生き活きケア

短期集中C型にいのち吹き込む「訪問アセスメント」

短期集中C型にいのち吹き込む「訪問アセスメント」

 大阪府寝屋川市の老健「ハーモニィー」が実施する要支援者対象の3カ月間の短期集中通所型サービス「ハーモニィー・ワンセルフ」。当初のモデル事業では6割の参加者が元気だった頃の生活を取り戻す成果を上げた。同事業のリーダー、医療法人一祐会の名倉和幸さん(作業療法士)は、大阪府や東京都の短期集中型サービスの推進事業にも参画する。生活課題の解決を図るためには「訪問アセスメント」が欠かせないと述べる。


 介護予防・日常生活支援総合事業の中核サービスとして注目される「短期集中型サービス」。「ハーモニィー・ワンセルフ」では、本人のがんばり次第で再び「自立」した生活を取り戻す可能性のある「要支援状態」の人たちに対して、リハビリ職のPT、OT、STや管理栄養士らが3カ月(週1回、計12回、1月ごとの目標設定)関わって、生活の困難さを解消し、利用者自身で日々の活動量を引き上げる取組を行っている。

体を動かしながら「対話」する

 取材の日、リハビリ室の一角では、寝屋川市が実施する、10時~12時の短期集中サービス(送迎付き)が行われていた。この日の参加者は5人。準備体操が終わり、個別対応の時間になって、イスに座って自分自身のことについてPTや管理栄養士と話す人たちの姿や、思い思いに、もも上げやスクワットなどの筋トレに励む人たちの姿があった。

 名倉さんは、大阪府や東京都の介護予防事業に関わり、リハビリ専門職などに地域ケア会議などでアドバイスを行ってきた。「元の生活を取り戻すというリハビリの視点でアセスメントするために私たちセラピストが関わっています。生活課題の支援にしっかり入らなければ、短期集中Cのプログラムが単なる運動の場になってしまう」

 要支援になったきっかけは何か。加齢による活動量の低下によるものか、友達がいないからか、腰痛や膝の痛みで歩行が困難なのか。リハビリ職は、在宅を訪問して生活の困難を引き起こしている原因を見極めて、リハビリ職として職能を活かして元の生活を取り戻さなければならない。大切なことは日々の生活の活性化であり、通所の時だけの活動ではないと分かってもらうことと話す。「訪問アセスメント」がなければ短期集中は成果が上がらない。

 ただ、「対話で気持ちを引き出すには、マンツーマンの関わりだけでは難しい。サービス全体が生活課題に前向きでなければならないからです。ピア・カンファレンスのように、短期集中に参加する仲間から『いっしょに頑張ろうね』などの声をかけてもらうのも力をもらうことになるのです」と言う。

 腰痛のために、手伝ってもらう生活が続いているのであれば、腰痛の原因を探る。最近活動量が減っていたことで腰痛を引き起こしていたら、腰回りの筋肉をつける筋トレが効果的かも知れない。栄養のある食事も欠かせない。しっかり食事ができるよう口腔機能の改善をすすめる。それぞれの専門職のアドバイスを受けられるようにする。

 「どのタイミングでだれがどう関わるか。困りごとを解決してくれるセラピストでなければならないのです。セラピストは、リハビリの視点でアセスメントし、生活課題をしっかり支援に入れるのがポイント。これがないと、短期集中が単に運動の場になってしまうのです。生活課題に対処する視点がないと、短期集中サービスに行って翌日は疲れて家で休み、また行って疲れて家で休む。生活そのものが変わらなければ、短期集中が終わっても、機能強化型デイに行くことになる」と話す。

「本人が回すPDCA」


 リハ室に目をやると、各人が宿題のシートをもっている。たとえば、つまずいてこけそうになるリスクで歩行が減っている人には、歩行時につま先が上向くように、弱っているすねの外側の筋肉を強くするように、つま先上げの運動の宿題が出されている。

 自分自身のこととはいえ、生活習慣を変えるのは容易ではない。秘訣はほめることだと名倉さんは話す。「たとえば、1度につま先立ちトレーニングを20回という宿題が出たとしましょう。しかし5回しかできなかったとしても、『よくできました』とほめる。たとえ0回であっても、『以前は、まったくトレーニングの必要性すらも感じていなかったのですから、前進ですよ』とほめる」。「賞賛、促し、相談」によって、小さな成功体験が積み上がっていくのだと言う。

 「そのやり方でばっちりでした。筋肉痛で、最初はつらいかも知れないけれど、1週間もすれば落ち着いてきます。力がついてきた証拠です」という調子。「参加者は、私の背中を押してくれる人がほしいのです。自身のことを知って、小さな成功体験を積み上げていくことで、元気を取り戻す可能性に気付き、行動変容が起きてくるのです」

 あとは、整理体操をして終わりになり、送迎車で家に戻る。

 「わたしたちの取組では、3カ月間、最初は積極的に支援し、徐々に支援を減らしていって本人の自主的活動のウェイトを高めていくイメージです。やっているうちに筋力がつき、億劫だった外出も、一人で買い物もできるようになる。元気になって、結果としてサービスからの卒業につながるのです」と話した。
(シルバー産業新聞2022年6月10日号)

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