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電子処方箋運用開始 現場への浸透には課題

電子処方箋運用開始 現場への浸透には課題

 現在紙で行われている病院からの処方箋のやり取りを、電子データで行う電子処方箋の運用が1月26日に始まった。それに先駆け国は昨年末、先行するモデル事業の事例紹介や、システム改修にかかる補助金について23年度末まで上限額を維持することなどを示した。

薬剤歴の確認と処方箋データの共有が可能に

 今年4月からマイナンバーカードを活用し、医療保険証の受給資格等の患者情報の確認を行う「オンライン資格確認」が医療機関と薬局で原則義務化される。

 電子処方箋は、このオンライン資格確認システムを拡張し、これまで患者の記憶や紙のお薬手帳などに頼っていた薬の処方歴を、患者本人の同意のもと、病院や薬局でリアルタイムで確認でき、さらに処方箋のやり取りを電子データ化するなどの機能を持つ。

患者背景の把握や誤投薬防止にも

 昨年12月23日に行われた国の説明会では、モデル事業の事例紹介や課題が示された。

 実際に電子処方箋を導入した現場からは、データ共有により他の医療機関や薬局の情報を閲覧でき、薬の重複防止や服薬指導の充実に役立ったといった声が聞かれた。

 従来の処方箋への押印や、薬剤情報の手入力の負担軽減にも繋がる。また、高齢の患者からも「問題なくスムーズに薬をもらえた」との声があった。このほか、大規模災害や救急受診時など、服薬状況を確認しにくい場面での有用性なども示された。

現場への浸透には課題

 モデル事業では、電子処方箋について患者に上手く説明できないなどの課題もあり、国が提供する周知資料の利活用が勧められた。

 運用開始後に本紙が各地のクリニックや医師に聞いたところ、そもそも電子処方箋について周知されておらず、医師が存在を認知していないケースや、クリニックの事務方も制度上、機材などを設置したが運用に対しては不透明などという声が聞かれた。

 大勢の患者で混み合う待合室で、一人ひとりの患者にシステム利用について説明できるのかなど、現場への浸透にはまだ多くの課題が残りそうだ。

23年度末まで補助金上限額維持

 電子処方箋システム導入にかかる費用に対しては補助金が交付される。詳細は、社会保険診療報酬支払基金が運営する医療機関等向けポータルサイトで公開されている。
 今回、最も高い補助率が適用される、システム導入期間の要件が、23年度末までに延長され、▽病床数200床以上の大規模病院162.2万円▽それ以外の病院108.6万円▽グループで処方箋受付が月4万回以上の大型チェーン薬局9.7万円▽診療所・その他薬局19.4万円――を上限に補助が受けられる。
(シルバー産業新聞2023年2月10日号)

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