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第9期介護保険料 後期高齢者増の中で保険料抑制に苦心

第9期介護保険料 後期高齢者増の中で保険料抑制に苦心

 本紙は、24~26年度の第9期介護保険料について各都道府県にアンケートを行い、41都道府県から回答を得た。第1号被保険者の介護保険料基準月額の都道府県内平均額、各都道府県での保険料の最低・最高額保険者などは表の通り。第8期の第1号被保険者の基準月額は平均6014円(前期比+2.5%)だった。介護保険料は、前期の介護サービス利用実績や、今後の高齢者人口・要介護認定率の推移などを踏まえ、今後3年間のサービス利用量などを見通して設定される。いくつかの保険者に、保険料設定の背景にある状況を聞いた。

群馬県草津町(3600円)

 温泉で有名な同町は、旅館などでの皿洗いや掃除など様々な就労場所があることや、山がちな地形のため日頃から足腰が鍛えられていることなどが健康増進につながり、介護保険料の低さに寄与しているのでは、と同町担当者。もともと介護事業者数が少なく、介護サービスに比較的アクセスしづらいのも要因ではないかと見ている。介護サービスを使わず、何でも自分でやろうとする高齢者自身の気質もある。1号保険料を、第8期から300円引き上げたのは、25年に団塊の世代が75歳に達する中で、財政的により安定させることを目指したため。

山形県大江町(4500円)

 山形県のほぼ中央部にある同町では、1号保険料基準月額を第6期から第8期まで6050円で据え置いていたが、今期は25%あまり引き下げた。今回本紙が調べた中で最も大きい下げ幅だ。

 最大の要因は、高齢者人口の減少に伴い要介護認定者数も減り、介護サービスのニーズが縮小傾向にあること。前期までは、団塊の世代が75歳に達する25年に向け、将来的なサービス量増大を念頭に置いて計画していた。しかし、同町の介護給付費は2019年をピークにここ数年下がり続けていて、今後も横ばいか減少傾向が見込まれるため、保険料の引き下げにつながった。また同時に、前期末で2.2億円ほどあった準備基金から1.1億円を取り崩す方針としたことも、大きく影響している。

 今年4月時点で、同町の人口は7205人、高齢化率は41.5%。65歳以上人口は2991人で、19年3月の3068人をピークに減少。75歳以上人口は1629人で、こちらも14年3月の1898人をピークに減っている状況だ。要介護認定率は18%ほどで推移している。

広島県熊野町(4828円)

 広島県西部にあり、江戸時代から続く「熊野筆」の製造で知られる町。23年9月末時点で人口2万3536人、高齢化率は35%ほど。今期の1号保険料基準月額は、前期の5696円から15%ほど引き下げた。保険料設定は11段階から13段階とした。

 高齢者人口はすでにピークに達している一方で、後期高齢者人口は今後数年は増えていくため、介護給付費も伸びていく見込み。その中で、積み上げてきた準備基金を今期で3億円ほど取り崩したことで、保険料は引き下げられた。町では介護予防の取り組みとして、「シルバーリハビリ体操」の普及・定着に注力しており、住民主体の活動を後押しするため、元気高齢者などを対象に体操指導士の養成・認定に取り組んでいる。

高知県芸西村(7800円)

 太平洋に面した高知県南東部の同町は、人口3500人・高齢化率4割程度で推移。今期の1号保険料基準月額は、前期の6300円から24%ほど引き上げた。大きな要因の一つは、退院してきた高齢者で初回から介護度3~4の認定を受ける人が増えてきて、その分施設サービスのニーズが高くなること。準備基金は前期で想定以上の給付の伸びがあり取り崩したため、今期の保険料抑制には十分に充てられなかった。

大阪市(9249円)

 今期の1号保険料基準月額は、前期8094円から14%引き上げ9000円台を突破した。同市では以前から独居高齢者世帯が多く、20年では高齢者のいる世帯のうち45.0%が独居世帯で、全国平均の29.6%を大きく上回っている。独居者は生活支援ニーズが比較的高いこともあり、65歳以上の要介護認定率も24年1月で27.4%と、全国平均19.3%を大きく上回る。

 市内にはサ高住などの高齢者向け集合住宅が多く、介護事業者も多いことからサービスにアクセスしやすい状況があり、後期高齢者人口の伸びとあいまって、介護サービス量増大は当面続く見込み。

(シルバー産業新聞2024年5月10日号)

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