く、平均から離れるにつれ緩やかに低くなる左右対称な富士山型ないし釣鐘型を描く。
この場合、平均±1標準偏差の範囲に件数全体の約68.3%、平均±2標準偏差に約95.5%、平均±3標準偏差に約99.7%がおさまる。今回の上限価格が「外れ値」、つまり極端に高い価格を是正するためだけであれば、+2標準偏差または+3標準偏差を上限とするのが一般的だ。
ところが今回、国が示したのは「+1標準偏差」。正規分布だとこの範囲に収まるのは84.1%で、残りの約16%が給付対象外となる。価格の見直しを余儀なくされる事業所も少なくない。
仮に「特殊寝台A」について、貸与件数100件の価格( 単位)分布がグラフ1のように、100単位刻みで分布している場合を見てみる。平均は1200単位、標準偏差は251.8、「平均価格+1標準偏差」は1451.8単位となり、18件(18%)が上限を越える。
上限の設定を定期的に見直すのか、または1回のみとするかはまだ決まっておず、貸与事業に与える影響の程度は見直し回数がポイントになる。
貸与価格の実データが分かれば平均・標準偏差は自動的に計算される。さまざまな社会・自然現象の膨大なデータがあるとき、最も一般的な分布とされるのが「正規分布」。平均付近が一番高く、平均から離れるにつれ緩やかに低くなる左右対称な富士山型ないし釣鐘型を描く。
この場合、平均±1標準偏差の範囲に件数全体の約68.3%、平均±2標準偏差に約95.5%、平均±3標準偏差に約99.7%がおさまる。今回の上限価格が「外れ値」、つまり極端に高い価格を是正するためだけであれば、+2標準偏差または+3標準偏差を上限とするのが一般的だ。
ところが今回、国が示したのは「+1標準偏差」。正規分布だとこの範囲に収まるのは84.1%で、残りの約16%が給付対象外となる。価格の見直しを余儀なくされる事業所も少なくない。
仮に「特殊寝台A」について、貸与件数100件の価格( 単位)分布がグラフ1のように、100単位刻みで分布している場合を見てみる。平均は1200単位、標準偏差は251.8、「平均価格+1標準偏差」は1451.8単位となり、18件(18%)が上限を越える。
上限の設定を定期的に見直すのか、または1回のみとするかはまだ決まっておず、貸与事業に与える影響の程度は見直し回数がポイントになる。
グラフ1をもとに、上限を超える事業者が上限価格以内の1400単位まで貸与価格を引下げた場合の分布がグラフ2。平均価格は1170単位になり上限設定前より2・5%下がる。価格のバラツキは少し小さくなり標準偏差は210。新たな上限価格は1170+210=1380単位となり、今度は上位30%が対象外となる計算だ。
よって、定期的な見直しが実施された場合、将来的に給付対象外となるリスクを見越し、事業者がさらに低い価格に引下げることも考えられる。
グラフ2からさらに上限を超える事業所が上限の範囲内(1300単位)に設定した場合、平均1140単位、標準偏差180となり、新たな上限価格は1140+180=1320単位。全件が上限の範囲に収まる現象が起こる。上限の見直しを繰り返せば、やがては一定の価格帯に収斂していく状態も出てくるということになる。
なお、グラフ1から、上限を超える事業者がもし平均(1200単位)まで貸与価格を引下げた場合は、平均価格は1134単位で設定前より5.5%下がる。平均に件数がより集中し、標準偏差はさらに小さい182.9。新たな上限価格は1134+182.9=1316.9単位となり、12%が上限を超え給付対象外となる。
このように、価格分布の状況によって給付対象外となる割合は異なる。商品ごとに上限を設定するため、貸与件数が極端に少ないものや、一部の地域のみで利用されているものも多く存在する。これらにも今回のルールが一律適用となるかは未定だ。
さらに、価格データのない新商品に関しては、一定期間は自由価格とするなどの措置も考えられるが、運用の規定は今後、厚生労働省で検討していくことになる。
よって、定期的な見直しが実施された場合、将来的に給付対象外となるリスクを見越し、事業者がさらに低い価格に引下げることも考えられる。
グラフ2からさらに上限を超える事業所が上限の範囲内(1300単位)に設定した場合、平均1140単位、標準偏差180となり、新たな上限価格は1140+180=1320単位。全件が上限の範囲に収まる現象が起こる。上限の見直しを繰り返せば、やがては一定の価格帯に収斂していく状態も出てくるということになる。
なお、グラフ1から、上限を超える事業者がもし平均(1200単位)まで貸与価格を引下げた場合は、平均価格は1134単位で設定前より5.5%下がる。平均に件数がより集中し、標準偏差はさらに小さい182.9。新たな上限価格は1134+182.9=1316.9単位となり、12%が上限を超え給付対象外となる。
このように、価格分布の状況によって給付対象外となる割合は異なる。商品ごとに上限を設定するため、貸与件数が極端に少ないものや、一部の地域のみで利用されているものも多く存在する。これらにも今回のルールが一律適用となるかは未定だ。
さらに、価格データのない新商品に関しては、一定期間は自由価格とするなどの措置も考えられるが、運用の規定は今後、厚生労働省で検討していくことになる。
【参考】市場価格を反映する薬価改定
薬価基準は、保険医療で使用できる医薬品の品目と価格を厚生労働大臣が定めたもので、医療機関・薬局は薬価基準に基づく医薬品を使用し、保険請求を行う。
16年4月時点で医薬品の収載品目数は約1万6,000。現行、薬価改定は2年に1回行われ、国はまず全品目の薬価調査を実施して実際の販売価格(市場実勢価格)を把握する。これと薬価との乖離を調整したのが新薬価となる。
具体的な計算方法は、医療機関・薬局への販売価格の加重平均値に消費税を加え、薬剤流通安定のための調整幅として、改定前薬価の2%を加えた額が、新薬価になる(図)。
年間販売額が予想額に比べ極めて大きい場合には「市場拡大再算定」を導入。年間販売額1,500億円超かつ予想額の1.3倍以上の場合には、通常の薬価改定に加え、最大50%が引下げられる仕組みだ。また、新規医薬品については、類似薬がある場合は「類似薬効比較方式」、無い場合は「原価計算方式」を用いて算定される。
15年度の薬価調査では市場勢価格と薬価との平均乖離率は約8.8%。16年度改定で医療費ベース▲1.22%、薬剤費ベース▲5.57%の引下げが行われた。
なお、政府は昨年12月20日に薬価制度改革の基本方針を決定。18年度以降、薬価改定を毎年実施する等の内容を盛り込んでいるが、日本医師会、日本薬剤師会、製薬・卸関係団体などは反対意見を表明している。
(シルバー産業新聞2017年2月10日号)
16年4月時点で医薬品の収載品目数は約1万6,000。現行、薬価改定は2年に1回行われ、国はまず全品目の薬価調査を実施して実際の販売価格(市場実勢価格)を把握する。これと薬価との乖離を調整したのが新薬価となる。
具体的な計算方法は、医療機関・薬局への販売価格の加重平均値に消費税を加え、薬剤流通安定のための調整幅として、改定前薬価の2%を加えた額が、新薬価になる(図)。
年間販売額が予想額に比べ極めて大きい場合には「市場拡大再算定」を導入。年間販売額1,500億円超かつ予想額の1.3倍以上の場合には、通常の薬価改定に加え、最大50%が引下げられる仕組みだ。また、新規医薬品については、類似薬がある場合は「類似薬効比較方式」、無い場合は「原価計算方式」を用いて算定される。
15年度の薬価調査では市場勢価格と薬価との平均乖離率は約8.8%。16年度改定で医療費ベース▲1.22%、薬剤費ベース▲5.57%の引下げが行われた。
なお、政府は昨年12月20日に薬価制度改革の基本方針を決定。18年度以降、薬価改定を毎年実施する等の内容を盛り込んでいるが、日本医師会、日本薬剤師会、製薬・卸関係団体などは反対意見を表明している。
(シルバー産業新聞2017年2月10日号)