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メッセージ 転落死・虐待 第三者委員会調査結果公表
グループ全体で入居者への虐待や事故などが相次いで発覚した問題で、メッセージは第三者調査委員会の調査報告書を、12月7日に公表した。
ノーマライゼーションに対するリスク管理の不足
グループ全体で入居者への虐待や事故などが相次いで発覚した問題で、メッセージ(岡山市、佐藤俊雄社長)は第三者調査委員会の調査報告書を、12月7日に公表した。同委員会は問題の大きな要因の一つに、同社が理念に掲げる「ノーマライゼーション」に対するリスク管理が不十分だったと指摘した。同社は報告書を受け、運営改善検証委員会の設置や業務規程の整備など、業務管理体制強化に着手する。
事の発端は、同社子会社の積和サポートシステム(東京都中央区、岩本隆博社長)が運営する「Sアミーユ川崎幸町」での3件の転落死の発覚。その後同施設で虐待や窃盗が起こっていたこともわかり、川崎市は監査の結果、2月から3カ月間の介護保険事業所の全部効力停止処分を下した。
さらに積和サポートシステムの運営する他施設や、親会社である同社の運営する施設でも次々に虐待等の問題が表面化。これらの点を問題視し、厚労省はメッセージに特別検査に立ち入り、改善勧告を出した。
同社は再発防止策の一環として、弁護士らによって構成される「第三者調査委員会」を10月5日に設置。同委員会は、関係者への事情聴取や同社から開示された報告書等の資料等の調査、さらに現場に対するアンケートなどを行った。公表された調査報告書では根本的な原因として、大きく①運営理念に対する管理体制の整備不足②本社の施設に対する支援や連携不足③コーポレートガバナンス体制の不全――の3点をあげた。同委員会は同社の信頼回復について、「長期的視座に立ったうえで、相当の覚悟と責任を持った再発防止への取組みが必須」とし、組織全体で真摯に向き合うべきとの見解を示した。
メッセージは「ノーマライゼーション」を掲げ、認知症を含むすべての入居者が自由な生活を送れる施設として、運営してきた。しかし同委員会は一連の問題を防止できなかった原因として、この方針と現実が乖離していた点をあげた。自由な生活を行う上で生じるリスクに対し、経営陣の意識が不足していたため、管理体制が十分に整備されていなかったとした。
橋本俊明会長が「現場で起きたことは、現場でしかわからない」など施設への介入について、慎重な発想であったこともあり、同社では施設管理を各地区本部に任せる「分権化」が推進されていた。
しかし個々の施設だけで解決できない問題について、本社のサポートは十分になされていなかったという。それが結果的に地区本部長や施設長においても、「施設の問題は施設で解決しなければならない」という意識に結びついていたのではないかと、報告書は指摘している。問題が起きた場合▽現場職員から管理者▽各施設からスーパーバイザー▽スーパーバイザーから各地区本部長――などの情報共有体制が敷かれていたが、いずれも報告すべき事項の全社的基準は存在していなかった。各職位者が連携して問題を解決するという意識が欠如しており、十分な支援を受けられない状態だった点も、未然に事故や虐待を防げなかった原因の一つとした。
責任の所在としてはノーマライゼーションを積極的に推進・提唱し、なおかつ経営の中心にいた橋本会長の責任が最も重いとした。また既に退社したSアミーユ川崎幸町での転落発生時のメッセージ社長古江博氏と、同じく積和サポートシステム元社長の奥村孝之氏の責任は、橋本会長に次ぐものと位置付けた。
一方で現社長の佐藤俊雄氏については15年6月に就任しており、社長としての責任は強く問えないとしつつ、管理整備義務を十分に果たしていなかったとした。同じく6月に就任した積和サポートシステム現社長の岩本隆博氏についても、社内処分等を適宜行うべきとの見解を示した。
その他の個別の要因としては▽対応困難者受入れに対するサポート不足▽在宅介護事業への経営戦略転換に伴う施設管理への意識の希薄化――などを指摘。いずれも施設と本社の連携機能不全に繋がっているとした。
さらに取締役会が事実上上程された議案の決議のみを行う機関となっており、監督機能が果たされず不備を是正することもできなかったとし、根本的な体制の見直しを提案した。
事の発端は、同社子会社の積和サポートシステム(東京都中央区、岩本隆博社長)が運営する「Sアミーユ川崎幸町」での3件の転落死の発覚。その後同施設で虐待や窃盗が起こっていたこともわかり、川崎市は監査の結果、2月から3カ月間の介護保険事業所の全部効力停止処分を下した。
さらに積和サポートシステムの運営する他施設や、親会社である同社の運営する施設でも次々に虐待等の問題が表面化。これらの点を問題視し、厚労省はメッセージに特別検査に立ち入り、改善勧告を出した。
同社は再発防止策の一環として、弁護士らによって構成される「第三者調査委員会」を10月5日に設置。同委員会は、関係者への事情聴取や同社から開示された報告書等の資料等の調査、さらに現場に対するアンケートなどを行った。公表された調査報告書では根本的な原因として、大きく①運営理念に対する管理体制の整備不足②本社の施設に対する支援や連携不足③コーポレートガバナンス体制の不全――の3点をあげた。同委員会は同社の信頼回復について、「長期的視座に立ったうえで、相当の覚悟と責任を持った再発防止への取組みが必須」とし、組織全体で真摯に向き合うべきとの見解を示した。
メッセージは「ノーマライゼーション」を掲げ、認知症を含むすべての入居者が自由な生活を送れる施設として、運営してきた。しかし同委員会は一連の問題を防止できなかった原因として、この方針と現実が乖離していた点をあげた。自由な生活を行う上で生じるリスクに対し、経営陣の意識が不足していたため、管理体制が十分に整備されていなかったとした。
橋本俊明会長が「現場で起きたことは、現場でしかわからない」など施設への介入について、慎重な発想であったこともあり、同社では施設管理を各地区本部に任せる「分権化」が推進されていた。
しかし個々の施設だけで解決できない問題について、本社のサポートは十分になされていなかったという。それが結果的に地区本部長や施設長においても、「施設の問題は施設で解決しなければならない」という意識に結びついていたのではないかと、報告書は指摘している。問題が起きた場合▽現場職員から管理者▽各施設からスーパーバイザー▽スーパーバイザーから各地区本部長――などの情報共有体制が敷かれていたが、いずれも報告すべき事項の全社的基準は存在していなかった。各職位者が連携して問題を解決するという意識が欠如しており、十分な支援を受けられない状態だった点も、未然に事故や虐待を防げなかった原因の一つとした。
責任の所在としてはノーマライゼーションを積極的に推進・提唱し、なおかつ経営の中心にいた橋本会長の責任が最も重いとした。また既に退社したSアミーユ川崎幸町での転落発生時のメッセージ社長古江博氏と、同じく積和サポートシステム元社長の奥村孝之氏の責任は、橋本会長に次ぐものと位置付けた。
一方で現社長の佐藤俊雄氏については15年6月に就任しており、社長としての責任は強く問えないとしつつ、管理整備義務を十分に果たしていなかったとした。同じく6月に就任した積和サポートシステム現社長の岩本隆博氏についても、社内処分等を適宜行うべきとの見解を示した。
その他の個別の要因としては▽対応困難者受入れに対するサポート不足▽在宅介護事業への経営戦略転換に伴う施設管理への意識の希薄化――などを指摘。いずれも施設と本社の連携機能不全に繋がっているとした。
さらに取締役会が事実上上程された議案の決議のみを行う機関となっており、監督機能が果たされず不備を是正することもできなかったとし、根本的な体制の見直しを提案した。
過去2年間で81件の虐待
事故等が明るみに出た6施設を除く同社直営全275施設において、委員が実施した施設管理者へのアンケートでは、過去2年間に53施設で81件の虐待があったことが新たにわかった。うち暴言などの心理的虐待が40件と最も多く、次いで暴行などの身体的虐待16件、財産の不当処分などの経済的虐待17件、ネグレクト7件、性的虐待1件となっている。
さらにアンケート回答者からは「対応困難ケースにおいて従業員から『手が出そうになった』などの申告を受けた」「援助が上手くいかないときに心理的外傷を与えかねない発言を聞いたことがある」などの意見が寄せられた。これに対し同委員会は、引き続き第三者による事実確認と、各施設の対応についての検証を要求。ただし要因については「6施設と異なる特別な事情は確認できなかった」とし、いずれもSアミーユ川崎幸町などと同様に、マネジメント不足などに起因するものとの見解を示した。
また同社は、700件以上の報告事案があった東京都を除く他道府県でも、報告対象事案を調査。合計3731件あり、そのうち道府県への報告漏れは391件、市区町村への報告漏れは1526件あることが判明した。同委員会は行政報告事項に係る報告漏れについても、再発防止策を講じるよう求めている。
さらにアンケート回答者からは「対応困難ケースにおいて従業員から『手が出そうになった』などの申告を受けた」「援助が上手くいかないときに心理的外傷を与えかねない発言を聞いたことがある」などの意見が寄せられた。これに対し同委員会は、引き続き第三者による事実確認と、各施設の対応についての検証を要求。ただし要因については「6施設と異なる特別な事情は確認できなかった」とし、いずれもSアミーユ川崎幸町などと同様に、マネジメント不足などに起因するものとの見解を示した。
また同社は、700件以上の報告事案があった東京都を除く他道府県でも、報告対象事案を調査。合計3731件あり、そのうち道府県への報告漏れは391件、市区町村への報告漏れは1526件あることが判明した。同委員会は行政報告事項に係る報告漏れについても、再発防止策を講じるよう求めている。
リスク管理に係る新部署等設置
同社は報告書の調査結果を真摯に受け止め、信頼回復に努めると発表。具体策として①施設管理体制の再構築②コーポレートガバナンス体制の再構築③運営改善検証委員会及び高齢者虐待防止委員会の設置――を示した。
調査報告書によると、Sアミーユ川崎幸町における虐待事案では、利用者や家族が通常の接遇の範囲を超えるほどの身の回りの世話を要求、ナースコールを頻繁に鳴らすなどしていたため、対応に苦慮していたが、具体的な組織的対応はとられていなかったという。①に関しては、そういった対応困難入居者やその家族に対する対応指針の構築や「対応困難検証チーム」の設置なども行うとした。
②については取締役会の実効化に加え、専門部署としてリスク管理部を創設。本社の機能強化をはかる。
③では継続的な検証及び改善に取組む。また、報告書が公表された12月7日開催の取締役会において、橋本会長・佐藤社長が辞意を表明したため、処分検討委員会も設置。同18日に勧告書が提出され、次回の定時株主総会の終結時まで、橋本会長は無報酬、佐藤社長は報酬が50%減額されるなどの役員処分が発表された。
調査報告書によると、Sアミーユ川崎幸町における虐待事案では、利用者や家族が通常の接遇の範囲を超えるほどの身の回りの世話を要求、ナースコールを頻繁に鳴らすなどしていたため、対応に苦慮していたが、具体的な組織的対応はとられていなかったという。①に関しては、そういった対応困難入居者やその家族に対する対応指針の構築や「対応困難検証チーム」の設置なども行うとした。
②については取締役会の実効化に加え、専門部署としてリスク管理部を創設。本社の機能強化をはかる。
③では継続的な検証及び改善に取組む。また、報告書が公表された12月7日開催の取締役会において、橋本会長・佐藤社長が辞意を表明したため、処分検討委員会も設置。同18日に勧告書が提出され、次回の定時株主総会の終結時まで、橋本会長は無報酬、佐藤社長は報酬が50%減額されるなどの役員処分が発表された。
損保ジャパンによる買収へ
新体制を打ち出したばかりの同社だが、12月18日には損保ジャパン日本興亜ホールディングス(東京都新宿区、櫻田謙悟社長)が、株式の公開買付けを行うと発表した。両社は以前から資本・業務提携しており、損保ジャパンは出資率を引き上げ、同社を連結子会社化することで、業界2番手になる見込み。同社もこの買収に賛同している。
損保ジャパンは同社に対し、リスク管理のノウハウを導入し、質の向上を図るという。買収が成立すれば社名は「SOMPOケアメッセージ」になる見込みで、再スタートを切ることとなる。
損保ジャパンは同社に対し、リスク管理のノウハウを導入し、質の向上を図るという。買収が成立すれば社名は「SOMPOケアメッセージ」になる見込みで、再スタートを切ることとなる。
(シルバー産業新聞2016年1月10日号)