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LIFEフィードバック 暫定版から施設の状況を読み解く

LIFEフィードバック 暫定版から施設の状況を読み解く

 科学的介護を目指し、2021年度介護報酬改定では、利用者の身体状況と提供したケア内容等を国へ提出する科学的介護情報システム「LIFE」がスタートした。6月と8月、10月にはフィードバックが行われたが、内容は情報を提供した事業所の状況と、各項目の全国割合と該当者数を確認することのできる「暫定版」にとどまる。暫定版フィードバックを活用して、科学的介護に取組む特養「鈴鹿グリーンホーム」にデータ分析方法などについて話を聞いた。

現場の分析力を高めて、今後のケアに繋げる

 社会福祉法人鈴鹿福祉会(中村敏理事長)が運営する特養「鈴鹿グリーンホーム」(三重県鈴鹿市、服部昭博施設長)では、今年4月よりLIFEへの情報提供を行っている。

 現在、LIFEのフィードバックでは利用者の身体状況などを全国平均と比較したデータのみ返されている。同施設では暫定版フィードバックから効果があるケアを読み取り、ケア内容に反映している。

暫定版フィードバックの分析

服部昭博施設長

服部昭博施設長

 4月分のフィードバックで平均要介護度が全国平均に比べて同施設の方が高いという結果が出た。また、認知症高齢者の日常生活自立度では「夜間を中心に日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要(Ⅲb)」と「日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要(Ⅳ)」の割合も高くなっていた。

 一方、「vitality index」の意思疎通の評価では「自分から挨拶することができる」等の割合が高くなっていた。

 「上記のデータから、当施設では比較的重度な認知症者が多いが、意思疎通ができるなど穏やかな生活が送れていると読み解くことができる。つまり、BPSDがでないケアがしっかり実践できている」と服部施設長は分析する。

 一方で、明らかな外れ値等も見られることから、自分たちの施設にとって何が必要なデータかを見極めることも重要となる。どのケアに積極的に取組み、また評価できるケアは何かを把握することで、根拠のある介護を実践している。

LIFEの取組みには業務効率化が必須

 同施設では、CHASEが開始した段階で今後、現在のLIFEのような情報提供システムが必須となると予測し、人材やシステム等の体制を3年前より整えてきた。

 まず、データ入力に必要な各種計画書の入力・作成を行う専門職を育成するため看護師、管理栄養士、ケアマネジャーを積極的に採用。さらに、見守りセンサー等の介護ロボットを導入するためにネットワーク環境を整え、データ入力のためのタブレット端末を整備した。

 服部施設長は「CHASEなど新しいことに取組む際は、業務改善とセットで考えなければ、現場の負担が大きくなってしまう」と強調する。このほか、システムベンダーと連携してCHASEに対応するシステム開発にも取り組んだ。

 LIFEが開始してからは、まず管理栄養士など専門職が加算算定に必要な計画書を作成。現場スタッフが夜勤の空き時間等を活用しながらデータをシステムに入力する。その後、各分野の専門職と生活相談員が登録内容の最終チェックを行う。

 生活相談員でLIFEの管理者の原田崇史さんは「高齢者人口は増え、働き手世代が減少する2040年を目指して、ICT化や人手に頼りすぎない介護手法を考えていかなければならない。現場が負担なくLIFEに取組めるよう、体制を整えていく」と話す。

 服部施設長は「今後、現場責任者には『データ分析力』が求められてくる。暫定版フィードバックのデータはまだ少ないが、内容を分析してしっかり自分たちのケアを見直す意識を持つためにも、今から取組むことに意義がある」と強調する。
原田崇史さん

原田崇史さん

「LIFEフィードバックはグラフで比較できる内容をイメージ」

 三菱総合研究所は昨年度の老健事業「居宅・施設系サービスにおけるCHASEを介した科学的介護に資するデータの収集・活用に関する調査研究事業」でLIFEのフィードバックのイメージをまとめている。

 報告書のフィードバックによると、例えば事業所単位のフィードバックでは、施設の状況と全国平均が数値とグラフで、ADL、栄養、認知症など各項目にまとめられている(図)。

 厚生労働省の平子哲夫老人保健課長(当時)は「『事業所単位』『利用者単位』で具体的な比較図などをまとめた資料が公表されるまで、少しお時間を頂きたい」と説明している。

(シルバー産業新聞2021年11月10日号)

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