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都道府県主体の介護生産性支援メニュー充実へ

都道府県主体の介護生産性支援メニュー充実へ

 国は新たに「介護サービス事業者の生産性向上や協働化を通じた職場環境改善事業」(予算規模351億円)として、都道府県が主体となり、テクノロジー機器の導入・利活用のほか、ケアプランデータ連携システムを活用した地域づくり、テクノロジー活用のモデル施設づくり、小規模事業者をグループ化した人材募集・採用・合同研修の実施などを支援する。助成対象となる機器も従来の介護ロボット・ICT機器のほか「生産性に効果があると都道府県が判断した機器」も追加する。2022年5月公布の介護保険法の一部改正で、生産性向上の推進役を都道府県の努力義務に位置づけたことを受け、デジタル行財政改革会議(議長:岸田文雄首相)の決定に基づき、国を挙げて取り組みを支援していくことになる。

 国を挙げたより大きな取組となったことを受けて、23年度補正予算では「介護サービス事業者の生産性向上や協働化を通じた職場環境改善事業」を推進する。

 ポイントは、これまでの事業所単位の機器導入支援にとどまらず、地域単位での生産性向上を目指した取り組み。①「介護テクノロジー定着支援事業」として、業務改善支援と一体的な介護ロボット・ICT導入や更新支援②「地域における介護現場の生産性向上普及推進事業」として、地域の複数事業所での機器導入に向けた研修や、地域のモデル施設の育成を都道府県等が主導して推進することや、ケアプランデータ連携システムの活用を地域で広げるために、都道府県等が主導してメリットや好事例を収集する取り組みの支援③「協働化・大規模化等による職場環境改善事業」として、小規模事業者がグループをつくり人材募集や一括採用、合同研修会の実施、事務処理部門の集約など職場環境改善を支援――で構成される。

 ①は従来の補助金の仕組みをベースに、新たに「生産性に効果があると都道府県が判断した機器」(100万円/機種)を追加する。また、介護ロボットやICT導入と一体的な業務改善支援についても助成(45~48万円/施設・事業所)する。

 ②は先駆的な事業所づくりへの補助(2000万円/1モデル施設)、ケアプランデータ連携システムの利用促進のためのモデル地域づくりへの補助(850万円/1モデル)を助成する。

 ③は小規模事業者単独では取組みにくい人材募集・研修をグループ化して取り組む場合に1200万円/1事業所グループを予定する。

 補助率も①③は国.都道府県75%、事業者25%、②は国.都道府県100%、①と③の両方を実施する場合は国.都道府県80%、事業者20%など。

介護現場の生産性向上促進の中核人材養成も

 国のデジ行財政改革会議で厚労省の示したKPI(重要業績評価指標)は▽「ICT・介護ロボット等の導入事業者数」を23年29%から26年50%に高める▽「有給休暇の年間平均取得日数」を23年7.4日から26年8.4日とし、40年には全産業平均以上▽「離職率の変化(全介護事業者)」を23年15.7%から26年15.3%に減少させ、40年には全産業平均以下にする――など。テクノロジー活用の施設は、離職率や有給休暇取得日数の更なる改善成果を目指す。

 また、24年介護報酬改定で施設系、居住系、多機能系などの介護現場に「利用者の安全・介護サービスの質の確保・職員の負担軽減を検討するための委員会」の設置・開催が義務化された(3年間の経過措置あり)。

 この中核的な人材の養成のため、23年度は老健事業として「介護現場の生産性向上を促進するための中核人材のスキル強化と習得プログラムに関する調査研究」(日本介護福祉士会への委託)を実施。24年度も厚労省委託事業として継続実施予定。KPIでは23年時点で500人の中核人材を、26年度に5000人、29年度には1万人と拡大させるとしている。

 23年度老健事業のカリキュラム(オンデマンド動画.集合研修で16時間)は▽介護福祉の実践力「介護過程の応用力の理解」「科学的介護の基礎的理解」「介護職の倫理と利用者の全人性.尊厳の実践的理解」▽チームをまとめる力「チームがまとまり成果を生み出す考え方と方法」▽介護現場の生産性を向上させる力「介護現場の問題発見と解決スキル」「介護ロボット.ICT活用の基礎的理解」「介護現場の業務改善(演習)」「介護ロボット・ICTの導入(演習)」「利用者支援に向けた活用(演習)」――。現場で専門的に動かす人材を養成する流れはできつつある。
(シルバー産業新聞2024年3月10日号)

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