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訪問介護 特定事業所加算 重度者要件に看取り対応

訪問介護 特定事業所加算 重度者要件に看取り対応

 訪問介護の特定事業所加算は、今改定で看取り期への対応強化、中山間地域等の利用者への支援を評価するなどの見直しを行った。5区分ある加算のうち、旧加算(Ⅳ)を廃止し、同(Ⅴ)を新加算(Ⅳ)にスライド。中山間地域等の利用者への継続的なサービス提供等を評価する新加算(Ⅴ)を設け、5区分となった。

 特定事業所加算は①体制要件②人材要件③重度者等対応要件――の組合せで評価区分が決定。体制要件のうち▽訪問介護員等・サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施▽利用者に関する情報またはサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催▽利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告▽健康診断等の定期的な実施▽緊急時等における対応方法の明示――は全区分共通となっている。

看取り支援をPDCA

 加算(Ⅰ)(+20%)・(Ⅲ)(+10%)は重度者等対応要件に「看取り期の利用者への対応実績が1人以上」を追加。既存の要件「要介護4~5、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の割合が20%以上」のいずれかを満たせばよいこととした。看取り期の対応実績は、対象となる利用者が前年度(3月を除く)、または届出月の前3月間に1人以上いること。当該期間に訪問介護の提供を行った利用実人員を用いて算定する。

 また、看取り対応実績を要件とする際は、体制要件として▽病院、診療所、訪問看護ステーションの看護師と連携し24時間連絡できる体制を確保し、必要に応じて訪問介護を提供できる体制を整備▽看取り期の対応方針を定め、利用開始時に利用者または家族へ内容を説明し同意を得る▽医師、看護職員、訪問介護員等、ケアマネジャー、その他の職種で協議の上、訪問介護事業所における看取りの実績等を踏まえ、適宜対応方針を見直す▽看取りに関する職員研修の実施――が必要となる。

 厚労省は報酬告示に関する留意事項の中で「看取り期の利用者へのサービス提供体制をPDCAサイクルにより構築・強化していくこと」と明記。例えば「看取り期の対応方針」には事業所の考え方、緊急時の対応を含む訪問看護ステーション等との連携体制、利用者等との話し合いにおける同意・意思確認、情報提供の方法、情報提供に供する資料・同意書等の様式などを含むとしている。

 また、「24時間連絡できる体制」とは、夜間でも訪問介護事業所から連携先の訪問看護ステーション等に連絡でき、必要な場合に事業所からの緊急の呼び出しに応じて出勤する体制。訪問介護員等が事業所内に勤務することは求めていない。

 具体的には、管理者を中心に①連携先と夜間の連絡・対応体制の取り決め(緊急時の注意事項、利用者の病状等の情報共有方法などを含む)②連携先に連絡する目安となる、訪問介護員等による利用者の観察項目の標準化――など。事業所内研修等で訪問介護員等へ①・②が周知されている体制を想定している。

 看取り期の利用者へのサービス提供については、身体状況の変化とこれに対する介護の記録、サービス提供の各プロセスにおける利用者・家族の意向の把握、それに基づくアセスメント、対応の経過を記録し、多職種連携のための情報共有を実施。ケアカンファレンス、ケアの振り返りなどにより対応方針やサービス提供体制を適宜見直すことを求めている。

 利用者が入院した場合についても「家族や入院先の医療機関等との継続的な関わりを持つことが必要」と円滑な情報共有の重要性を強調。なお、入院先の医療機関等が訪問介護事業所へ本人の状態を伝えることについては、入院の際に本人、家族に説明し、文書で同意を得ておく必要があるとしている。

 本人、家族から口頭で同意を得た場合は、介護記録に説明日時、内容等、同意を得た旨を記載。適切な看取り期における取組を担保するため、介護記録に職員間の相談日時、内容等に加え、本人の状態や家族への連絡状況等も記載。定期的に連絡し可能な限り家族の意思を確認しながら介護を進めていくことが重要だとしている。

 同省によると、改定前の特定事業所加算の算定率は加算(Ⅱ)こそ28.2%だが、加算(Ⅰ)5.7%、同(Ⅲ)~(Ⅴ)はいずれも1%未満という状況。加算(Ⅰ)のネックが重度者等対応要件だったことから、今改定ではこの部分を選べるように緩和し、算定率を高めていくねらいがある。

 実際、同省の調査では約4割の訪問介護事業所が、看取り期の利用者への対応実績があると回答。「事業所以外の訪問看護師と連携できる体制をとっている」も4割近くあった。

中山間地域で多職種協働を

 新加算(Ⅴ)(+3%)は共通の体制要件に加え、①通常の事業の実施地域内であって中山間地域等に居住する利用者(自宅と事業所との距離が7㎞超)へ継続的にサービスを提供②利用者の心身の状況または家族等を取り巻く環境の変化に応じ、サービス提供責任者(サ責)等を起点に、随時ケアマネジャー、医療関係職種等と共同し訪問介護計画を見直し――が要件。人材要件、重度者等対応要件はない。加算(Ⅰ)~(Ⅳ)のいずれかと併算定が可能((Ⅰ)~(Ⅳ)同士は併算定不可)。特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算との併算定は認めない。

 ①は対象となる中山間地域等の利用者へのサービス提供実績が前年度(3月を除く)、または届出月の前3月の月平均で1人以上。当該期間に訪問介護の提供を行った利用実人員を用いて算定する。仮に、月の途中に転居等で中山間地域等からそれ以外の地域(またはその逆)に居住地が変わった場合は、実際に中山間地域等に居住している期間のサービス提供分のみが加算の対象となる。

 また②の職種連携については、訪問介護計画の見直しの内容に応じて、適切に関係職種が関わるものとし、通常業務の中で主治医や看護師、介護職員等の意見を把握し、訪問介護計画の見直しが行われていれば、カンファレンス等の場を設ける必要はない。

 加算(Ⅲ)・(Ⅳ)(旧加算(Ⅴ))は人材要件を追加・見直し。「サ責を常勤で配置し、かつ基準を上回る常勤のサ責1人以上配置」または「訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上が30%以上」のいずれかとする。

 勤続年数は同一法人等での通算。異なるサービス事業所、雇用形態、職種(直接処遇を行う職種に限る)での勤続年数も含む。産前産後休業や病気休暇、育児・介護休業、母性健康管理措置としての休業を取得した期間も雇用関係が継続しているため、含めてもよい。

 また、「同一法人等」とは事業所の合併、別法人による事業承継で事業所の職員に変更がないなど実質的に継続して運営している場合や、法人の代表者等が同一で、人事や研修など労務管理を複数法人で一体的に行っている場合も該当する。
(シルバー産業新聞2024年4月10日号)

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