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デイ利用自粛で「コロナフレイル」
3~5月の新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急事態宣言によって実施された、デイ利用自粛者の影響調査がこのほど、大阪府堺市(対象者257人)と名古屋市緑区(148人)の2地区でまとまった。外出頻度や身体活動が大きく低下し、転倒不安が3~4割で増加、生活の充足感の低下が4割以上でみられるなど、様々な心身状況への影響が出た。調査にあたった大阪経済大学教授の高井逸史氏、居宅介護支援事業所でんじやまのケアマネジャー、水野勝仁氏らに調査結果を聞いた。
デイ自粛 要支援1・2が8割占める
調査は、堺市(5月10日~31日)、名古屋市(3月下旬~5月)で地域のケアマネジャーらの協力を得て実施された。特措法に基づいて、名古屋市は緑区など2区のデイ126事業所に2週間の休業要請を行う一方、緊急事態宣言時に、大阪府はデイ利用者に対して利用自粛を要請した。これを契機にデイやショートステイの利用自粛が拡大した。
堺市では、デイに通い続ける人の状況も調査し、「通う群」(326人)と「控える群」(244人)で心身状況の変化を対比する形でも調査が行われた。
堺市では、デイに通い続ける人の状況も調査し、「通う群」(326人)と「控える群」(244人)で心身状況の変化を対比する形でも調査が行われた。
(要介護度・世帯状況)
デイ自粛者の介護区分は、2調査とも各要介護度にまたがったが、要支援1~要介護2が堺市、緑区ともに82%を占めた。同居世帯が4割で、独居は堺市で25%、緑区で29%、高齢世帯は堺市36%、緑区27%だった。
(自粛日数・代替サービス)
平均のデイ自粛日数は堺市で38.7日、緑区で52.6日。代替サービスの利用があったのは、堺市で13%、緑区で25%と、緑区で代替サービス利用が多かった。「代替サービスも自主的に控える傾向があった」(堺市、高井氏)、「地域の病院のクラスター発生があり、市の判断でデイ休業要請が始まったという経過がある。代替サービスは、新しいサービス利用が困難な場合、デイ職員による訪問の入浴介助や、従前の訪問看護の利用回数を増やすなどで対応した」(緑区、水野氏)
デイ自粛者の介護区分は、2調査とも各要介護度にまたがったが、要支援1~要介護2が堺市、緑区ともに82%を占めた。同居世帯が4割で、独居は堺市で25%、緑区で29%、高齢世帯は堺市36%、緑区27%だった。
(自粛日数・代替サービス)
平均のデイ自粛日数は堺市で38.7日、緑区で52.6日。代替サービスの利用があったのは、堺市で13%、緑区で25%と、緑区で代替サービス利用が多かった。「代替サービスも自主的に控える傾向があった」(堺市、高井氏)、「地域の病院のクラスター発生があり、市の判断でデイ休業要請が始まったという経過がある。代替サービスは、新しいサービス利用が困難な場合、デイ職員による訪問の入浴介助や、従前の訪問看護の利用回数を増やすなどで対応した」(緑区、水野氏)
利用自粛で心身状況低下
(外出頻度・心身活動・睡眠時間)
両調査ともに、利用者の4分の3以上で外出頻度や心身活動が低下した(グラフ)。睡眠時間は、8割が変わらない中で、減少と増加の両傾向が表れた。
両調査ともに、利用者の4分の3以上で外出頻度や心身活動が低下した(グラフ)。睡眠時間は、8割が変わらない中で、減少と増加の両傾向が表れた。
(食事量・体重・お通じ)
緑区では、食欲低下により17%で食事量が減少し、体重の減少が12%で見られた。一方で、4%で食事量が増え、体重増加の人が15%あった。お通じの減った人は両調査で5%程度あった。
(転倒不安・物忘れ)
両調査で顕著に増えたのが、転倒不安。「増えた」「少し増えた」計で、堺市で35%、緑区では46%に達した。「歩行や活動が慎重になり、心身状況の低下に直結する」(高井氏)。物忘れの増加も、堺市で19%、緑区で16%あった。「認知機能の低下がはっきり出た」(水野氏)
(生活の充実感・疲れたような感じ)
生活の充実感の低下は「うつ傾向につながる」と水野氏が指摘する。堺市で4割、緑区で5割の人にみられた。
また、「( 訳もなく)疲れたような感じ」も堺市で16%、緑区で34%だった。
(介護負担)
堺市は独自に家族の介護負担を調査。4割で介護負担の増加が訴えられた。この調査から、「デイ自粛によって心身状況の低下が明確に表れる結果がでた。いわば、「コロナフレイル」といえる。デイサービスの果たしている役割が明確に分かった」と両氏。
水野氏は、「デイで提供される食事や入浴、排泄の介助を他サービスで代替しても、かならずしも心身状況の低下は防ぐことはできない。デイに参加し体を動かし、話をするなどの効果が大きいと思う」と指摘。理学療法士でもある高井氏は、「歩行能力の低下によって認知機能の低下も引き起こされる。デイ自粛の際には、自宅でも生活リズムを整えて、継続的な体操など工夫する必要がある」と話している。
緑区では、食欲低下により17%で食事量が減少し、体重の減少が12%で見られた。一方で、4%で食事量が増え、体重増加の人が15%あった。お通じの減った人は両調査で5%程度あった。
(転倒不安・物忘れ)
両調査で顕著に増えたのが、転倒不安。「増えた」「少し増えた」計で、堺市で35%、緑区では46%に達した。「歩行や活動が慎重になり、心身状況の低下に直結する」(高井氏)。物忘れの増加も、堺市で19%、緑区で16%あった。「認知機能の低下がはっきり出た」(水野氏)
(生活の充実感・疲れたような感じ)
生活の充実感の低下は「うつ傾向につながる」と水野氏が指摘する。堺市で4割、緑区で5割の人にみられた。
また、「( 訳もなく)疲れたような感じ」も堺市で16%、緑区で34%だった。
(介護負担)
堺市は独自に家族の介護負担を調査。4割で介護負担の増加が訴えられた。この調査から、「デイ自粛によって心身状況の低下が明確に表れる結果がでた。いわば、「コロナフレイル」といえる。デイサービスの果たしている役割が明確に分かった」と両氏。
水野氏は、「デイで提供される食事や入浴、排泄の介助を他サービスで代替しても、かならずしも心身状況の低下は防ぐことはできない。デイに参加し体を動かし、話をするなどの効果が大きいと思う」と指摘。理学療法士でもある高井氏は、「歩行能力の低下によって認知機能の低下も引き起こされる。デイ自粛の際には、自宅でも生活リズムを整えて、継続的な体操など工夫する必要がある」と話している。
デイ「通う群」と「控える群」 の差
堺市での調査は、大阪府介護支援専門員協会堺ブロック(大谷信哉理事)の協力を得て実施された。デイサービス利用継続の調査も行い、「通う群」と「控える群」との対比を行った。主な調査結果は次の通り。
① 要支援では「通う群」(24.5%)に対し、「控える群」(32.8%)が多い。
② 独居の割合は「通う群」(39.0%)が「控える群」(25.0%)より多い。
③ 生活の充実感の減少は、「控える群」(38.1%)に対して、「通う群」(11.0%)にとどまった。
④ 転倒の不安の増加は、「控える群」(35.5%)に対して「通う群」(5.8%)だった。
⑤ 物忘れの増加は、「控える群」(19.3%)に対して「通う群」(1.8%)に過ぎなかった。
⑥ 家族の介護負担の増加は、「控える群」(36.5%)に対して「通う群」(4.0%)だった。
堺市では、介護の悪化による区分申請が増加している。家族からは、「感染リスクを考えてデイ利用を控えたが、これほどまで認知症の進行などフレイルが悪化するとは思わなかった」と声が出ているという。堺ブロックの大谷理事は、「あらためて、デイサービスの有用性が利用者・家族にとって高いことが判明。しかし、第2波の時には、コロナ感染症の重症化のおそれのある要介護者にとって、デイ利用を継続することでよいのかどうか。デイ自粛という選択肢を忘れてはならない」と、デイの効果と感染リスクの回避とを慎重に考えるべきだと指摘した。
(高井氏の助言)
「NHKのテレビ・ラジオでは、毎日決まった時間に体操番組を放送している。これが、毎日決まった時間に身体を動かす習慣を身につけるきっかけになると思う。家族や専門家が決まった時間に電話や訪問し、自宅で運動するよう働きかけるのもよい。ICTが活用できれば、離れていてもオンラインで体操ができる」
(シルバー産業新聞2020年8月10日号)
① 要支援では「通う群」(24.5%)に対し、「控える群」(32.8%)が多い。
② 独居の割合は「通う群」(39.0%)が「控える群」(25.0%)より多い。
③ 生活の充実感の減少は、「控える群」(38.1%)に対して、「通う群」(11.0%)にとどまった。
④ 転倒の不安の増加は、「控える群」(35.5%)に対して「通う群」(5.8%)だった。
⑤ 物忘れの増加は、「控える群」(19.3%)に対して「通う群」(1.8%)に過ぎなかった。
⑥ 家族の介護負担の増加は、「控える群」(36.5%)に対して「通う群」(4.0%)だった。
堺市では、介護の悪化による区分申請が増加している。家族からは、「感染リスクを考えてデイ利用を控えたが、これほどまで認知症の進行などフレイルが悪化するとは思わなかった」と声が出ているという。堺ブロックの大谷理事は、「あらためて、デイサービスの有用性が利用者・家族にとって高いことが判明。しかし、第2波の時には、コロナ感染症の重症化のおそれのある要介護者にとって、デイ利用を継続することでよいのかどうか。デイ自粛という選択肢を忘れてはならない」と、デイの効果と感染リスクの回避とを慎重に考えるべきだと指摘した。
(高井氏の助言)
「NHKのテレビ・ラジオでは、毎日決まった時間に体操番組を放送している。これが、毎日決まった時間に身体を動かす習慣を身につけるきっかけになると思う。家族や専門家が決まった時間に電話や訪問し、自宅で運動するよう働きかけるのもよい。ICTが活用できれば、離れていてもオンラインで体操ができる」
(シルバー産業新聞2020年8月10日号)