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都知事へ要望「在宅に取り残された要援護高齢者を保護する手立てを」

都知事へ要望「在宅に取り残された要援護高齢者を保護する手立てを」

 新型コロナウイルス感染症が広がる中、在宅介護の現場では、要援護高齢者が自宅に一人取り残された場合への対応が問題となっている。こうした危惧は現場のケアマネジャーや訪問看護師らからも挙がっており、一時的な保護施設などが必要とされている。

 要望書を提出したのは、東京都文京区内のケアマネジャー後藤紀行氏(あ・むろケアプラン事務所、管理者)。同区内のケアマネが、「一人取り残された利用者がいて困っている」という話を聞いたのがきっかけだという。同じような危機感をもつケアマネら100人の署名を集め、8月18日、「家族が陽性で隔離になり、自宅に取り残されてしまった要援護高齢者を一時保護する手立てを」として、東京都知事、小池百合子宛に要望書を提出した。

 文京区に住むSさんは、認知症で常に見守りが必要な方。家族が陽性者となって入院したため、一人、自宅に取り残されてしまった。ケアマネは介護サービスを探したが断られ、濃厚接触者だったため、2週間の自宅待機を余儀なくされた。「ショートステイが使えないと命の危険すらある」とケアマネは悩んだ。幸い、Sさんは家族が入院する病院に保護入院することができた。しかし、こうした社会的入院は基本、病院は認めないので、問題が残ると後藤さんは考えた。現場では、実際にこうしたケースの発生は少ないようだが、不安の声はある、と後藤さんと言う。

 夫婦二人暮らしの利用者で、認知症でインシュリンをしている夫の世話を妻がしている。妻は、知らない人にお世話されるのは大変だと思っているため、「もし、私が陽性者となって入院したら、この人はいったいどうなるの?できたら二人で同じ病院に入りたい」という訴えを挙げた。

 この件について後藤さんは、東京都医師会にも相談した。東京都医師会では、「在宅療養者における新型コロナウイルス感染症対策(2020年7月15日版)」を出していて、基本、二人とも入院が望ましい、というスタンスなのが分かった。同じ思いだったことが嬉しかったそうだ。

 また、江戸川区の施策も参考になったという。江戸川区は早い段階から、家族が感染しても自宅に取り残されないよう、療育が困難な子どもや、日常的に見守りが必要な高齢者や障がい者に、介護や障害福祉サービスが提供できる環境を整備していた。他にも神奈川県や大阪府堺市が同様な施設を整備している。一時的保護施設のイメージとしては、神奈川県が2カ所程度なので、東京都では軽症者用のホテルがあるので、そのワンフロアを使えないか、と個人的にはイメージしているそうだ。

 署名活動にも参加した、板橋区の大澤良江ケアマネジャーは、「自分のもっているケースでは発生していないが、今回の後藤さんの署名運動で、今後、発生する可能性があると感じた。板橋区に確認もしてみたが、まだ区自体も準備ができていない様子だった。本当に、発生した時が怖い」と仲間のケアマネ同志でも話しているという。

 在宅に取り残された高齢者や障がい者をどうするか。受け入れ先の準備が急がれているようだ。

※「在宅療養者における新型コロナウイルス感染症対策(2020年7月15日版)」
 「家族が感染した場合、自宅待機であれば、二次感染予防のため本人の入院を考慮。入院であれば、訪問サービスを増量するか、短期入院を考慮」と書かれている。

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