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枚方いつき薬局 在宅終末期に強み 要請には必ず当日対応

枚方いつき薬局 在宅終末期に強み 要請には必ず当日対応

 「薬を渡すだけの業務ではなく一人ひとりと深く関わりたい」。当時、大手薬局で働いていた松永光樹氏は感じていた。「かかりつけの患者さんがいれば、関わりの中でどうすれば状態がよくなるか深く勉強する」「多職種連携の中で、医師との距離も近く、情報共有しながらスキルアップできる」。もともと地元志向の強かった松永氏は2020年10月のコロナ下に、地域に根ざした薬局を志し大阪・枚方市で独立した。

在宅を経営の主体に

 6月現在、枚方いつき薬局には常勤4人、非常勤4人の薬剤師が在籍する。約200人の在宅患者を抱え、一人で1日10件以上訪問する日も。全ての患者宅を回るため、スケジュール調整も重要だという。患者や家族を含め、関係者全員にとって「かかりつけであること」「本音で話してもらうこと」を心がけている。

 売上の7割は在宅訪問から。午前は店舗業務、午後は提携する往診医の処方箋を受け患者宅を訪問し薬を届ける。全薬剤師が店舗・在宅訪問を兼任。ときには点滴で一杯になった段ボールを抱えて、集合住宅の5階まで階段を上ることもあるそうだ。

 「個人宅訪問は、状況が千差万別。薬剤師の数も必要で効率も悪いが、自分が目指す在宅の姿があった」と薬剤師の古池祐二氏は語る。

選ばれるための強み

 開設した時期はコロナ第3波に差し掛かろうというとき。病院での面会が制限されるなか、人生の最期を住み慣れた自宅で家族と過ごしたいという希望は少なくなかった。松永氏は終末期医療に対応できる体制を整えた。

 特に力を入れたのが、麻薬を使った疼痛コントロール。がんなどの終末期では、痛みの緩和はQOL向上につながる。診療・介護報酬上では麻薬管理指導加算を、末期悪性腫瘍患者や中心静脈栄養を受けているケースでは週2回・月8回まで算定できる。22年度診療報酬改定では、新たに在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算が創設。終末期では状態の急変に伴い医師の求めに応じて指導を行う機会も多く、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定する機会も多い。

 通常、在宅患者一人あたりの売上は月1万2000~3000円程度。薬剤師の給与は月額40~50万円で、薬剤師を一人雇うには30~40人への訪問がボーダーライン。「ここを越えるには、終末期医療に対応できる高い専門性と信頼関係の構築が一つの解決策となる」(松永氏)。

 同薬局では内服、貼り薬、注射薬など各種麻薬を完備。麻薬を継続的に体内に投与するための携帯式ポンプも購入し、使用法の習熟に努めている。「患者さんがいま直面している痛みを取るために、麻薬の投与は時間との勝負。医師・患者からの要請には必ず当日対応する」と松永氏。医師や看護師からも投与量や機器の使用法の問合せが来るそうだ。医師に対しては積極的に提案を行い、治療方針をすり合わせるケースも。在宅での終末期対応を求めて近隣の医療機関からの紹介も多く、現在は月10~20人の看取りに関わる。

 患者を最期までみるなかで、常にキャリア形成の意識を持ち、スタッフ全員のスキルアップに努める同薬局。「『いつき薬局がいてくれて助かる』と地域の方から信頼してもらうためにがんばり続ける」。松永氏は意気込みを語った。
(シルバー産業新聞2022年7月10日号)

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