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フロンティア 対物業務の効率化を徹底

フロンティア 対物業務の効率化を徹底

 フロンティア(大阪市、重森裕之社長)は全国157カ所(6月現在)の調剤薬局を運営、700人弱の薬剤師を抱える。「0402通知」から2カ月後の19年6月に、調剤業務の役割分担を示した社内マニュアルをいち早く策定した。

 調剤室では、医療事務スタッフ(非薬剤師)が薬の取り揃えや機械的な作業を受け持つ。水剤・塗り薬の混合などは機械化し、薬を取り揃え一包化等を行う前と、患者へ出す直前に薬剤師がチェック(監査)を行う。

 「薬剤師の調剤業務の負担は明らかに軽減した」と同社取締役・薬剤本部長の堀越勝博氏。患者への説明や服薬フォローアップ、多職種連携といった対人業務にこれまで以上に時間を割くことができていると話す。兵庫・西宮市の研修センターでは同マニュアルを用いた研修を薬剤師・非薬剤師それぞれへ実施している。

 また、マニュアルと同時に加速度的に進めたのが「あんしんカメラ」導入による安全性の向上。現在、全店舗の調剤室・投薬台・待合室にカメラを設置し、調剤から患者へ薬を渡すまでの一連を映像に残す。投薬台は真上から撮影し、渡した薬剤の種類・量も確認。重森社長は「一番やってはいけないのが薬の間違い。視覚的に残すことで、後で患者様との間で齟齬が生じた場合にも役立つ」と説明する。

待ち時間緩和する処方箋トリアージ

 同社が行ったアンケートによると、患者が薬局を選ぶ際に重視することは「待ち時間」。これを少しでも解消すべく、5年前より大型店舗を中心に取り組んでいるのが処方箋トリアージだ。

 今までは処方箋の受付順に薬剤を渡していたが、処方内容で優先順位を分け作業全体の効率化をはかる。「薬剤の種類が多い人や、混合などが必要な人もいれば、目薬一つのみですぐ渡せる人もいる。順番は入れ替わるが、患者様全体での待ち時間は減っている」と堀越氏はメリットを話す。一部店舗では自動判別する機器も使用している。

毎月の事例共有

 かねてから薬局・薬剤師のかかりつけ機能に注力してきた同社。居宅療養管理指導の算定増と共にケアマネジャーやヘルパーと連携するケースも増えたと堀越氏は話す。

 「薬の飲み忘れに関する相談が多い。例えば1日3回飲んでいる場合、主治医と相談し、減薬または昼1回にまとめて飲むなどで対応できることも。一方、薬が原因で日中の眠気が抜けず転倒リスクを高めるパターンなどもあり、薬剤師側も患者様の生活情報の把握が必須になる」

 同社ではこうした対応事例を毎月1回、全店舗から吸い上げ社内ネットワークで共有。対人業務の底上げに寄与している。堀越氏は「新しい薬剤の場合、飲み合わせNGとされる他薬剤を事前に確認・回避できたケースなどが多い」と説明。重森社長も「かなりの事例数が積み上がっているので、自店舗でも状態や生活環境が近い患者がいるはず」と活用を促す。

 なお、対人援助に関して接遇担当者による接遇研修を取り入れる同社。「笑顔甲子園」とした接遇スキルのコンテストでは、社長自ら患者役になり評価を行うそうだ。

介護事業とのシナジー

 福祉用具貸与を中心とした在宅介護サービスも同社の強み。「座位姿勢は薬を飲む上で極めて重要。シーティング、ポジショニングの視点は強く意識している」(重森氏)。福祉用具専門相談員が訪問時に薬の困りごとを拾い、薬剤師の支援につながるケースもあるという。

 政府が5月に取りまとめた規制改革推進会議では、従来看護師が行う褥瘡への薬剤塗布等の診療補助について、薬剤師による実施を検討する方針が示された。重森氏は「褥瘡ケアへ薬剤師が近づきつつある。福祉用具と薬剤との連携がより促進されることになるだろう」と期待を込める。

 また、同社運営のグループホームでは今年度、認知症利用者の睡眠の質と服薬との関連性について大学との共同研究も開始する。

環境面での取組み

 SDGsの一環として、薬局では2年前よりレジ袋を有料化(1袋10円)。その結果、94%もの患者がレジ袋を辞退した。「他の小売店でもここまでの辞退率はなかなか無い。各薬局で取組がかなり浸透してきた」と重森氏は手ごたえ。7月からは再び無料に戻し、来局者の行動の変化を追う。
(シルバー産業新聞2022年7月10日号)

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